7.サリファとレイヴァン
サリファが気がつくと、狭い部屋のベッドに寝ていた。
自分がどうしてここにいるのか?
出雲のアンティルのアジトにいた自分に、一体何が起こったのか?
サリファがそれを理解するまでにしばらく時間がかかった。
「ここは・・・どこ?私は一体・・・」
とその時、部屋のドアがガチャリと開くと、中に優男が入ってきた。
その男の顔を見た瞬間、サリファは自分の身に起こったことを理解した。
「そっか・・・そういうことか。」
そして、状況を理解すると同時に、出雲にいたアンティルの人達のことを思い出す。
(みんな、無事だろうか?)
サリファの表情が険しくなる。
「そんな怖い顔をされたら、せっかくの美しい顔が台無しですよ姉上。」
「レイヴァン・・・ここは一体どこ?カルティニやみんなは?」
「ああ、ここは空母イスファールの艦内ですよ。
姉上にとっては狭苦しい部屋でしょうが、随分とお疲れのようで、ぐっすりと眠られていたのでね。」
「あなたの部下によって眠らされたの間違いでしょう。
そんなことより、私の仲間は無事なの?」
サリファはレイヴァンを睨み付ける。
だが、レイヴァンはそんなサリファの表情にも全く動じず、あくまで笑顔で応える。
「仲間って、あのアンティルとかいう連中のことですか?
姉上にふさわしい仲間とは思えませんが・・・」
「みんなをどうしたの?」
「おお、そんなに怒らないでほしいな。
残念ながら、ジルクの部隊はカルティニによって全滅させられたようです。」
「じゃあ、みんな無事なのね?」
「ええ・・・残念ながら・・・」
レイヴァンがそう言うと、サリファはホッと胸をなで下ろす。
「あんな連中のことがそれほど心配ですか?
私にはさっぱりわかりません。
ところで姉上。」
レイヴァンはそう言うと、ある物を取り出す。
それは小さな七色の小箱だった。
そして、それを見た瞬間、サリファの表情が変わる。
「この七色の小箱について、知っていることを話してほしい。」
「その小箱が・・・一体どうしたって言うの?」
サリファは動揺を抑えつつ、レイヴァンに話す。
だが、そんなサリファの様子を見て、レイヴァンは笑い出す。
「やれやれ、姉上は本当に嘘をつくのが下手な人だ。
まあ、そこが姉上のいいところなんだけどね。
でも、今はさっさと話を進めたいので、私が全部話しますがね。
姉上が彼らと接触した最大の理由は、この七色の小箱を手に入れるためでしょう?」
レイヴァンがそう言うと、サリファの動揺が激しくなる。
そのサリファの表情を見て、レイヴァンは再び笑みを浮かべる。
「本当に姉上は隠し事が下手な方だ。
でもね、私はそんな姉上だからこそ、私は心から愛しているのですよ。」
「また・・・始まった・・・」
サリファは深いため息をつく。
「どうして私の愛を受け入れてくれないのですか姉上?」
「私とあなたは姉弟なんだし、結婚なんかできるわけないでしょう。」
サリファはウンザリした表情を浮かべる。
サリファがレイヴァンに合いたくない最大の理由はこれだった。
レイヴァンは会うたびに、自分に求婚を迫ってくるからだ。
「姉と弟と言っても、私は養子で、あなたとは全く血のつながりがない。
結婚しても何の問題もないと思いますが・・・」
「私にとっては、あなたは家族であり弟です。
血がつながっているかどうかは関係ありません。」
サリファがそう言うと、レイヴァンはため息をつく。
「私が養子になったのは、あなたと一緒にいることができると思ったからなんですがね。
今思えば、その考えは間違えだったのかもしれない。
まさか、姉上にここまで抵抗されるとは思わなかったなあ。
いくら知識はあったと言っても、当時の私は所詮はただの子供。
そこまでの考えには至らなかったのも仕方がないか。
でも、養子にならなかったら、こうやって姉上と話ができたかどうかすら怪しいし・・・」
