異世界でゴルフをしよう!〜魔王軍討伐編〜【短編】
意外と前回のゴルフの小説が好評だったのでまた作ってしまいました。しかも前回の倍以上の文字数どころか作者最大の文字数を更新しました。
ノリと勢いって割と大切なんですね。では本編へどうぞ!
異世界でゴルフを広め、数ヶ月後。突然奴がやってきた。
「視界良し、天候良し、ゴルフクラブ良し…まさしく天が俺にナイスショットを打たせようと迎えてくれているようではないか!」
「そうですね。テッツォさん!」
元宮廷魔導師だったエレナはすっかりゴルフの魅力に取り込まれ俺のキャディを務めている。
「うむ、ではこれから魔道具の技術を使った新作ドライバーでコンドルをやってやろうじゃないか!」
ちなみにコンドルはそのホールの規定打数よりも4打少なく入れることだがこの世界はパー5よりも規定打数の多いホールは存在しないのでコンドルを出すにはパー5でホールインワンをするしかない。
「流石勇者様! アルバトロスどころかコンドル宣言とは大きく出ましたね!」
「だっはっは! 頭に元がつくとは言え宮廷魔導師に誉めて貰えるとは光栄だ…それではいこうか!」
この天候でかなり上機嫌になった俺はドライバーを取り出し、ティーにゴルフボールを置く。
「イ・ト・ウ・テツ…オー!」
そして俺の掛け声と共にドライバーがボールの芯に当たり真っ直ぐ飛んだ。
「フハハハハ、我が名はうぎゃっ!?」
…目の前にこいつが現れなければ。女声の悲鳴がゴルフ場に響きわたるがそんなことはどうでもいい。俺のボールはこいつが突如現れたせいで10ヤードくらいしか飛んでおらず、コロコロとアプローチのように転がっていくだけに終わった。
「…これだからゴルフはわからねえな」
「そうですね。ナイスチョット!」
俺とエレナが目の前にあるゴミを鬱陶しげに見つめ、ゴミをスルーしそのボールのところまで歩く。
「コラァっ! 私にボールを当てておいてなんだその態度は!」
顔を赤くした褐色肌の女が猛抗議するがそもそもこいつが悪い。というか400ヤード以上飛ばす程のゴルフボールに当たってそれだけ元気なら心配もないだろ。
「お前が突然目の前に現れたんだからどうしようもないじゃないか。不可抗力だ」
ちなみに自分のキャディや他のプレイヤーに当てたら罰が与えられるのだがそれ以外に当てても罰は与えられない。
「おのれぇ〜…第一、貴様ら勇者達がいつまで経っても魔王領に来ないからわざわざ四天王である私が来てやったというのに!」
「四天王!?」
エレナが四天王という言葉に反応して、目を見開く。
「エレナ、こいつを知っているのか?」
「いえ、こいつそのものは知りませんが魔王軍には四天王と呼ばれる4人の幹部達がいると聞いたことがあります。火、水、風、土それぞれを司る魔族達です」
その魔族相手にこいつ扱いかよ。エレナも酷えもんだ。
「その通り、私は土を司る四天王アースデイ。いざ勝負!」
アースデイが胸を張ると牛のような胸がたゆんと揺れ、そちらに目を向けるとエレナにものすごい形相で睨まれたのですぐに視線を元に戻した。お前の貧乳で我慢出来るか!
