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魔夢と遭遇してから約一時間が経過しようとしていた。
現在優斗は先輩のアカザと、アカザの兄弟のツルボ、そして複数の紺色のローブを羽織った集団と一緒にリムジン並みの長い車に乗車し、共に行動をしている。優斗は車の椅子に座り、左右にアカザとツルボが座る形となっていた。
殆どの人が喋らずに、淡々と手元の書類と思われる紙の束を回し読みして行く。中には隣同士会話をしている者もいるが、聞き耳を立てる限りいい話ではないということだけはわかる。
話の内容は恐らく彼等にとっては当たり前、日常で起きた闘いの事だろう。が、優斗は昨日までこの様な世界は知りもしなかったのだ。死やそういった隠語が多く、正直グロい。
優斗は手を強く握る。
今までの事を整理すると、先輩にまた助けられた。そして優斗は魔夢と言うバケモノに狙われているらしく、先輩の私情もあったが、一時的に保護扱いとなった。
が、それだけではない。
優斗は昔から己の目のせいで、イジメや酷い目に散々あってきた。そして今回もこの目が原因で2度目は襲われた。
ずっと考え続けて来た。
何故自分の目は誰とも違うのだろうかと。
「大丈夫?顔色悪いけど・・・ごめんね。一時的に保護扱いととか言ってるけど、本当は君を少し調べる為の言い訳に過ぎない。悪いけど、本当に君が安全かを確かめるまでは、何度かこういう形で君を僕等と一緒に行動させるかもしれない。」
「俺が・・・人殺しでもするっていうのか?」
「君が人殺しになり得るかもしれない。何故なら君は僕等の義眼と同じ力を持っているからだ。」
「・・・義眼って、あんたも?」
アカザは優斗に見える様に髪を掻き分け、目を見せて来る。
「そうだよ。僕等は本完霊師になる際に義眼を両眼に埋め込む。それは昔からの風習みたいな物だけど、実質は君が見える様に、僕等も見えなくならないといけないんだ。」
「見える?俺、特に何も見えないけど・・・あ」
「君は何でそんなにも疎いのかな・・・君は僕の目の色、髪の色、そして恐らくはツルボの目の包帯も見えているんだろう?」
「包帯も他の奴には見えないのか?」
「やっぱり見えていのか・・・」
アカザは軽く苦笑をし、ツルボも隣で呆れてなのか溜め息を履いた。
「私の包帯が見える時点で、君の眼は特殊だ。他の人間には見えん。」
特殊。
それは普通ではないという事だと言うのは理解出来る、が、何故その様な包帯やら、目の色やら、頭部が消失しているのが見えるという事が特殊なのだろうか。
特別見えていても、あまり害はない気もするが・・・
車が停止したと同時に、一斉にローブを着た人達は立ち上がり車を降りて行く。優斗もアカザに手招きされ車を降りると、そこには昔の時代劇にでも出て来そうな屋敷が聳え立っていた。
そのままアカザは歩き出し、屋敷内へ入る様にと優斗をこちらへと誘導される。
歩いていると、ふと足元に違和感があった。
チラッと足元に視線を送ると、そこには人の形をした1枚の紙が落ちていた。何気無くそれを拾い上げるが、拾い上げると同時に灰の様に崩れてしまった。
「・・・なにこれ?」
「何しているんだ?」
優斗の行動を不審に思ったツルボが、優斗に話し掛ける。
「あ、今変な紙が・・・」
「そんなは物ないが・・・皆君を待ってるんだ。そんな事より早く歩いてくれ。」
「ご・・・ごめん。」
そそくさとあとを追う。
この時、誰しもが気付かなかった。
優斗が何気無く触れた物がこの屋敷を戦場に変えることなど、優斗や周りの者は知る由もなかった。




