第7話。静寂
水道の蛇口をひねり、顔にかかったゾンビの体液を洗い流そうとしたのだが、水が申し訳なさ程度にしか出てこない。
『参ったなぁー水も使えないとなると…まさか…』
…予想通り電気もつかなかった。最悪の事態だ。
灯りもないんじゃ、心細い。あのドアの向こうには『奴』がいるんだ。
今は何故だか扉の外はシーンとしている。
不気味な静寂がこの部屋を、僕を包み込んでいた。
ぞっとした。
恐怖を振り払うかのように僕はロウソクを探した。確かロウソクがあるはずだ。
あった、あった。以前、計画停電というのがあって、その時に買っておいたものだ。これはその時に余ったロウソクだった。これだけあれば、1週間は大丈夫そうだけど。
1週間!長いようで短い。
それまでにはいつもの生活に戻れるといいのだが。
あんなに疎ましかった社会生活を今の僕は望んでいるのだろうか?
いや、それはない!と思った。あの生活に僕は、確かに心の底から疲れてしまっていた。社会を嫌悪していた。
でも、『あんなのに』殺されるのは厭だ、まだ死にたくないと思った。
あとは…食料か。冷蔵庫を開けてみる。
当然のことながら冷蔵庫も停まってしまっていた。
冬と言えども温暖化で暖冬の昨今、食料も長くはもたない。
とは言ったものの冷蔵庫の中身は空っぽに近い状態だった。あるのは麦茶…だけだった。常温保存していた食べ物が確かあったはずだ。冷蔵庫の横にある引き出しを開けてみた。
魚肉ソーセージ5本とポテトチップス特大サイズ、フランスパン2つ、チョコパイがあった。
『参ったなぁ!これだけか!』