「良いだろう…ただしゴルフで勝負しようじゃねえか」
「ゴルフぅ〜? なんだそれは?」
また説明かよ…面倒いな。
「このゴルフクラブを使って向こうにある人工の穴に入れるというゲームだ。より少ない打数で入れた方が勝ちだ。詳しいルールはルールブックを見やがれ」
ルールブックを渡すとアースデイはそれに目を通した。
「なるほど…その杖らしきものがゴルフクラブという訳か」
「その通り。お前の都合のいい日にこのゴルフ場で勝負してやる。今この場で俺のゴルフクラブを貸しても良いが後で細工したとか、初めてだったから負けたとか言われても困るしな」
「そんな遊びに私が付き合うとでも思うのか?」
「ならこの勝負で負けたら勇者としての役割を放棄しよう」
「ええええっ!? テッツォさん、それはまずいですよ!」
「エレナ、俺にとってゴルフは全てだ。ゴルフを抜いたら何にも残らない。それこそ魔王討伐の気力さえもな」
「…わかりました。テッツォさん、もし」
「なるほど面白い。良いだろう、その勝負受けて立つ」
アースデイがその条件に了承し、頷くとこの場から消え去って行った…ってあれ? なんでエレナは涙目になっているんだ?
「エレナ、どうかしたのか?」
「知りません!」
訳がわからん。とりあえずコースを回り終わったら国王のおっさんに報告しておこう。
☆☆☆☆★★★★
「なにぃっ!? 四天王が現れただと!?」
国王のおっさんの打った球がスライスし、右へ曲がる。だがここはゴルフのコースではなく打ちっ放しだ。ナイスショットやナイスチョットはあってもOBはない。
「それで今度ゴルフで決着することになったから報告しにきた」
何故国王のおっさんがこんなところにいるかと言うと国王のおっさんはゴルフに興味を持ち、ゴルフを始めるようになった。その結果ゴルフ=戦闘術じゃないと気づいても寛大に許してくれた。
「う〜む、どう思う? 大臣?」
国王のおっさんがそう言ってドライバーで280ヤードくらい飛ばす。幸いというべきか国王のおっさんにはゴルフの才能があったようで僅か数ヶ月ゴルフをしただけでベストスコア80を切りやがった。俺の世界にいたら天才なんてレベルじゃねえぞ? 世の中の天才に謝りやがれと言ってやりたいくらいだ
「良いのではないでしょうか」
大臣のおっさんは文官という職業柄か豪快にドライバーで飛ばすよりも計算と勘を要求するパターやアプローチにハマった。そのせいかパターゴルフ、あるいはアプローチの練習しかしない。今持っているSWで50ヤード先にあるピンを狙って直撃させる。本当に素人とは思えないほど上手く、アプローチ限定ならプロ並みのレベルだ。
「何故だ?」
「勇者殿がゴルフで決着を着けると言った以上、我々が口出ししても無駄なこと。それに魔王軍にはゴルフという文化がありませんからな。四天王といえども所詮は初心者です。それに比べ勇者殿はゴルフのプロフェッショナル。まるで負ける要素がありません!」
才能の塊の奴らに言われても説得力ねえよ! などとは言えない俺は小者だった。
「それもそうであるな! 勇者殿、勝負に勝つなどと小さいことを言わず、大差勝ちしてください!」
「まあそうだな、どのくらい差をつけられるかわからないが出来るだけやってみよう」
任せておけとは言えないが僅差でも勝ってみせるくらいのことは言っておかないとな。
☆☆☆☆★★★★
そして1年後、グリーンの点検の為にコースを回り終えて昼飯のカツカレー(カツもカレーもゴルフ同様なかったので俺が材料を調達し、作らせた)を食べていると一度だけこの世界で見た褐色肌の女が視界に映る。
「その褐色肌はアースデイか?」
「久しぶりだな、テッツォ。ようやく平均してアンダーを出せる(18ホールのスコア72を切れる)ようになったからな…こうしてお前に挑みに来たという訳だ」
アースデイに目を合わせると妙な違和感を感じた。いやこれで違和感を感じないのはおかしい。
「…そうかい、ところで質問いいか?」
「なんだ?」
「後ろにいるあいつらはなんだ?」
しかもめっちゃ馴染んでいるし。そうその違和感の正体とはアースデイの後ろで昼飯を注文している奴らのことだ。あいつらはアースデイが入ってきた直後に入り、何事もなく座りメニューを開いたのだ。その時の会話が「ほう、ここはレストランもあるのか?」とか「このお冷ってサービス?」や「結構見慣れないお料理もありますね」などとやたら人間味があり、懐かしさすらも感じてしまった。
「…ああ、あれは私と同じ四天王達だ。私がゴルフ場を私の管轄内に作ったら彼らもゴルフを始めたのだ。しかも私が土地の整理をしている間にあいつらはコースを回ったり、ゴルフの練習をしているおかげであいつらの方が上手くなり、私は『あいつは四天王の中でも最多スコア』などという不名誉な称号を手に入れてしまった。誰のおかげでゴルフが上手くなったと思っているんだ…!」
こいつも大変なんだな。だがそれ以上に言いたい言葉があるが嫌な予感がして聞きたくない。だがそれでも聞かなければならない…それが俺の使命だからだ!
