6.脱出
駐車場のカルティニの怒号は、逃げていた有騎達のところまで聞こえていた。
距離にして500メートルは離れているはずなのに、まるですぐ傍で発せられているかのようだった。
「おっかねえ。」
前方を走っていた一馬がそうつぶやく。
体が大きく、怪力の持ち主である一馬がこんなに怯えているところを見たのは初めてだ。
いや、正確には、小さい頃、近所の草むらで一緒に遊んでいた時に、蛇が出てきた時以来だろうか。
「まあ、これだけ離れれば、幾らなんでも追いつけねえだろうよ。」
こういった楽観的なところは、いつものままのようだ。
だが、その楽観的な考えは、一瞬にして改めることになる。
次の瞬間、催涙ガスの中から、巨大な体が勢いよく飛び出してくる。
カルティニは、催涙ガスなどまるでないかのように、平然と飛び出してくると、こちらに向かって凄まじいスピードで向かってきた。
「この穴は一体なんだ?なぜ誰も気づかなかった?」
そして、手持ちの端末に向かって怒鳴りつける。
その迫力たるや、まるで鬼神である。
「少し前に、ディルスターの地下工事申請があって、その時作られたもののようです。」
「ディルスターの施設に一直線に向かって穴をあける工事を、ここの連中は何とも思わなかったのか?」
カルティニは走りながら、端末に向かって大激怒していた。
「この穴の終点を分析して、大至急州兵を送りこめ。」
「ハッ、わかりました。」
カルティニは端末を切ると、今度はこちらを睨み付けながら、さらにスピードを上げる。
速い、コイツは人間なのか?
「ヤバい、このままだと追いつかれる。」
後方を走っていた仲間が、悲鳴に近い声を上げる。
「確かに、このままだと追いつかれちゃうね。」
有騎の横を走っていたサリファがそう言う。
本当にこの人は一体何を考えているのか、有騎にはさっぱりわからなかった。
有騎達は、別にサリファを拘束しているわけではなかった。
一応、有騎がサリファの手を引っ張ってはいるが、こんなの拘束とも言えない。
今、彼女が有騎の手を振り払って、カルティニの方に向かって逃げ出したとしても、誰も後を追いかけようとする勇敢な者はここにはいないだろう。
それくらい、後方から追いかけてくるカルティニに、全員が恐怖していた。
しかし、彼女は、あくまで自分達と一緒にカルティニから逃げようと走っていた。
これじゃあ、まるで自分から進んで誘拐されようとしているみたいじゃないか。
わけがわからない。
「えーい、これでも食らえ。」
後方を走っていた連中が、カルティニ目がけて、持っている全ての催涙弾を投げつける。
「よし、これで時間がかせ・・・」
が、煙幕の中から、カルティニは勢いよく飛び出してくると、さらに加速する。
催涙弾が足止めにすらならないのを見て、全員が戦慄する。
「催涙ガスの中を平気で突っ込んできやがった。アイツは本当に人間か!?」
「このまま一気に突き進め。今はサリファ嬢の確保が優先だ。」
有騎達は全力で駆け抜ける。
もうすぐ出口だ。
この穴は、ずっと先まで掘っているが、そこはダミーの出口で、もう一つ脇から出る別の出口を用意していた。
おそらく州兵は、今頃ダミーの出口の方に集結しているだろう。
本物の出口を出ると、スラム街の通りに出る。
そこをしばらく突き進んだところが、仲間との合流地点になっている。
だから、そこに着くまでに、何とかカルティニを振り切らないとマズいことになる。
出口付近には、予め別働隊が待ち構えていた。
目的は、追手を食い止めるための時間稼ぎを行なうためだ。
「ここは俺達に任せて、先に進め。」
