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交通事故が眼の前で起きた。
何故、どうしてと聞かれたら、恐らく偶々偶然だと思われる。
それを俺は目撃してしまったわけで、俺は・・・
「見たの?」
「・・・ぅ、あぁ、」
俺は見てしまったんだ。
「ワタシが見えるんでしょ?」
「ちが」
呼吸が定まらない中、俺は目の前のそいつを見入る。
「うぅん、ワタシが見えてるのは皆同じ。だけど貴方はワタシのコレを見ているんでしょう?」
「あぁ・・・ああああああああああぁぁあああ!!!!!!!!!!!」
俺は人混みを掻き分ける。
周りが俺を怪訝な目で見ている。
「馬鹿だな・・・あ、そうだ。丁度新しい身体を探してたんだった。」
周りは何故平然としていられるのだろうか。
「はぁっ!はぁっ!」
周りの人物達は何故───────
「あはっ♪」
(ちょっと君、食べさせてね。)
俺が溶けていく音がした。
溶けていく。
溶けて溶け・・・て
ドサッと、人が倒れる。
歩いていた人々が次々に止まったり、倒れた人物に話し掛けている。
その近くに棒立ちする1人の男がいた。
「ぁ・・・あー。」
不謹慎な事に、棒立ちしている男は足元に倒れている人物には目もくれず、目の前の一点を見つめていた。
「ぁー、あぁー・・・まぁ、こんなところか。」
周りは倒れた人物に目が行っており、誰もその男に対して話し掛けるものはいなかった。
男はその観衆の群れから離脱し、歩き出す。
「喰いかけだから、死にゃーしないぜ♪・・・多分な。」
誰も気付かない。
誰しも気付かない。
倒れた人物と同じく、男の額から上の頭部だけが
消失していることに。
「“黄色い目,,かぁー・・・見つかったら、ワタシがぜーんぶ喰べちゃおうかなぁー♪」