「…まさか魔王もそれに便乗してゴルフをやっていないよな?」
「なぜ分かった?」
嫌な予感大当たりかよ!? いやこれで魔王がしょぼいというケースもある。
「ちなみに魔王様は魔王軍の中で一番ゴルフが上手い」
「何でだよ!?」
その事実に思わず突っ込んでしまった。
「あのお方は普段は書類などの身体や魔力を使わない仕事を我々四天王や他の部下に押し付け、竜族長達や他の種族の長達と外交という名前のゴルフをする内に上手くなったのだろう」
「酷え話だ」
というかそんなちょっとしかやらない程度でこの世界の住民はゴルフが上手くなるのか? だとしたら地球上のゴルファー達に謝れよ。具体的には「僅か1、2年しかゴルフをやっていないのに偉大なる先輩たちの記録を軽々と抜いてしまってすみませんでした!」ってな。そのくらいのことを強要しても許されるだろう。
「…それはともかく何であいつらが来たんだ?」
「私が知りたいくらいだ…」
「伝えてませんでした? アースデイ?」
「うわっ!?」
向こうにいたはずの緑髪のエルフらしき女が突如俺の隣に現れ、カツカレーの一部をこぼしそうになる。
「勇者殿、初めまして。私は風の四天王、ウインドと申します。以後お見知り置きを」
アースデイとは対称的に貧乳であるが肌が白く、秋田美人或いは大和撫子を緑髪にしたようなエルフだ。
「そうか。それでウインドって言ったな。お前達四天王は何故ここに来た?」
「それは偵察というのもありますが…アースデイとの試合が終わったら私達四天王とも勝負をしましょうという事ですよ」
「…はぁっ!? 四天王とあろうものが疲れたところを見計らって勝負するつもりなのか!?」
アースデイが大声を上げ、怒鳴るがウインドは動じない。
「ええ。それが戦略と言うものです。貴女のように私は真っ向勝負する主義ではありませんから」
「ウインド、貴様…!」
俺は腕を上げ、アースデイの前に出した。
「構わねえよ。ただし条件がある」
「条件?」
「まず一つ目、俺と戦う時は1ホール毎の各スコアを競いあうマッチプレーであること。二つ目、18ホール全て回って引き分けた場合はどちらかが勝つまで各ホールを回り続けること。三つ目、翌日俺とアースデイが勝負をしている間、お前達四天王は三人でこのコースを回って合計スコアが良かった順に二人目、三人目、四人目の対戦相手になること。そして最後、勝負は一人一日ずつやること。その条件が認められないならお前達と勝負をしない」
「良いでしょう。その条件を呑みました」
ウインドが去り、目の前にはアースデイだけが残った。
「あんな条件で良かったのか?」
「人の心配するより自分の心配した方がいいんじゃないのか?」
「え?」
「話を聞いてない奴だな。明日お前と勝負するって言ったじゃねえか」
「…そういえばそうだったな。ウインドがあまりにもいけ好かないものですっかり忘れていた。それじゃまた明日このコースの一番ホールで会おう」
…そう言えばあいつらどこで寝泊まりするつもりだ?
