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プロローグ

少女(女性)向け/ライトノベル/なんちゃって北欧。

規定にひっかかるものではないと思いますが、一部残酷描写も後々出てきます。

苦手な方はご注意ください。

「あ? 家出娘だ?」

「ええ、そんな手配書が回って来ているそうですよ。家出した当人は貴族のご令嬢だとか」

「なんでまたこっちに手配書が回ってきたんだ? 役人や騎士隊の連中の仕事だろうに」


 椅子に座っている黒づくめの青年は、側に立つ少年に顔を向ける。

 一級品でこそないが、丁寧に手入れがされた調度品や家具。日当りの良い場所に設置された事務用の机。木製のそれは傷が多く、使い込まれているのが分かる。


 本棚にソファ、事務机とは別のローテーブル。私室兼応接室、そんなイメージだろうか。


「役人や騎士隊が動けば公になりますからね。魔法学院の卒業者ですが、さして裕福家柄ではないようです。その辺りもあるんでしょう」


 少年は二枚の紙を差し出す。一枚は令嬢の名前、家柄、特徴、魔法の心得の有無、似顔絵などが書かれたもの。よく路上に貼り出されているあれだ。もうひとつは、更に詳細に行方不明者の経歴が書かれたもの。それを青年が受け取ると、一応目を通すが明らかに流し読みだ。


 とある男爵家の令嬢が家出。

 貴族社会、社交界というのは、得てしてこういった噂がどこからか漏れる。

 しかし幸いにもこの男爵家は、貴族とは名ばかりの貧乏っぷり。誰もがこぞって話のタネにするような家柄ではない。が、貧乏であろうと上流社会に生きる人間の性質として、体面や世間体というものを気にする。


「――報酬額も多くねぇな」

「公にしたくないからか、本当になくて出せないのかは分かりませんが、他の仕事の合間にするには、割に合わない気もしますね」


 人探しは長引けば長引くほど経費がかかさむ。騎士隊や役人は国家機関だが、ヴィレムは違う。全てを依頼主か己が負担することになる。可もなく不可もなく、人ひとりが生活できる程度の報酬では経費にもならない可能性が高い。

 黒づくめの青年は、詳細が書いている紙を少年へと渡した。その素振りは役所から回ってきた手配書というのに、雑に扱っている印象が否めない。


「面倒くせ。きちんとした依頼でもねーんだからほっとけ。やれっつーなら、役人なり騎士隊なりが直接なんか言ってくんだろ。そん時は連中からふんだくってやりゃ済む話だ」



 国に属していない剣士や魔法士(ガルドル)の集団がある。それが、行政府から完全に独立している傭兵団(ヴァイキング)

 黒づくめの青年の名は、ヴィレム=フィレンツェン。彼もその傭兵団のひとりだ。

 しかし本業は商人であり、フォルダール王国首都、フォルッサでは一番の人気を誇り、その美貌と職業上、噂の絶えない男でもある。



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