序章ノ壱 『この素晴らしいほど退屈な世界で』
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…ペンを走らせていた手を止め、
目の前の紅茶に手を伸ばす。
…相変わらず苦いな…ハハ。
暗闇の中ひとりでに輝く閃光。名を『フォルト』。
一種の閃光魔法的な扱いになっているが、
まぁ俺らの世界でいうランタンと大差ないだろう。
…何時間経っただろうか。
随分と長い間書いていた気がする。
ここまで手が疲れたのは初めてだろうか。
…元々そんなに字を書かなかったからな。
そう思い一人寂しく笑う。
…時に皆様はここがどこだかご存知だろうか。
……………ごく普通の図書室ですよ?
なんかシリアス感出しましたけど
普通に図書室ですよ?(大事なことなので(ry)
とまぁ一気に雰囲気ぶち壊しましたけれども、
まずはこれから申し上げましょう。
この小説を手に取っていただき、
ありがとうございます。…一回言ってみたかった。
このセリフ。
まぁ茶番もさておきまして、
これから皆様にお見せするのは、
人生の意味を見失い、世界に退屈した…
…とある2人の『ヲタヒキニート』のお話。
まぁご察しの通り、兄妹ニートです。残念。
そんな兄妹ニートですが、
とある『組合』の介入によって、人生が
狂っていくんです。…面白そうでしょ?
……え?それほどでも?…ちょっと泣いてきますね。
…ゴホン。とまぁ長話がすぎました。
とりあえずまぁ簡略に言いますと。
『世界に退屈した兄妹ニートが
異世界転移して世界を壊す』お話です。
…どうでしょう。相当な暴挙ですね。はい。
…と、そろそろお時間のようです。
それでは皆様、最後に一言だけ
言わせていただきます。
…『異世界紹介所』って信じますか?
From・S.R
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ー夜の帳がおりた 午後六時 交差点前ー
世界とは実に退屈だ。
1日24時間365日の中でいかに楽しく、
いかに有効的に過ごすか、という議題の元
脳内討論会を繰り広げていた俺こと
『不知火 連珠』は、
最近流行りのニューゲーム、
『マジカルメーカーズ』を買った帰り道、
ふとそんなことを考えていた。
子供のうちは学校通って、大人になったら
就職して働いて、気づいたら老人になってる。
これが一番典型的な人生だが、
その『典型的な人生』という
タイトルのつくであろう一つの映画には、
『退屈』という一言が一番似合っていた。
高校1年生という若さにしてその事に
気がついてしまった俺はその日から
学校を退学しニート生活を送り始めている。
無論、後悔などない。
むしろ退屈な人生の中の勝ち組
とすら思っているからな。
…そう、俺はニートにして腐っているのだ。
ちなみに俺は現在高校3年生。
…早いものでニート始めてから
2年が経ってしまった。
そりゃゲームばっかしてれば
2年も経つか、ハハ…。
惨めだな、俺。
まァ後悔はしてないが。
ところでニートと聞くと外出が怖い、
引き篭もりなどといった
イメージを連想させる方が
多いだろうがそれは違う。
一番近い例をあげれば俺だ。
実質俺は今最寄りのゲーム店で妹に
頼まれた新作ゲームの買出しに行っている。
…最近のニートは外出するんだぜ?☆
…自分で言って痛いと
実感したことは伏せておこう。うん。
とまぁこんな感じで
ニート生活以外に関していえば普通の、
ごく普通の高校生の心を持っているんだよなぁ。
...否、ニートの時点で普通ではないだろう。
ー我が愛すべき自宅に 刻は午後漆時ー
どうでもいい話だが、ニートの中でも
『長い間ニートやってる』なんて理由で
いちいち自宅に戻る度「ただいま」
と言わなくなるのは俺だけだろう。
そう心で呟いて本当にどうでもいいと
思い始めた俺は、自室に戻ることとした。
ちなみに俺の妹は中学三年生。
…っつーことは俺の部屋には必然的に
『妹』がいることになる。
てか、いないとおかしい。
何故かって?俺の部屋にしか
ゲームがないからさ。マジ残念。
自室に戻ると予想通り、我が妹、
『不知火 美衣』が
俺のゲームを漁りながら帰りを待っていた。
...で、俺の帰宅に気づいた途端の一言が、
「...遅い」
これである。お兄ちゃんは笑顔での
「おかえり」を期待したんだけどなぁ...。
まぁそんなやりとりにも慣れたわけで。
…そう、妹はお兄ちゃんにとことん冷たい。
そんな美衣ではあるが俺の手に持っている
ソレを見た途端にまるで真冬の吹雪のような
冷酷の真顔から満開の桜並木のような
笑顔になったのは気のせいではないだろう。
そりゃあもう、お兄ちゃんには
見せたことないような。
お兄ちゃんにも少しは優しくしてくれ。
そろそろ泣いちゃうぞ?