☆☆☆☆★★★★
そして翌朝、エレナと共に朝食をとり、一緒に行くとアースデイや国王のおっさんや大臣、挙句にはこれまでゴルフクラブやボールを作ってくれた様々な人々がギャラリーとして1番ホールのタイガーティーで待っていた。
「遅かったなテッツォ! 私は四時間前からここで待っていたぞ!」
四時間前って…今午前5時だからこいつは午前1時から待っていたのか?
「お疲れさん…ゴルフは早く来たからって勝てるもんじゃねえよ」
「ならば私はお前に勝ち、『早く来れば勝てる』というジンクスを作ってやるから覚悟しておけ」
「そうか。それじゃクジでオナーを決めるからどっちか片方取りやがれ。赤く染まっていったらお前がオナーだ」
俺はあらかじめ準備しておいたクジを用意し、アースデイに引かせる。するとアースデイが当たりを引いたのか喜び、オナーとなった。
「テッツォさん、頑張りましょう!」
すっかりキャディとなったエレナが俺の手を握って応援する
「そうだな…エレナ。この勝負は俺のゴルフ人生がかかっている。絶対に負ける訳にはいかねえよ」
【1番ホール
480ヤード
パー5】
いきなりパー5かよ? と思うかもしれないがこの1番ホールは角度25度の下り坂である為に表示されている距離よりも1割減とかなり短くグリーンも易しいホールだ。上手くいけばそれこそコンドルも狙える。1番飛距離を稼げるコースはここと言っても過言ではない。…なんで傾斜25度の傾斜地にゴルフのコースがあるのかだと? 仕方ねえじゃねえか、ここ山なんだから。
さて…アースデイは見た感じ、胸の脂肪が邪魔をしていそうだからそんなに飛ばせないか?このホールは貰ったな。
「グラビティ・ショック!」
などと考えているとアースデイがそんな掛言葉を出す。するとドライバーが光を帯びボールに直撃するとボールの軌道がその光の道を作る。普通ならばこれに気をとられるのだが俺が気になったのはそんな幻想的なものじゃない。そのボールは低くトップスピンがかかっており、下り坂も影響もあってかキャリー250ヤードであるにもかかわらず160ヤード以上もランを続けたので合計410ヤード飛ばした計算になる。
「重力魔法グラビティ・ショック… 土属性の魔法の中でも相当難しいものなのにまるで手足のように扱うなんて…流石は土の四天王と言ったところです」
重力…そうか! それならランで160も稼げたのに納得がいく。ボールは重ければ重いほどランを稼ぎ、よく飛ばせる。しかしゴルフボールの重さは45.93g以下と定められており、それを超える球は認められない。理由は飛距離争いにボールの要素が絡んでくるからだ。
「あれは反則じゃないのか?」
だから俺はそう抗議した。あんな魔法の使い方があるのか?