別働隊は、仲間が全員通り過ぎるのを確認すると、一斉に拳銃を構える。
それはディルスター製の武器ではなく、旧式の拳銃だから、DICTの制御を受けることなく、ディルスターの人間に対しても容赦なく発砲できるものだった。
「全員撃て!!!」
次の瞬間、後方から無数の発砲音が聞こえてくる。
「さすがのSALIDの兵士でも、さすがにこれなら・・・」
「あれじゃカルティニを止められないよ。」
だが、有騎の期待を、すぐにサリファが打ち砕く。
そして、サリファの言った通り、次の瞬間、待機兵が一斉にこちらに向かって逃げ出してくる。
「なんだ、アイツのアレは!?」
「拳銃の弾を全て弾き返しやがった。」
慌てて逃げてくる待機部隊の驚嘆の声を聞いて、全員の顔が青ざめる。
拳銃の弾を弾き返せる人間なんて、この世にいるわけがない。
あれはもう人間ではない。
「カルティニは、瞬時に特別なシールドを発動できるんだよ。
もっとも、相手の銃を撃つタイミングに合わせて瞬時にシールドを出すなんてことができるのは、カルティニぐらいなんだけどね。」
サリファが笑顔でそう話すが、周りの人達はサリファの話を聞いて、さらに表情をこわばらせていた。
だが、シールドの発動のおかげで、カルティニのスピードは少し落ちたようだ。
おかげで少し距離は稼げたようだ。
「じゃあ、あとはこれしかあるまい。」
一馬が後方に手りゅう弾を投げる。
「さすがの奴も、これならどうすることもできまい。」
一馬はニヤリと笑う。
次の瞬間、爆発が起こると、その衝撃で穴が崩れ出す。
だが、予想以上に爆発の影響が大きく、有騎達を追いかけるように穴が崩れてくる。
「ヤバい、逃げろ。」
全員、全速力で出口に向かって走る。
そして、何とか穴が崩れる前に、全員無事に脱出することができた。
「ふう、ようやく撒けたな。」
一馬が安堵の表情を浮かべる。
「安心している暇はないぞ。さっきの爆発は感知されたはず。すぐに州兵がやってくるぞ。」
秀秋はそう言うと、全員に走るように促す。
「もうすぐ合流地点だ。頑張れ。」
一馬が大声で叫ぶと、全員一斉に走り出す。
最大の危機が去ったせいか、少し心に余裕ができた有騎は、サリファのことが少し気になっていた。
(俺達と一緒にここまで来た理由はわからないけど、さすがにカルティニのことが心配になってるんじゃないだろうか?)
そう思って、サリファに声をかけようとした時だった。
「みんな、急いで。このままだとカルティニに追いつかれるよ。」
サリファが大声でみんなに呼びかける。
それを聞いて、全員が後方の崩れた穴の方に視線を向ける。
とその時、後方の地面から凄まじい音が聞こえてくる。
「う、ウソだろ!?」
もう、その場にいた全員が、驚くことしかできなかった。
なんと、カルティニは地面を拳で割って、地表に飛び出してきたのだ。
アイツは超人か?
その光景を見た仲間全員がそう思った。
再び、死の鬼ごっこが始まる。
あんなのとまともに戦っても死ぬだけだ。
自分達にできることは、逃げることしかない。
しかし、合流地点はもうすぐそこだ。
このままだと、合流地点にアイツを連れて行ってしまう。
合流地点に行っても、すぐに脱出できるわけではない。
全員車に乗って、脱出するまでに絶対にアイツに追いつかれる。
有騎達の乗ってきた車は、大型トラックに分厚い装甲を施した改造車だが、地面を拳で割る男相手には、車の装甲も何の役にも立ちそうになかった。
そして、奴に時間を稼がれているうちに、州兵に囲まれてしまうだろう。
一体どうすれば・・・?
