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4.サリファとカルティニ(2)

続きです。

「私はディルスターの兵器開発部大阪事業部の課長だ。

わ、私に手を出したら、ディルスター兵器開発部を敵に回すことになるぞ。」

そして、小悪党のお決まりのセリフを吐く。

企業の役職なんてものは、本来、企業での役割や位置づけを決めるだけのものだが、ディルスター一強の世界がこういった醜い連中を生み出すことになった。

本当に、2,3発入れて、もっと顔を膨れ上がらしてやろうか?

さっきの戦闘で、少しテンションが上がっていたのか、私は豚野郎の元に向かう。

中年男は、わめきながら後ずさりしていた。


「待って、カルティニ。」

とその時、お嬢様の美しい手が、私の手を掴む。

それで、私の昂ぶっていたテンションは一瞬で収まった。

「お嬢様?」

「少し彼と話をしたい。」

お嬢様はそう言うと、怯えている中年男の方へと歩み寄る。

「あなた達のプロジェクトって、もしかして宇宙開発事業部との共同プロジェクトのことかな?」

お嬢様がそう言うと、中年男は驚いたようにお嬢様の方を見る。


「確か、アマテラスを使って、あなた達の持っているミサイル、えーっとファエトンとか言ったっけ?

それを宇宙に目がけて発射できるようにするってプロジェクトのことだよね。

この日本にも、地上から宇宙を攻撃できるシステムを作りたいって話だよね。

宇宙戦争に備えるためなんだっけ?」

「なんで、ワシらのプロジェクトのことを?」

「そりゃあ、私は宇宙開発事業部の人間だからね。

あなた達の話は部内で噂になっていたよ。

もう、ものすごいしつこいってね。」


お嬢様の話を聞いても、中年男はまだ、目の前の女性が宇宙開発事業部の社員ぐらいにしか思っていないようだ。

まあ、偽のサリファお嬢様がお供を連れて徘徊中だから無理もないか。

それに、一週間後に種子島でセレモニーがあることもあって、宇宙開発事業部の人間も大勢日本に来ていたから、社員がここにいてもおかしくはないと思ったのだろう。


「お嬢さんは素晴らしいプロジェクトだと思わないか?

世界を制したディルスターが宇宙も制する第一歩として、このプロジェクトをぜひとも・・・」


「お断りよ。」


中年男の話を遮るように、お嬢様はぴしゃりと断る。

だが、中年男はまだ諦めていない。


「ま、まあ、アンタには、このプロジェクトの意義はわかるまい。

今、大阪に来ている宇宙開発事業部のトップであるサリファ様なら、きっとわかってくださる。」


中年男がそう言うと、お嬢様はため息を一つつく。

目の前にいる女性が、その宇宙開発事業部のトップとは、中年男は夢にも思っていないようだ。


「それにしても、アンタにも強い護衛をついているところを見ると、相当地位の高い人のようだが、もしかしてワシと同じファミリーメンバーなのか?」


ディルスターは大雑把に分けて、3つの階層に分かれていた。


クルサード家をはじめとするエリート層で構成されるディルスター・コア

コア以外の高い地位の人間で構成されるディルスター・スター

それ以外のディルスター社員で構成されるディルスター・ファミリー


その下にも、ディルスターと関連のある企業の社員で構成されるディルスター・グループなんてものがあるが、要はディルスター内での身分階層のことである。

コアに近づくほど収入は高くなるが、入れ替えも激しく、命を狙われるケースも珍しくない。

だから、大抵の社員はファミリー定着で満足するらしい。

もっとも、最近は競争が激しく、ファミリーに定着するのも大変らしいのだが。

この中年男は、ディルスター・ファミリーということは、大した地位の人間ではないようだ。

もっとも、先程のやりとりを見る限りでは、スター昇格を目指しているようではあるが。


「そうだけど、それが何か?」

お嬢様は冷ややかな視線でそう言う。

ちなみに、お嬢様は言うまでもなく、ディルスター・コアの人間である。

お嬢様がそう言うと、中年男はニターッと笑う。

「やっぱり、その美しさ、その気品、やはり同胞だったか。」

「同胞?」

「そう、同胞だ。選ばれた我々ディルスターと、選ばれなかった屑ども。

いや、でも、それだけの美しさを持っているなら、選ばれて当然だな。」

中年男はそう言うと、脂ぎった笑顔を浮かべる。

だが、中年男が笑う一方で、お嬢様の表情はどんどん険しくなっていく。

ヤバい、お嬢様の機嫌がまた悪くなった。


「どうかしたか?気分でもすぐれないのであれば・・・」

お嬢様の様子に気づいたのか、中年男が声をかける。

いや、お前のせいだから、お前が消えれば解決する話なんだよ。


どこかで休憩しようか?