「何故だ? 私はちゃんと正規のボールを使っているぞ? それに魔法を使ってはいけないという規則はない」
「…確かにそんな規則はないな」
「いやしかしこの場合、コースを回っている途中にゴルフクラブに鉛を貼ったり剥がしたりするような行為と一緒なのでは?」
国王のおっさんや大臣のおっさん、その他諸々のギャラリーが話し合ったがキリがないのでライの改善などの規則に反しない限り魔法を認めることにした。
「ゴノレフに挑むプロゴルファーか…それもまた良いよな」
某危険な爺に出てくるゴノレフはゴノレフ会長と仲良くなれば優勝のスポーツだが、俺の言うゴノレフはゴルフを変えた何かだ。断じてゴルフとは言えない。俺はドライバーを持ち、2回ほど素振りをして、ボールをティーの上に乗せた。
「…」
そして無言でテークバックし、振り下ろし、心地よい音がその場に響く。
「おおっ!!」
ギャラリーがそのボールを目で追いかけ、そちらの方へ向く。
「ゴーゴー!」
偉大なるゴルファーは「ゴルフとは自分との戦いではパー叔父さんとの戦いである」と言った。簡単に言えばアングル・パーの考え方だ。しかし俺はそうは思わない。何故ならその考え方はアマチュアでしか通用しないからだ。プロゴルファーというのは如何にしてマイナスを作り出す…だがそれすらも俺からすれば生ぬるい。俺からすれば「ゴルフとはバーディ爺との戦いである」ということでありアングル・パーならぬアングル・バーディ。如何にしてバーディ以上を維持できるかということだ。
「飛べーっ! トリプルイーグル!」
そして三羽の鷲、あるいはコンドルが空を飛んだ。
「あ、あ…!」
アースデイはいきなりこんなものを見せられたせいか口をパクパクさせながら唖然としていた。
「す、凄いです! テッツォさん、コンドルですよ! コンドル!」
「エレナ静かにしろ。今度はアースデイの番だからな」
エレナにそう注意しドライバーを元に戻す。
「まさか、コンドルを出してくるとは…」
アースデイはブツブツ言いながらボールの地点に着くと今度はピッチエンドランで寄せて、イーグルで沈めた。
☆☆☆☆★★★★
【16番ホール
465ヤード
パー4】
俺の2アップで迎えた16番ホール。ここを勝てば俺の勝ちは確定だ。しかし油断はしない。全米オープンの話ではないがゴルフの帝王と呼ばれた男も優勢の状態から逆転負けしたからな。
「しかし大したものだ。イーグルを4回、バーディを8回も出して勇者殿に一時的とは言え優勢に立ったなんて…」
アースデイは恐ろしいまでにアンダーを出せる。その理由は抜群のパター技術。土を司る四天王なのかグリーンのことを熟知しているらしく、そのパット技術で俺がバーディを出すところでイーグル、俺がパーしか取れなかったところでバーディを取りやがった。
「勇者殿の2アップのうち一つは最初の1番ホールで出したコンドル、もう一つは9番、13番、14番の各ホールで相手が大叩きしたものですからな。合計スコアではなく各ホールのスコアを競い合うマッチプレーであるからこそ、ここまでついてこれるのです…合計スコアで競っていればとっくに勇者殿の勝利ですよ」
…まあそういうことだ。どうやらアースデイは調子が良い時はアンダーをかなり出せるのだがフェアウェイウッドやロングアイアンが苦手なようでよく引っ掛けたりしてOBになる。トーナメントじゃ真っ先に潰れるタイプだがマッチプレーでは1番戦いたくない相手だ。ちなみに俺もそのホールは苦手なホールでバーディ以上は取れていない。
「さて、アースデイも2打目を打ち終わったことだ。決着をつけるぞ…エレナ。9番アイアン!」
このホールは1番ホールとは真逆のホールだ。つまり上り坂でかなりの距離があるということで実質パー5といっても違いないだろう。それだけではなくまんじゅうのようなグリーンだ。ピンを直接狙わなければグリーンの外へ弾き出されてしまう。しかもオーバーしようものなら池に落ちてしまうから大抵の奴はビビってショートする。全米オープンの予選のコースでも出てこないようなクソ難しいコース誰が設計したんだ? …俺だったよ!