考えていたのは有騎だけではなかった。
一馬も秀秋も、その場にいる仲間全員が、どうやってこの窮地をぬけようか、必死になって考えていた。
「みんな、よけて!!!」
とその時、前方から突然聞きなれた声が聞こえてくる。
それは、合流地点に待機している奈央の声だった。
カルティニの方を見ていた有騎は、奈央の声のする方を振り向いて、そして絶句する。
合流地点に待機していた奈央は、こちらに武器を構えて待っていたからだ。
「ウソだろ!?あれはロケットランチャー!!!」
奈央の前には、ロケットランチャーがこちら側に大きく口を構えていた。
「全員よけろーーー!!!」
とっさに一馬が大声で叫ぶ。
次の瞬間、ロケットランチャーから小型ミサイルが発射されると、こちらに向かって一直線に突き進んでくる。
「危ない!!!」
有騎は無意識のうちに、隣にいたサリファを抱えると、脇に倒れこんだ。
有騎達のよけた空間を、ミサイルが背後のカルティニめがけて突き進んでいく。
「何!?」
カルティニは前方の集団が死角になり、ミサイルの接近に気がつくのに一瞬遅れる。
だが、カルティニは近くの側道に間一髪でダイブすると、ミサイルを交わした。
ミサイルは、凄まじい勢いでそのまま後方の頑丈そうな壁に突き刺さる。
ミサイルは爆発しなかったが、壁は大きくへこんで亀裂ができており、破壊力の凄まじさを物語っていた。
「あ、危ねえ・・・」
一馬がゾッとした表情でそうつぶやく。
(奈央の奴、敵を撒くためとはいえ、俺達に向かってミサイルをぶっ放すとは・・・)
有騎は完全に頭に来ていた。
「ふざけんなよ奈央、なんて物騒なものをぶっぱなしやがる。」
気がつけば、有騎はサリファの手を掴んでいることも忘れて、奈央のところまで怒鳴りに行っていた。
だが、有騎の怒鳴り声を聞いて、奈央もカチンと来る。
「アンタこそ何やってるのよ。いつまで人質の手を握ってるつもり。」
奈央に言われて、初めてサリファの手を握ったままであることに気づいた有騎は、慌てて手を放した。
「ご、ゴメンなさい。これはつい・・・」
「私は別に気にしてないよ。」
サリファが笑顔で応える。
本当に、この人は美しい人だ。
この人の笑顔を見たら、さっきまでの怒りがどんどん消えていく。
多分、とても優しい人なんだろうと有騎は思った。
「何よ、デレデレしちゃってさ。」
奈央が有騎に突っかかって来る。
それに比べて、奈央は本当に可愛げがない。
この人の1000分の1くらい女の子らしければなあ。
などと思いつつ、再び奈央の方を振り向いたその時だった。
奈央の背後には、いつの間にかカルティニがいた。
奈央がミサイルを撃って、俺と口論しているわずかな時間の間に、誰にも気づかれずに背後に回り込んだと言うのか?
「奈央、危な・・・」
有騎の言葉が奈央に届く前に、カルティニは奈央を捕まえると、ナイフを突きつけた。
「ア、アイツ、いつの間にあそこに!?」
有騎達の口論を眺めていた秀秋も一馬も、他の仲間も全く気付かなかったようだ。
奈央はカルティニの迫力に体がすくみ上がっていた。
「貴様ら、この子を殺されたくなければ、おとなしく投降しろ。」
カルティニがそう言うと、奈央の喉元にナイフを突きつける。
奈央の口から、思わず悲鳴がこぼれる。
脱出する車は、カルティニと奈央の向こう側にある。
つまり、カルティニを突破しない限り、車までたどり着くことができない。
待機部隊がいることはいるが、作戦の方にほとんどの戦力を回していたので、運転手を含めて数人しかいない状況だ。
もっとも、何人残っていようが、あのSALIDの戦士相手じゃ、どうすることもできないだろう。
相手がSALIDであることは、秀秋が待機部隊に伝えていた。
だからこそ、奈央はロケットランチャーを構えていたのだろう。
だが、今のこの状況で、カルティニに向かって行こうとするものは誰一人いなかった。
それも仕方のないことだろう。
拳銃を弾き返したり、手りゅう弾の爆発にも耐え、地盤を拳で叩き割るような男である。
しかも、そんな強いSALIDの戦士が、奈央まで人質に取っているのだ。
有騎達にはどうすることもできなかった。
有騎達は武器を地面に置き、全員両手を上げる。
その光景を見て、カルティニは少し安堵する。
(やはり、コイツら、誘拐に関しては素人の集団だな。)
プロフェッショナルな集団であれば、味方の人質など気にすることなく、目的を完遂する。
そういう連中は例外なく特殊な訓練を受けた集団であることが多く、カルティニと言えども苦戦は必至である。
しかし、目の前の連中は、そういった訓練された統率のようなものが全くない。
だから、素人集団と判断して、カルティニは女性を人質に取ったのだ。
人質に取るには、男よりも女の方が効果的な場合が多いことも、カルティニは経験則で知っていた。
案の定、カルティニが奈央を人質に取ったことで、周りの連中は一斉に手を上げ始める。
その場にいた全員が手を挙げているのを確認すると、サリファの方に視線を移す。
カルティニは、その場にいた全員が手を挙げているのを確認すると、サリファの方に視線を移す。
「大丈夫ですか、お嬢様?」
カルティニは、サリファが無傷であることを確認し、少しだけ安堵の表情を浮かべる。
「はあ、やっぱりダメかあ。」
しかし、サリファはカルティニの方を見ると、大きくため息を一つついた。
一方、有騎は、奈央が人質に取られているのを見て、頭の中がパニックになっていた。
一体どうすれば、この状況を打開できる?