優しくしてくれないから。
「知らない、そんなことより…♪」
無論、美衣の目線の先は俺の右手に持ってる物だ。
...お前のゲームに対する
執着心はなんなんだよ。全く。
と、そろそろこれをしておかないと
失礼極まりなくなるであろう…
…ここで美衣の紹介といこうか。
『不知火 美衣』
年齢・15歳
職業・自宅警備員
好物・ゲーム
特技・ほぼ全てのジャンルのゲーム、賭け事、徹夜
一言
俺としては自分の後を追って自宅警備員
になってほしくなかったのだが…
いつから取り返しがつかなく
なったのだろうかなぁ。チクショウ。
恐らく理由は俺と同じだろう。
兄妹は似るというが、こんな所まで
似て欲しくはなかったぞ、お兄ちゃん。
ーある日の日の出 刻は午前伍時ー
ちょうど半年前だが…人生初の
三徹をしたことがあった。
…美衣はそん時八徹したらしいけど。
「今…何時だ?美衣」
「5時。…まさかもう寝ちゃうの?
お兄ちゃん。…情けないね」
普通常人なら一日の終わりには
睡眠を取らないといけないが、まぁ
世間一般でいうところの『徹夜』を
した人間は多いのではないだろうか。
…分かる通り、別に毎日睡眠を
取らないといけないってわけじゃあない。
…でもなぁ、我が妹よ…。
「三徹して起きてられる方が
よっぽどおかしいっての…バタッ」
そこで俺の記憶は途絶えた。
…これは美衣から聞いた話だが、それから
5日、美衣は俺が買ってきたゲームを
寝ずにやってたらしい。…俺は知らん。
という風に極度のゲーマーでもある。
まぁもう一個いえば常人の10倍以上
睡眠欲を必要としない。
だからこんなに徹夜できるわけだ。
…ますます心配になってくるがな。
とまあこんな感じである。
要するに俺らは兄妹揃って自宅警備員
という素晴らしい職業についている。
…ほんと兄妹って似るな。怖いくらい。
ー翌日の大都会 午前10時 家電製品店前ー
俺が今いるのはニートには辛い
大都会だ。…俺だから行ける場所だな。
そんなことはどうでもいいや。
とまあここに来た理由だが、
…お使い。とでも言うか。
どうも自宅の据え置きゲーム機
のコントローラーが使い物にならなく
なったらしいから美衣に頼まれて
買いに来た。…あぁそうだよ。
美衣は極度に人混みを嫌う。
…本来これがニート(引き篭もり)
ってやつなのかもな。わからんが。
…と、その時のことだ。
「‥うわッ!」
突然誰かに引っ張られたっぽい。
体勢を崩して倒れそうになったその時…。
俺は、まるでワープしたかのように
自宅の前に立ってたんだよな。マジで。
手にはなんか紙切れが握られていて、
頭がすげーぼーっとする。…風邪かな?
まぁ風邪でワープしたらそれこそ
超ド件なんだけど。ハハ…笑えねぇよ
この状況じゃあな。クソッ。
…あぁそうだ。手に握られた紙切れ。
なんか書いてあるっぽいし…
これがなんか手がかりかもしれないしな。
その紙切れを調べることにしたんだ。
なんか家に入るのも怖かったし。
紙切れに書いてあったのはこんなことだった。
不知火兄妹へ
我々『異世界紹介所』一同が、
『異世界』をご紹介致します。