そういって、中年男が手を差し伸べようとする前に、お嬢様の体が宙に浮く。

そして、次の瞬間、お嬢様の豪快なローリングソバットが中年男に炸裂した。

お嬢様の得意技が炸裂してしまった。

それにしても、今日はロングスカートでよかった。

ミニスカートだったら、きっと大変なことになっていたはずだ。

中年男はお嬢様の蹴りをモロに食らって、後方に吹っ飛んで倒れた。


「オイ、貴様、何しやが・・・」

中年男は起き上がると、お嬢様に掴みかかろうとする。

しかし、もちろんそんな愚行を許す私ではない。

再び中年男の前に立ちはだかり、鋭い目つきに睨み付けてやる。

「貴様ら、ワシにこんなことして、タダで済むと思うなよ。」

中年男がそう言うと、お嬢様はため息をつく。

「お前ら、宇宙開発事業部のどこの部署の者か知らんが、しっかり顔は記録させてもらったぞ。

貴様らの映像を元に、部署を割り出してやる。」

中年男はそう言うと、私達を睨み付ける。

この豚男、どうやら眼鏡についている映像記録装置で、我々の映像を記録していたらしい。

まあ、こんな豚男など全く怖くないが、大ごとになっても困るし、映像だけは処分させてもらうか。

そう思って中年男に近づこうとしたその時だった。


「彼は、どこの事業部にも所属してないよ。だってSALIDだし・・・」


あっ、マズい。

お嬢様がそう言うと、中年男の表情がみるみる青ざめていく。

「さ、さ、SALIDだって!?」

中年男からさっきまでの威勢は完全に消え去っていた。

SALIDは、ディルスターの軍事部隊の中でも最高のエリート戦士が集まった部隊。

そんなSALIDの人間が警護についているということは、この女性も只者ではない。

きっと、中年男は、目の前の女性がサリファお嬢様であることに気づいてしまったのだろう。


「ゲッ、も、もしかして・・・あなたは、サ・・・ぐほっ」

間一髪だった。

中年男がお嬢様の名前を叫ぶ前に、腹パンで黙らせることができた。


「オイ、貴様、何をやっている?」

とそこに、中年男が呼んだ警察官がやってくる。

また、面倒なことになったなこれは・・・


「お前たちを拘束する。」

警察官はどうやら、私とお嬢様に向かってパラライズ・シグナルを送っているようだ。

なんて恐れを知らない連中だ。

もちろん、我々に対して、そのようなものが効くわけがない。

ディルスター・コアの人間に対してパラライズ・シグナルを打てるのは、同じコアの人間だけだ。

それに、様々な特殊任務を行う我々SALIDも、コア以外からの制御は受け付けない。

一般の警察ごときが、抑えられるわけがないのだ。

だが、それでもだんだん腹が立ってくる。

私にはともかく、お嬢様に向かってパラライズ・シグナルを送ろうとしたこと自体が許せない。

「カルティニ、落ち着いて。」

私の怒りを察したのか、お嬢様がまた私の手を掴む。


お嬢様の手は、私にとっては魔法のようなものだ。

どんな怒りも悲しみも、この手に包まれたら全部消えてなくなってしまう。

やはり、私はこの人にはかなわない。

お嬢様に手を掴まれると、そんな気分にさせられる。


警察は、私達にパラライズ・シグナルが全く効かないのを見て、慌てて身元照会を行ない始める。

普通、そっちを先に行なうだろうと思いつつも、この人が集まっている場所で、我々の身分がバレるのはマズい。

さっきから既に十分目立ってしまっているし、こういったトラブルをネタにサリファ様の足を引っ張る連中が出てくる可能性もある。

最悪、警官達を全員黙らせるしかない。

私は、警官達が身元照会を行っている間に、いつでも叩きのめせるように、動きやすい体勢に構える。

だが、この警官達は賢明だった。

目の前にいるのがサリファお嬢様であることがわかると、一瞬驚いた表情を浮かべるが、何事もなかったかのように倒れている中年男性とそのガードを拘束する。

そして、パラライズ・シグナルで拘束していた男を解放すると、そのまま何事もなかったかのように帰っていった。

恐らく、大事にしてはマズいと直感的に判断したのだろう。

賢明な判断である。


「あの、サリファ様・・・ありがとうございました。」

男はパラライズ・シグナルから解放されると、お嬢様に頭を下げて、感謝していた。

この野郎、こんな大勢の前で、サリファ様の名前を出しやがって。

恩を仇で返す気なのか?

幸い、男の声が小さかったおかげで、どうやら周りには気づかれていないようだ。

ちなみに、お嬢様はと言うと、一切、男と目を合わせることはなかった。

「さて、誰かと人違いしているんじゃないでしょうか?