どうやったら奈央を助けることができる?
その時、カルティニと奈央を見て、有騎は気がつく。
そうだ、こっちもサリファを人質に取ればいいじゃないか。
サリファは頭を上げると、カルティニの方を見る。
「私なら大丈夫だよ。それよりも、その子を―――」
サリファが話しを終えるよりも先に、有騎はサリファを引き寄せると、サリファの喉元にナイフを突きつける。
「奈央を放せ!!!」
そして、有騎はカルティニを睨み付けた。
「貴様・・・お嬢様に対してなんてことを・・・」
カルティニは目の前の光景に激怒し、さらに怒りの表情を浮かべていた。
(この人怖い・・・怖すぎる・・・)
自分を人質に取っているカルティニの表情がさらに険しくなるのを見て、奈央は恐怖のあまりずっと半泣き状態になっていた。
怖いのは、有騎も同じだった。
目の前の大男は、はっきり言って化け物だ。
自分がどうあがいても、到底かなわないだろう。
だが、ここで俺が恐怖に屈してしまったら、奈央も仲間も絶対に助からない。
奴に時間を稼がれているうちに、ここに向かっている州兵に囲まれてしまえば、そこで終わりである。
奈央を助けるためにも、みんなを助けるためにも、どんなに怖くても、ここで絶対に引くわけにはいかなかった。
「うるせえ、貴様こそ、お嬢様を傷つけられたくなければ、すぐに奈央を放せ。」
そして、サリファの頬に強くナイフを当てた。
「おお、キミ、さっきと違って本気だねえ。やっぱり人質を取る時は、これくらいの迫力がないとね。」
サリファが有騎の耳元で小さな声でそう言うと、有騎は思わず脱力しそうになる。
(この人は一体何なんだ?俺にナイフを突きつけられているというのに、どうしてこんなに平気なんだ?)
そして、全く動じていないサリファに、有騎は次第に怖さすら感じるようになる。
「カルティニ、その子を放してあげて。」
サリファは笑顔のまま、カルティニに向かって命じた。
「えっ、しかし・・・お嬢様・・・」
「ふーん、カルティニは、私がこのままこの人に刺されてもいいって思ってるんだ。」
サリファが意地の悪い笑顔を浮かべる。
「そ、それは違います。お嬢様。私は、お嬢様のことを・・・」
「だったら、その子を解放しなさい。」
今度は、有無を言わせない強い口調で言い放つ。
その迫力に、有騎は驚いて、思わずナイフを落としてしまった。
(なんだ、この子の迫力は?見た目はかわいくて優しそうな女の子なのに・・・)
「お嬢様・・・わかりました。」
サリファの迫力に観念したのか、カルティニは奈央を解放する。
解放された奈央は、よほど怖かったのか、半泣き状態で一馬の元に駆け寄る。
「さて、これで、残るはキミだけになったねえ。」
サリファはそう言うと、今度は有騎の方を見る。
(何だ、この人のこの余裕は・・・ナイフ突き付けられてる人の態度じゃないぞ・・・ってナイフがない。)
このタイミングになって、ようやく有騎は自分がナイフをもっていないことに気づく。
最初は、俺は目の前の大男が怖くて仕方がなかった。
しかし、今は、人質にしている目の前の美しい女の子の方が怖くて仕方がなかった。
「い、行くぞ、有騎。サリファをこっちに連れてこい。」
一馬の声で、ようやく有騎は我に返る。
しかし、サリファを掴む有騎の手は、いつの間にか緩々になってしまっていた。
サリファは有騎の手を払うと、あっさりと脱出してしまった。
サリファの有騎の手を払った動き、あれは何らかの武術でもやっているような動きだった。
だが、そんなことはどうでもいい。
せっかくの人質を逃してしまった。
だが、一瞬の出来事に、有騎はどうすることもできなかった。
「キミ、ダメだなあ。そんなんじゃ人質にすぐに逃げられちゃうぞ。」
サリファは脱出すると、有騎に向かって笑顔で決めポーズを見せる。
(一体何なんだ、この人は?)
