建国
二度も更新出来ず誠に申し訳ございません。
七月中旬までは更新速度が落ちてしまう可能性があります、ご了承ください…
一度屋敷を出て俺は葉巻に火を付けた。
突然のジンから魔人クリティナへのプロポーズに俺の思考は着いていけなかった。
それをリセットする為である。
屋敷内では禁煙のため、屋敷の脇にある喫煙所で煙を燻らせていると気付いたときには何故か原因であるジンが隣に座っていた。
「旦那、俺はもう一度所帯を持つことにした。色々迷惑掛けると思うがこれからも宜しく頼む。」
「おう、頑張れよ」
それしか言えない俺はジンの方を向かずに答えた。
三十分後、俺は屋敷の広間に全員を集め帝国遠征組の報告を聞くことにした。
居残りの皆も気になっているだろう、そわそわしている。
迷宮に居たブルースもワタメを連れ戻ってくる様に伝えると直ぐに全員が集まった。
「あー、帝国遠征組の報告の方をティアから頼む…」
「……分かったわ」
普段無口なティアだ、俺の人選ミスだと疑うような周囲の視線が集まる。
が、俺は気にせずティアに視線を写すとコホンと可愛らしく咳払いをして口を開けた。
「まず私たちは部隊を二つに分け行軍したわ。半数に別れた帝国軍を追うため、わたしとカミツレ、ジンの獣王国組とプルネリア、チトセ、コクランのドワーフ地下帝国組ね。チトセは途中でソラトに呼ばれて抜けちゃったみたいだけどかなりドワーフ地下帝国まで敵の手が伸びていたらしいわ。」
うん、任せたのは俺だけどティアめっちゃしゃべる!その後もティアは報告を続けた。
獣王国付近の帝国兵は王都近くの都市ゴーレンを占拠しており、ティアはカミツレとジンを引き連れゴーレンに潜入した。
ティアの天候魔法で分厚い雷雲を召喚し光を閉ざしカミツレとジンに浸入させた。
雨と雷が降る夜闇に紛れ、指揮官から上の階級のものを数名捕らえ占拠、その後ティアは残りジンとカミツレを俺の元に戻したらしい。
現在はブルースの部下、スライム軍団がゴーレンを囲みモミジが指揮を取り帝国軍を監視している。それでティアは戻ってきたとのこと。
いや……以前の戦争時から思っていたがティアの扱う天候魔法……強すぎじゃね?
プルネリアとコクラン組は無事ドワーフ帝国の帝王と合流し正面から迎え撃ったという。
ブルースの分身が様子を窺っていたが二人とも一騎当千の武功を見せ帝王も驚いていたという。
「報告ご苦労。さて皇帝さん、あんたには二つの選択肢がある。俺に降るか、それとも徹底抗戦するか。まぁ後者を選べばあんたの首と胴はお別れだろうがな」
「皇帝様…この男の外見や態度は信用出来ませんがその言葉は信用出来ます。どうかご英断を…」
クリティナが少年の足元に傅き懇願をしている。
それよりこいつ、すげぇ失礼な物言いをしてたけど気のせいかな?
処す?
いや、ジンの嫁さんになるんだしここはおおらかに見過ごしてやろう。
「……ぐぅ…我が野望……ここまでか…」
「悪い様にはしねえよ。俺の作る国の属国の様な扱いにはなるがこれまで通りの生活をしていい。あんたの妹ワタメにも会わせてやる、悪い条件じゃないだろ?」
「ワタメ…ワタメの行方を知っているのか?!」
「あぁ。今俺の部下が監視しながら保護している。傷もない。」
ワタメを連れ出したブルースが言うにはお菓子をやるからこっちおいでと言うとひょこひょこ着いてきたらしいからな。
手荒な真似をするまでもなかったらしい。
というか勇者、ちゃんと教育しとけ!
「そうか…妹には会えるのか?」
「あぁ、お前が俺に降ると宣言するならば直ぐに呼び出そう。」
「分かった。余はここに宣言する。我がグランクリード帝国は魔王ソラトの傘下に降ろう。臣民にも帰った後下知を行い派兵した兵も下がらせる。」
「二言はないな?」
「くどい…!余の紡ぐ言葉に虚言など含まれてはならぬ!」
「そうか。賢い判断だ。ブルース、ワタメをここに」
ブルースウォッチを通してブルースに連絡をする。
直ぐに返事が帰ってきてブルースは転移してきた。
「主殿、ワタメを連れて来たでござる」
「ぷにぷにのお姉ちゃんここどこ?…あれ、ハルト兄さま?どうしてここに?」
「ワタメ…探したぞ…!色々言いたいことはあるが、まずは無事で良かった。」
兄妹の感動の再会を邪魔せぬ様に他の連中を連れ、庭へと出た。
この後やることも決めている。
俺は配下全員を連れ、転移をした。
転移しエルフやコボルト、王国との戦争で捕虜となり俺の奴隷となった戦奴百名などを召喚した。
転移したのは不進の平原、俺が転生してから既に四ヶ月近くが経過している。
やっと戻ってきたのか…!
俺はここに国を作る。
帝国を降し王国の力を削いだ今、俺の敵となる者は居ない。
迷宮探索はしばらくお預けだ。
「ブルース、行くぞ!」
「承知!【迷宮生成】」
俺とブルースの魔力が混ざり合う。
幾重もの螺旋が半径数キロを包み込み大地が盛り上がる。
イメージするのは巨大な城。何者をも通さず、堅牢で守りやすい城だ。
大地が巨大な外壁を築き上げると、俺のイメージ通りに築城されていく。
俺の魔力が切れそうになるもセレナ、チトセ、カミツレ、その他配下が横で手を繋いでおり俺に魔力供給をしてくれている。
それだけでは追い付かないのだが、ゴリゴリ減る魔力に対する様に回復速度も早くなっていく。
六割ほど回復したがまだ消費していくのだ、ブルースも少し苦い表情を浮かべている。
がここで俺の魔力が唐突に増える。
別行動しているブルースの分身体がハルト、ワタメを帝国に戻し俺に降るという宣言を即刻行ったためだ。
帝国人八千万が俺の配下となったための結果である。
俺は最後の仕上げに【アイシクル・エイジ】の魔法を唱える。
瞬間完成間近の城を氷が覆った。純白で美しい城だ、俺は一人腕を組み頷いた。
氷で覆われてはいるが寒さは感じない。
迷宮生成の効果と相乗し触れなければ冷たさは感じない作りとなっている。
「主殿、完成したでござるな!」
「あぁ、少し予定は狂ったが何とか築城にこぎ着けた。ブルースやみんなのお陰だ」
「拙者の力なぞ微々たるものでござる。主殿、城の名はどうするでござるか?」
名前か。そうだな…
「決めた。氷魔城だ、そして俺は氷魔帝を名乗る。」
「氷魔帝…主殿にぴったりでござるな!」
「これからこの地は氷魔帝ソラトの名の下に統治する。我らの国の名は【フロストバニア】だ!」
「「「うおぉぉ!氷魔帝万歳!フロストバニア万歳!」」」
歓声が上がり俺の建国は始まった。
ここから大陸を制圧し、海の向こうも俺の支配下にする。
俺の野望はここから始まるのだ!!
次回三部登場キャラ紹介を挟み新章突入です。
追記
キャラ紹介は後程更新します。次回投稿は6/30(日)となります