まあ、あなたの解雇は直に取り消しになるとは思いますよ。」

お嬢様がそう言うと、男は涙を流しながら、お嬢様に頭を下げる。

「ありがとうございます。ありがとうございます。」

その場でお嬢様に向かって泣き崩れる男の姿は、嫌でも周囲の注目を集める。

「行こう、カルティニ。」

それを察したのか、突然、お嬢様は慌ててその場から走って逃げだす。

「お待ちくださいお嬢様。」

私も慌ててお嬢様の後を追いかける。

お嬢様は足が速いので、こういう時は、結構注意しないといけない。

人ごみの中を全速力で走り抜けられて、見失うことにでもなったら一大事である。

私はお嬢様に離されないように、人にぶつかりながら懸命に追いかける。

ぶつかった連中が背後で、「てめえ、気をつけろ。」といった声が聞こえてくるが、今はそんなことを気にしていられる状況ではない。

それにしても、こういう時は、この大きな体は不便に感じる。


しばらく走り続けて、人気の離れたところまで行くと、ようやくお嬢様は走るのをやめ、こちらに振り返る。

「やったあ、大勝利!!」

そして、お嬢様はそう言うと、私に向かって笑顔でピースサインを出す。

こういうところは、いつまでも子供の頃のままだ。

「やっぱり、カルティニがSALIDだってわかると、みんな逃げていくね。」

そして、さっきの出来事を楽しそうに話してくる。

やっぱり、お嬢様の笑顔は素敵だ。

この人には、いつも笑顔でいてほしいと思う。

だが、きちんと言うべきことは言っておかないと。

「お嬢様、困ります。安易にSALIDの名前を出されると。」

「警護上の問題が発生するから、素性を安易にバラされると困るんだったっけ?」

「そうです。何度もお話ししたでしょう。」

「でも、そんなに強いんだったら、何の問題もないと思うけどなあ。

それに、どんなにピンチになっても、私のことは必ず守ってくれるんでしょ?」

お嬢様はそう言うと、少し意地悪な笑顔でこちらを見る。

ならば・・・


「もちろん、この命に替えましても。」

私はそう言うと、お嬢様の前に膝まづく。

この私の行動は周りの注目を浴びることとなった。

「ちょ、ちょっと、カルティニ、そういうことはここではやめて。」

さすがにお嬢様も恥ずかしくなったようだ。

「これは先程ばらされたお返しです。」

私がそう言うと、お嬢様は思わず吹き出す。

「カルティニ、そういうことは真顔で言うもんじゃないよ。」

私はどうも笑顔というのが苦手なようで、ジョークをする時も真顔のままらしい。

それが、お嬢様にとって、かなり面白いらしい。

よほどツボにはまったのか、それからしばらくお嬢様の笑いが収まることはなかった。

「あと、彼らは私がSALIDだから驚いたのではありません。

SALIDの私が警護していることで、あなたがサリファ様だとわかったからですよ。」

私がそう言うと、お嬢様は少しつまらなそうな表情を浮かべた。


それからしばらくは、お嬢様はおとなしく観光を楽しんでくれた。

途中、先程と似たような光景を何箇所かで見かけたが、不思議なことにお嬢様はほとんど反応することはなかった。

