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本完霊師  作者: 鵜梶
第1章【面倒くさがりな少年】
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4ページ目

優斗は前髪を戻す。


指先だけではなく、身体全体が震えた。


昨日から優斗はこんな事を何度も繰り返している。



昨日の夜の事。それをただ聞きたかっただけなのに、優斗自身の秘密の方が何故かバレてしまった。優斗は焦りを隠せない。手足が震え、頭が真っ白になった。



「その瞳って・・・裸眼でそうなのか?」



ツルボの質問に答えられない優斗は、立ち上がり保健室を出ようとする。



「何処に行くんだい?」



直ぐ様アカザに扉を塞がれた。



「退いてください・・」


「退かないよ。理由聞いてないもん。」


「あんた達の事がどうでもよくなった。それだけだ。昨日の事は誰にも言わないし、聞かれても答えない。それでいいだろ。」


「さっきまでの君の意見とは全く違うけど・・・やっぱり君の眼は」





アカザが最後まで言い切る前に、優斗は保健室から出て行く。乱暴に扉を開けた為、廊下に居た生徒が此方を振り向く。それを無視し、優斗はある場所に歩き始めた。


徐々に歩いていたのから駆け足に変わり、最後には走っていた。身体中から汗が溢れる。まるで悪寒が止まるのを知らないかの様に、心臓の音が鳴り止む事をしない。




何故聞きたがったのだろうか、



今までこんなにも興味が湧く事など一度も無かった。



前髪をたなびかせながら、優斗はある記憶を思い出す。





タバコの匂い。


酒の匂い。


ゴミが山になり、異臭へと変わってしまっているリビング。


怯える妹。


テレビを見て笑う父。



何もかもが恐怖が募る日々。




何故だろうか。

今この状況でこの事を思い出すのは。





「─────・・・くそっ」




優斗はある場所に到着した。


今までの空気が一片変わって静寂が包まれる。

胸ポケットに入れておいた鍵を取り出し、目の前の扉の鍵穴に差し込む。



図書準備室第二保管庫室。



ここは優斗以外は余り立ち寄る者はいなく、教師ですら煙たがる曰く付きと言われる教室。暦書物もあるが、中には明らかに読んではいけないような代物もある、本のゴミ捨て場と言われる場所。

優斗はそこの管理を任されていた。


体育の授業を出ない代わりに、何故だか書物絡みの仕事を押し付けられた。優斗自身も然程気にしていなかったが、このような非常事態に備えてのある意味逃げ場所ともなっていた。



扉を開けて中に入る。




鼓動の音がやけに五月蝿く聞こえた。



「・・・ちくしょう」





優斗は腰から崩れ落ちた。












保健室。

二人は沈黙を続けている中、蔓穂から藜に話し掛けた。



「アカザ、いきなり何事かと思ったが・・・これはどう言う事だ?何故黙ってた?」


「言えなかったんだよ、別に黙りたかったから言わなかったわけじゃない。確信が欲しかったから言わなかった・・・だけど、正直僕も驚いてるんだ。」


「・・・だろうな。」


「偶々そんな“ 力,, を持ち、しかし見えてしまっていたのは事実。けど、僕はこの後どうしたらいいのかわからないんだ。」


「そうだろうな・・・事例がない。私も色々な文献を読んで来たが、そう言った記述は無かった。」


「・・・どうしたらいい?」



アカザを顔を伺うと、焦りの色はあるものの、何処か楽しむ子どもの様な表情を浮かべてツルボに視線を送る。



「・・・先ずは、何故記憶が消えないか確認してみよう。恐らくあの眼が原因だと推測は付くけどな・・・」


「うん・・・でも何で──────魔書が効かないんだ?」










記憶消去魔書メモリー・デリート・・・詠唱系とは言え、かなり即効性もあって効果はある筈の物だ。なのに彼はその“魔書,,が効かない・・・」









「あの子は一体何者なんだ?」











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