「そんなことより、その箱、一体どこで手に入れたの?」
サリファがレイヴァンに尋ねると、レイヴァンはニヤリと笑う。
「なんだ、やっぱりこの箱のことが気になるようですね。」
「・・・・・・」
「どうしても素直に話してくれませんか。
まあ、姉上のしようとしていることは、おおよそ見当がついていますがね。」
レイヴァンがそう言うと、サリファは驚いた表情を浮かべる。
とその時、ノック音が聞こえる。
「ジルクか?何だ?」
レイヴァンが尋ねると、扉の向こうから声が聞こえてくる。
「衛星の監視映像によると、どうやら出雲からこちらにバイクが一台すごいスピードで向かってくるようです。」
「ほう、カルティニだな。」
レイヴァンがそう言うと、ジルクは「はい」と答える。
「カルティニがこっちに向かってきているの?」
それを聞いていたサリファは嬉しさと不安が入り混じった複雑な表情を浮かべる。
「それと、大阪の方の動きも慌ただしくなってきているようです。
潜入させている工作員によると、先程、大阪にいる全SALIDに対して出撃命令が出たそうです。」
「どうやら父上は、よほど私と姉上を会わせたくなかったようだ。」
レイヴァンはそう言うとうっすらと笑みを浮かべる。
「いかがいたしましょうか?」
「例の準備だけしておいてくれ。」
「わかりました。では。」
ジルクはそう言うと、部屋の前から去っていった。
「カルティニがこっちに向かってきているって本当なの?」
サリファがレイヴァンに尋ねる。
「そんなに嬉しいですか、姉上?」
「・・・・・・」
「本当に姉上は隠し事が下手だ。
カルティニは、アンティルのバイクに乗って、単身でこちらに向かってきているそうです。
あと、一時間もすれば、ここに到着するでしょう。」
「カルティニ・・・どうしてそんな無茶なことを・・・」
「無茶なこと?
カルティニは姉上を守る守護者だ。
姉上がさらわれたら、追いかけてくるのは当然でしょう。」
「・・・・・・」
「本当なら、アンティルのアジトに殲滅部隊を送り込むつもりでしたが、少し状況が変わってしまいました。」
「どういうこと?」
「父上がSALIDに出撃命令を出したようです。
恐らく、手段を選んでいる余裕がなくなったのでしょう。
というわけで、私達もアンティルに構っている余裕がなくなったというわけです。」
レイヴァンがそう言うと、サリファはアンティルのみんなの安全がとりあえず確保できそうで少しだけホッとした表情を見せる。
しかし、すぐに元の表情に戻ると、レイヴァンに尋ねる。
「父上は、どうしてそこまでして、私とレイヴァンを会わせたくなかったのだろう?」
「単純に、私が姉上の味方になることを恐れているだけでしょう。
私の姉上に対する気持ちにも、父は気づいているようだし。
と同時に、父上にとって厄介な存在である私と姉上が、今は一か所にいるので、まとめて始末するチャンスでもあるわけですからね。
しかし、今までの動きを見る限り、父上は恐らく姉上が何をしようとしているのかまではわかっていないようです。」
「どういうこと?」
「もし、私が父上の立場だとしたら、姉上のことをすぐに殺そうとはしません。
なぜなら、ディルスターにとって重要なアイテムを回収するチャンスだし。」
レイヴァンはそう言うと、再び七色の小箱をサリファに見せる。
それを見て、再びサリファの表情が険しくなる。
「この小箱ですがね、色々と調べさせたのですが、この艦の設備では何もわからないのですよ。
何の物質でできているかもわからないし、どこから開けるのかもわからない。
幸い、放射線とか有害物質とかは出してないようなので、こうやって手で持つことはできますがね。
まあ、中に入っているものは大体想像がつきますがね。」
レイヴァンがそう言うと、サリファは再び驚いた表情を浮かべる。