また、さっきみたいに暴れるのではないかと、こちらは冷や冷やしていたのだが・・・

だが、心なしか、先程からお嬢様は元気がないような気がした。

おそらく、気にはされているのだろう。

でも、手を出さないのは、もしかしたら私に面倒をかけるのを気にしてくれたのかもしれない。


「そろそろ時間みたいね。」

お嬢様が私に向かってそう言う。

時計を見ると、いつの間にかもう5時を過ぎていた。

どうやら、無事に観光を終えることができたようである。

私と2人だけで観光したいと言い出した時には、本当にどうしようかと思ったが、何とかお嬢様の安全を守ることができた。

先程、もう一方のダミー部隊から連絡があったが、どうやらあちらも何事もなかったようだ。

お嬢様はクルサード家のご令嬢のため、今まで何度も命を狙われてきた。

だから、2人きりで観光なんてとんでもないと思ったのだが、お嬢様の言うように、日本は他の国と比べてまだ治安がいい方だったみたいだ。

以前、お嬢様が中東のある国に行った時には、船を降りたところで、いきなりテロリストのマシンガン攻撃を受けたこともある。

影武者を乗せた飛行機が突然爆発したこともあった。

それ以来、お嬢様は移動手段に船を使うようになった。


「では、そろそろ大阪に行きますか。」

お嬢様が考え込んでいる私の顔を覗き込む。

イカン、今は、お嬢様の警護に集中しないといけない。

何せ、世界で一番危険なお嬢様の護衛が、今は私一人しかいないのだから。

「お嬢様、ダミー部隊の方は、そろそろ大阪の方に向かうと連絡がありました。

我々も急いで合流しましょう。」

私はそう言うと、お嬢様と一緒に、車の止めてあるところに向かう。

だが、しばらくして、突然お嬢様は立ち止まった。

「どうされたのですか、お嬢様?」

「ねえ、カルティニ、この日本を・・・今の世界をどう思う?」

さっきまでの笑顔とうって変わって、真剣な質問で私の方を見つめてくる。

やはり、先程の光景をずっと気にされているのだろうか?

「いきなりどうされたのですか?」

私がそう言うと、お嬢様は少し苦笑する。

そして、近くのビルを指さす。

「ねえ、ちょっとだけ、あのビルの屋上に行ってみたい。」

お嬢様はそう言うと、私の方をまっすぐに見つめる。

それは、さっきまでのいたずら少女の顔ではなかった。

だが、ディルスターを統率するクルサード家長女としての顔でもなかった。

それは、今までに見たことのないお嬢様の顔だった。

見た目は笑みを浮かべているが、心からの笑みでないこともわかる。


何か嫌な予感がする。

なぜか、そんな気がした。

いつものいたずら少女でもなければ、クルサード家長女の顔でもない。

では、この目の前にいる女性は、一体何を考えているのだろうか?

お嬢様にはもう何年も付き従っているのに、何を考えておられるのか、全く読めないのだ。

心なしか、少し思いつめているような気がしなくもない。

こんなお嬢様の顔を見るのは初めてだった。

(もしかして、サリファ様・・・屋上から・・・)