「えっ!? でも残り120ヤードで9番は大きすぎませんか!? オーバーしたら池ポチャですよ! せめてPWにしたら…」
「この距離だからこそだ。エレナ…俺を信用しろ」
「はい…」
渋々エレナは俺に9番アイアンを渡した。
「天まで届けーっ!!」
俺が打った球は通称テンプラと呼ばれる距離を殺す代わりに天高く舞い上がるような球だ。まんじゅうグリーンにその名の通りまんじゅうの形をしており山のようになっている。しかしそんなまんじゅうグリーンでもピンそばは平らであるが故にピンそばに落とせば攻略可能だ。だがそのピンそばに寄せるにはまんじゅうの真上から攻めなきゃ無理だ。
「…入った!」
エレナがそう声をあげ声にならない悲鳴を上げた。
「勇者殿イーグルですぞ!」
「これで勇者殿の勝利が確定です!」
こうしてアースデイと俺の勝負は俺の勝利で終わった。
☆☆☆☆★★★★
風の四天王のウインドは風魔法を操り、風に影響されやすい高い球を封じ、苦戦したものの俺の切り札でもある地を這うような低いボールであるにもかかわらず物凄いバックスピンをかけている為に相殺されらグリーン上で止まるボール…通称『ブレーキボール』が大活躍したこともあって撃破。
水の四天王、ワタヅミは刻み屋で堅実なゴルフをしてイーブンの状態を続かせるがパー3の12番ホールで俺がホールインワンを出して逃げ切った。
そして火の四天王、レッドはワタヅミとは逆にとにかく攻めあるのみ。ウインドの妨害もあって崩れた為に四人目の対戦相手となったが普通に強い。更に今日のレッドはかなり調子が良く、1番ホールでコンドルを出したり等とにかくツキまくっていた。しかし俺1ダウンの状態で入った16番ホールで悲劇がレッドを襲う。レッドは二打目を地を這うような低い球を誤って打ってしまい、池ポチャ。それからレッドは崩れて逆転勝ちを収めた。
「お見事であった。勇者テッツォ」
レッドとの勝負が終わると国王のおっさんでもなければ大臣のおっさんでもない声が偉そうに俺を讃えた。
「誰だ?」
「魔王様!」
その場にいた四天王達が平伏し、頭を地につける。
「こいつが魔王…!!」
エレナは目を細め、魔王を見るが
「皆の者よい、頭を上げよ」
「ははっ!」
四天王達が頭を上げると全員が脂汗を流していた…まあそうだよな。四天王総員でかかって負ける失態を見られていた訳だから脂汗をかくのは普通のことだ。
「元々四天王は元々余や余との親交がある族長達の子息達だ。…故に今度は余達と勝負をしてもらう。流石に子息達がやられてどうも思わないのは親としてどうかと思うのでな」
「いや、ただ俺とゴルフがしたいだけだろ?」
「…」
「なんとか言ってくださいよ、父上」
アースデイが魔王の無言に突っ込みを入れた…てかこいつが魔王の娘なのかよ!? …となるとウインドはエルフで、ワタヅミは竜族、レッドは…オーガっぽい感じがする。
「なんとか」
お前は小学生か!?
「…」
「さて、それよりもどのコースで勝負するかを決めようか。どれでも好きなコースでいいぞ?」
魔王が四天王達やその他大勢の沈黙に耐えられなくなったのか地図を取り出し俺に渡す。…どれも攻略のしがいのあるホールだな。
「これだ」
俺はその中から適当なホールを選び、魔王に渡す。
「ならばそこで半年後に行おう。そこで練習したくば我が娘アースデイに頼んで連れてってもらえ」
そう言って魔王は去ってしまった。
☆☆☆☆★★★★
半年後、魔王達と激戦を繰り広げ、勝利した俺は四天王達や魔王達、あるいは国王達にとあることを告げた。
「今回はマッチプレーの勝負だが来年は18ホール×4日間の合計スコアを競い合うトーナメントを開催したいと思う。その理由は合計スコアを競い合うことでマッチプレーで活躍出来ない者でも逆転の可能性があるからだ。トーナメントのルールは新しく出たルールブックに載っているからそっちを見てくれ。以上だ。開催地は随時発表する」
こうして異世界でゴルフのトーナメントを開催し、全種族がゴルフをする世界となり俺は世界を魔王からも種族の差別からも救った。
要望があれば連載します。なければこれで終わりです。どちらにせよこのようなゴルフ×ファンタジーの小説を拝読して頂きありがとうございました。