有騎は茫然とした表情で、サリファの方を見ていた。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
脱出したサリファの元にカルティニが駆け寄ってくる。
だが、サリファはカルティニには返事を返さず、すかさず別の質問を返した。
「カルティニ、追手はここにどれくらいで到着する?」
「追手って・・・もう間もなく州兵がやってくるとは思いますが。」
「そう・・・」
サリファはそう言うと、今度は有騎の方に向かう。
「えっ!?」
サリファが有騎の手を掴むと、一馬達の車の方へと向かう。
「ほら、キミ達、なにをボサッとしてるかな?
聞いての通り、もうすぐここに州兵が来ちゃうよ。
さっさと脱出しないとマズいでしょ。」
「えっ、ああ、そうだね・・・」
有騎はそう言うと、サリファの忠告通りに、慌てて一馬達の車の方に向かおうとする。
が、その有騎の服を、サリファが思い切り掴む。
「ちょっと、キミ、人質ほったらかして、自分達だけで逃げるつもり?」
サリファがそう言うと、有騎もカルティニも驚いた表情を浮かべる。
(なんだこの状況は?)
有騎はわけがわからなくなっていた。
「ちょっと、お嬢様、これは一体どういうつもりですか?」
カルティニが、慌ててサリファの元に駆け寄ると、サリファの手を掴む。
そのカルティニの掴んだ手を見て、サリファはカルティニの方を見る。
「ねえ、カルティニ。」
「何でしょうか、お嬢様。」
「さっき、私に言ってくれたよね?
どのようなことがあっても、私の傍について、私を守ってくれるって。」
「もちろんでございます。」
カルティニがそう返事すると、サリファはカルティニに頭を下げる。
「じゃあ、お願い。何も言わずに、私と一緒についてきて。」
「ええっ!?」
突然のサリファのお願いに、さしものカルティニも驚く。
「ちょ、ちょっと、これは一体どういうことですか?」
カルティニがサリファに強く尋ねかけるが、その時、遠方から州兵が近づいてくるのが見えてくる。
やはり、先程の爆発を感知してやってきたようだ。
「説明は後。ちょっと、そこのキミ?」
サリファはそう言うと、再び有騎を呼び寄せる。
「また俺ですか?」
「俺ですか・・・じゃないでしょ。
キミが私を人質に取ったんだから、最後まできちんと人質に取りなさい。
あと、そこの大きな人?」
サリファは続けて、今度は一馬を呼び寄せる。
「ええっ、俺!?」
突然、サリファから呼ばれて、一馬は驚く。
「あなたはカルティニを人質にしてね。」
サリファがそう言うと、一馬もカルティニも驚く。
「なっ、どうしてこの私がこのような者に人質に・・・」
「カルティニは、私についてきてくれるって言ったよね?」
だが、サリファがそう言うと、カルティニは何も言い返せなくなってしまった。
「じゃあ、私とカルティニを人質に取って、早く車に押し込んでください。
そして、とっととここから逃げましょう。」
サリファが笑顔でそういうと、3人は諦めた表情で、サリファに従う。
サリファのシナリオ通り、有騎がサリファを、一馬がカルティニを人質に取って、車に押し込める。
「ぜ、全員乗ったか?」
カルティニを押し込めた後、一馬が大声で点呼を確認する。
さしもの一馬も少し調子が狂っているみたいだ。
「全員搭乗完了。
あと、別の地点で待機していた仲間達も、チェックポイントに待機させていた車に乗って逃走した模様です。
我々もすぐに脱出しましょう。」
「よし、脱出だ。」
一馬の号令で、全ての車が一斉に動き出す。
だが、当然、このまますんなりと帰してくれるわけがなかった。
これから本当の脱出が始まることになる。




