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其処からアカザは、まるで風のような動きで相手に斬り掛かった。防壁の魔法陣が解かれると、相手に向かって走り出し、見えないくらいの速さで斬撃を繰り出す。
相手は徐々に削ぎ落とされていき、最後には煙幕の様なモノを発生させて逃げられたのだった。その際に、優斗に笑いかける。
「私達は貴方を何度でも殺しに来るでしょうね。」
不気味だった。
ツルボが言うには、どうやら煙幕などの撹乱に使う物は、魔夢の十八番の様なものらしい。何度もこの様な手では逃げられているのだとか・・・優斗自身一番この状況に困惑しているが、そんな事は御構い無しというかの様にアカザはこちらに近寄ってくる。
「大丈夫かい?見た所、余り怪我とか無さそうだけど・・・一応救護係に診てもらって?」
「・・・俺は別に、先輩の方が重症に見えるんですけど」
1番手負いなのはアカザ自身なのに、人の心配をするとはかなりのお人好しなのだろう。
「今回はまだ優しい方だよ。全身骨折何てこともあったから、これくらいなら直ぐに治癒すると思う。」
「そういう問題じゃないから。俺が言いたいのはあんた等は何でそこまでしてまで俺を助けるんだよって事で、別に心配したわけじゃないんですけど・・・」
「さっき言った通りだ。僕は君に興味があるし、何より僕達の本質は人を守る事。君が守って欲しくなくても、僕等は君を助ける義務があるんだ。」
「・・・あっそ」
駐車場入口付近から、何台が車がやって来た。駐車場利用者ではなく、どうやらツルボが呼んだ応援の様で、アカザ達に近づいて来る。皆同じ様な服装をしており、大き目の紺色のローブを羽織っている。
「状況は?」
「現在南地区に出没した大型魔夢は逃走。先程まで戦闘していましたが、僕と相方2人では手に負えず、取り逃がしました。恐らくあの魔夢が先程の変死体の犯人と思われます。レベルは5以上と推定。」
「了解した。一度本部に戻り体制を立て直そう。・・・そこの子は?」
一斉に優斗に視線を向けられる。
優斗は余りにもの威圧感に、数歩後退りをしてツルボの後ろに隠れる。
「今回の魔夢においての事件が多発している原因は、どうやら彼が鍵のようです」
「どういう事か説明して貰おう、十綱副班長。」
「・・・全てはわかりませんが、恐らく彼の眼は我々にとっても、そして魔夢にとっても、脅威になるかもしれません。なので一度保護しようと僕個人の独断で考えました。」
「眼?」
「はい。彼の眼には恐らく僕等の義眼と同じ役割を持っています・・・裸眼でありながら。」
アカザは優斗に奇異な視線を向けるが、その後直ぐに笑って見せた。まるで情緒不安定の人間かの様な、表情の入れ替わりに、目を疑う。
「事情は後で詳しく聞こう。・・・そこの少年。我々と一緒に来てもらうが、構わないか?」
優斗は迷った。
「・・・はい。」
最後には承諾する形となった。
「その前に1ついいですか?」
優斗はアカザとツルボ、そして目の前にいるローブを着た集団に質問を投げかける。
「あんた達は何者なんですか?」
沈黙後、口を開いたのはアカザだった。
「国家特例科、魔夢対策機関。本完霊師。」
「それが僕等だよ。」
「聞いたことない。」
「結構授業でも出てんるだけど・・・あ、そっか。それは3年になってからか。」
話しながら相手のペースに合わせて歩く。
「これから起こる事も、聞くことも、全てが本来知られてはいけない機密の物が殆ど。他言無用でお願いするね。」
栗原優斗、17歳。
こうして彼は巻き込まれて行く。
世界の歪みへ。