「心配しなくても、屋上から飛び降りたりしないよ。」

私の心を読んでいたかのように、サリファ様が私に声をかけてくる。

「し、しかし、お嬢様、ダミー部隊はもう撤収しますし、早く合流した方が・・・」

「お願い、ちょっとだけでいいから。」

しかし、私に頼み込むお嬢様の顔を見て、私は断れなくなった。

「わかりました。ですが、30分だけですよ。」

私がそう言うと、お嬢様は満面の笑みを見せる。

ああ、いつものお嬢様の笑顔だ。

そのお嬢様の笑顔を見て、私はようやく少し安心できた。


屋上には誰もおらず、屋上には私とお嬢様の2人きりだった。

まあ、このビルは高いものの、商業用ビルで屋上に入ることも禁止されていたようなので、誰もいないのは当然ではあるが。

私が管理会社にお願いして、何とか入れてもらったのだ。

カギを渡さなければ、扉をぶち破ると話すと、すぐにカギを渡してくれた。

実に話の分かる管理会社である。


ビルの屋上からは、周囲の景色を一望することができた。

ビルからは特権階級が多く住む繁華街と、そこから少し離れたスラム街を一望することができた。

そんな景色を、沈みかけの夕日が赤々と照らしていた。

お嬢様は屋上からの光景をしばらく眺めていた。


「ねえ、カルティニ?」

突然、お嬢様が私に声をかけてくる。

「はい、お嬢様。」

私は、とっさに片膝をついての正式な敬礼で応えた。

自分を見るお嬢様の表情から、いつもと違うただならない雰囲気を感じたからだ。

これは、さっきの見たことないお嬢様だ。

一体、私に何を命令するつもりだろうか?

少し不安になっていた私に、お嬢様は意外な質問をしてきた。


「この景色を美しいと思う?」


お嬢様はそう言うと、夕暮れの屋上の景色を背景に、両手を上に広げて私に尋ねた。

私は、お嬢様の聞きたいことが言葉通りの意味ではないことをすぐに察した。

お嬢様の聞きたかったことはおそらく、


ディルスターに席巻されたこの世界をどう思うか?


だったのだろう。

お嬢様は、今のディルスターのあり方について、誰よりも異議を唱えていた一人だった。

父アルシアにも散々抗議し続けたため、アルシアからも嫌われるようになっていたくらいだった。

特に、全世界に放送されたテレビでの公開討論以降、二人の仲は決定的に悪化した。

もちろん、お嬢様だって、好きで父君と不仲でいたいわけではないだろう。

いや、むしろ父君が大好きだからこそ、今のディルスターの方針を変えてほしいと願っているのだろう。

だが、アルシア公はそうは思わなかったようだ。

おそらく、あのテレビ討論以降、急激に増加した暗殺部隊の半数以上が、アルシア公による刺客だろう。

初めて暗殺部隊の黒幕が判明した時の衝撃は、今でも忘れられない。

私にはどうすることもできない相手であった。

今の私にできることは、せめてお嬢様を暗殺部隊から守ることだけだった。


お嬢様の質問に、私は、何て答えればいいのだろうか?

お嬢様の言いたいことは私にもわかるし、私もお嬢様の考えに賛成である。

だが、それを表明した瞬間、私はディルスターを敵に回すことになる。

このまま何も答えずに、流すことは許されそうになかった。

さっきから、お嬢様はずっと私の方を見つめていたからだ。


私は、お嬢様を守る忠実な部下であるが、同時にディルスターの一員でもある。

下手な答えをして、ディルスターから追放される羽目になったら、お嬢様をお守りできなくなってしまう。

俺の発言や行動は、常にDICTを通じて監視されている可能性があることを忘れてはいけない。


「大丈夫、ここには私とカルティニしかいないから。

それに、カルティニがどういう答えを出しても、私が全力であなたを守る。」

自分が考えていたことを、まるで見透かしてたかのようなタイミングでのお嬢様の言葉に、私はドキッとなる。

やはり、この人にはかなわない。

そう思った。

そして、何を答えればいいか、ようやく答えが思いついた。


「私は・・・どのようなことがあっても、サリファ様のお傍で、サリファ様を護衛し続けるだけです。」


お嬢様の質問の返答としては、いささか変な答えであったが、これが今の私の中で唯一ゆるぎない感情だった。


「おー、期待してるよ。」


お嬢様は私の回答に満足したのか、笑顔でそう答えると、私に近づいてきて、私の胸板を軽く手で叩いた。

そのお嬢様の笑顔を見て、私も心からホッとできた。

今のサリファ様は、私の知っているサリファ様だ。

先程のは、低俗な者どもの狼藉を見て、気分を悪くされていただけだったのだろう。


「じゃあ、そろそろ大阪に向かおう。」


そう言ってお嬢様は笑顔で私に手を差し出す。

「わかりました。お嬢様は私の命に替えましても、安全に大阪までお送りします。」

私はお嬢様の手を掴むと、ゆっくりと立ち上がった。

サリファ様はいつものサリファ様に戻られた。

もう大丈夫だ。

私はお嬢様と一緒にビルを降りると、本日の宿泊先である大阪へと向かった。

今回の話はどうだったでしょうか?

次回から、また有騎始点に話が戻る予定です。

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