序章ノ終 『嘆くは今、恨むは異世界紹介所』
「…で?どんな契約があるんだ?」
俺は不敵な笑みを浮かべている井筒に
問いかけてみた。
「そんなに固いものではないですよ?
強いて言うなら‥オプションの話とかですね」
「オプション?」
「まぁ、単純に言えば異世界に持っていく
『情報の量』でしたり…あーあとは、
『タロットカード』だったりしますね」
「…?」
「流石に『タロットカード』はわかるでしょ?
ほら、占いに使ったりするやつ。‥え?
まさか本当に…お兄ちゃん知らないの?」
「…(´・ω・`)」
何だ?タロットカードってなんだ?
…わっかんね。まじわっかんね(´・ω・`)
まぁ知らないもんは知らないでいいや。
取り敢えず話を聞かないと。
「ま、まぁいいんだ。それとだな…
あーそうだ。あんたらはこれを生業
としてるらしいが、商売してる限り
金とか取るんじゃねぇのか?」
俺にしては珍しく
もっともらしい質問をぶつけてみた。
まぁ主婦勢は気になる所だしな。
「…この世界で稼いできた全財産になりますね」
…はい?今なんと?
ちょっとおじさんよくわかんないなぁ。
え?全財産?…ふざけんじゃねぇよ…。
「…お兄ちゃーん?なんか勘違いしてない?」
「え?いや勘違いもこうもなi…」
「…だって、異世界転移した場合、
異世界にはここの財産は通用しないんだよ?
意味無いも同然じゃん?」
「…あ、あ〜」
盲点、腐れ盲点だぜ。ありがとう、妹よ。
「…話はまとまりました?」
井筒が待ちくたびれたように言う。
とりあえず俺は軽く
「…あぁ、大体な」
と言っておいた。すると、
「じゃあ最終確認に移ります。
まずあなた方にはこれから『移界』によって
異世界転移していただきます。その際に
こちらの世界のあなた方の所有する財産は
我々異世界紹介所が代金としていただきます。
…了解頂けましたか?」
『…はい』
同意する声は兄妹同時だった。
「…では契約成立です!
ありがとうございました!
それでは転移した先の異世界でのご武運を
お祈りしておきますね!」
井筒はそう言うと何かを唱えた。
するとどうだろうか。俺らの周りに
よくわかんない魔法陣が現れたではないか。
たまらず俺は、
「おい、ちょい待て!井筒!」
と叫んだが…
井筒はただ微笑みながら手を振るだけだった。
やがて世界が黒くなり、意識が消えた。
ー時刻未確定 民家 屋根ー
ーーーーーーーーーー!!!
暖かい日差しと鳥の音で…飛び上がった。
まぁ無理もない。なんせラノベなどでよく見る
「異世界転移」をしたのだから。
またも手に握られているのは一つの紙切れ。
頭がぼーっとするし、飛び上がったとはいえ
まだ意識が付いてこない。
それにしても…ここはどこだ?
やけに高い位置に居るようだが…だめだ
よくわからん‥。美衣は?どこにいる?
「…お兄ちゃん?おいクソ兄貴!起きろ!」
「…!!」
我が妹の愛のムチ(物理)によって我に返る。
…全く怖い怖い。
それにしてもここはどこだ?(2回目)
錯乱にも程があるだろう俺よ。
とにかくこういう時には周りを
見渡すことが一番大事だと俺は思う。
安心しろ、ニートの経験則に元ずく。
…よく良く考えたら絶対信用出来ねぇわ、これ。
さて…さてさて。早速周りを見渡そう。
…ウプ…オプ…。
途端に俺は全てを理解した。
自分でも驚くほど冷や汗かきながら。
美衣も俺と同じく全てを理解したらしい。
…結論から言うとここは民家の屋根上。
…鬼畜にも程がありませんかね?井筒さん?
〜序章『異世界紹介所』 end〜