本の表紙
目の前が青い。
全てが青い。
「主は何故、そんなにもあの者を敬愛するのだ?」
「そうだね、何故だろうね」
私は一言師匠に告げる。
「ならば問いを変えよう。何故主はそんなにもあの者を愛せるのだ?」
「さぁ、私にもわからないよ。そんな心理」
「わからないのに好きであり続ける事が出来る・・・我々は何かを敬愛したり、執着する事はない。だからそなた達のその心理に興味がある。」
「そうだろうね。僕にここまで手厚く世話をしてくれたんだ、君の考えそうな事は直ぐにわかったよ。」
アレから1000年以上。
私はここで1つの答えを見つけた。
「主、本当に行ってしまうのかえ?」
「あぁ、世話になっておきながら身勝手で申し訳ない。」
「・・・愛する者に殺されるかもしれんぞ。」
「ははっ、そう簡単に死なないよ。私は君に異形の力を受け継いだ身だ。何度殺されようとも、何度でも生き返る。」
「転生の能力は無限では無い。知っておろうが、転生にもリスクを伴う。」
わかっているさ。
師匠、君には世話になって来た。
だから僕は言おう。
「私は何度も彼女に殺されて来たけど、その度に思う事があるんだ。」
「・・・聞こう。」
「やはり私はリスクを負いながらも、彼女を私の手で救いたいのだと。」
「他愛ごとを・・・主は恐らく次の転生では能力をほぼ失うだろう。それでも尚、此処を離れようと、そなたの思い人を救いに行くというのか?」
「何を失っても構わないさ。」
私は決めた。
どんなに犠牲が出ようとも。
「私は、私を殺してでも彼女を救うさ。」
「・・・主の決意は固い。」
そう、決意は人一倍だ。
「師匠、人間の言葉にはこんな言葉があるんだ。」
「ことわざという奴か?」
「そんな物だね。」
師匠の刃が、私を貫いた。
私の血が、体液が、全てが流れる。
「人は、恋をすると、病むように壊れる。」
私はそこで死んだ。
何時もとは違う。
本当に眠りに落ちた様に、死んでしまった。