「レイヴァン・・・あなたは一体どこまで・・・」
「どこまで知っているのか・・・ですか?」
「ええ・・・」
「姉上が弟のカインに頼んで、極秘通信を日本に送っていることは知っていました。
姉上が何かを頼むとしたら、カインかカルティニだと思ってましたからね。
事前にカインの部屋に密かに細工をしておいたんですよ。」
「!?」
「カルティニは用心深いので、近寄ることすら容易ではなかったが、カインは頭はいいけど所詮はまだ子供だ。
私が部屋に来た時も、何の警戒もされずに済んだ。」
「あなたはカインを・・・」
「その時の会話から、姉上がアンティルなる組織と接触しようとしていることがわかった。
目的は七色の小箱を姉上に渡すこと。
最初は何かの暗号コードと思ったんですけどね。
まさか、本当に七色の小箱とは思いませんでした。
それ以降、ジルクの部下にディルスターに接触してくるアンノウンをチェックするように命じました。
それからしばらくして、明智秀秋という男がバスパグスフ派のメンバーと接触していることを掴んだ。
その通信内容から、おおよその計画を推測することができた。」
「地下駐車場で私を誘拐しようとした人は、レイヴァン、あなたの使者だったのね。」
「私ならば、姉上の力になれると思ったからね。
通信でアンティルのアジトの位置はおおよそ見当がついていたので、呉で姉上と合流して、アンティルのアジトに乗り込んだ方が事が早く済む。
そうすれば、姉上が危険な目に合うこともない。
そう思ったのですが、やっぱりカルティニに邪魔されてしまいました。
まあ、そうなるだろうとは思っていたので、日本に着いてからの姉上のDICTをずっと監視させてもらいましたが。」
「・・・・・・」
「それにしても、姉上も無茶なことをするものです。
私は姉上はもっと頭がよくて、どんな時でも沈着冷静な人だと思っていました。
しかし、姉上は自らの行動で、父上に命を狙われるわ、アンノウンにされるわ、散々な目に合ったわけです。」
「私は自分のしたことに後悔していない。」
「姉上なら、きっとそう言うと思ってました。
だから、私は思うのです。
沈着冷静な姉上をここまで動かす事態って一体何だろうとね。」
レイヴァンはそう言うと、壁に備え付けてあるディスプレイの電源を入れる。
そして、ある映像を映し出す。
その映像を見た瞬間、サリファは驚いた表情を浮かべる。
「これは・・・まさか・・・」
「そう、これは衛星から撮影されたリングウェル研究所の映像です。
あの事件が発生した当日のね。」
「私はどうやっても手に入れられなかったのに・・・」
「そりゃあ、父上が完全に情報封鎖してましたからね。
一般人、いや、ディルスターでも一部の人間を除けば、リングウェル研究所は存在すら知られていない。
それほど重要な秘密機関で起こった事件を、外部に流出させるわけにはいかないですからね。
この事件で、母上は失踪した。
公式上では母上は交通事故で亡くなったことにされていますけどね。」
レイヴァンがそう言うと、サリファの方を見る。
「姉上はリングウェル研究所で何が起こったのかをずっと調べていた。
この私にまで頼んで、何とか情報を集めようとした。」
「もしかして、あれから何かわかったの?」
「いえ、残念ながら、事件の詳細に関しては、私もまだわかっていません。」
レイヴァンがそう答えると、サリファは落胆した表情を浮かべる。
「しかし、いくつかわかったことはあります。
そのうちの一つが、この衛星写真です。
私も姉上も、ずっとリングウェル研究所の人間が消息したと思い込んでました。
でも、そうじゃなかった。」
「えっ、どういうこと?」
サリファがそう言うと、レイヴァンは先程の衛星からの映像を再び画面に表示する。
「これは、当日の朝の様子ですが、特に変わったところはありません。
それからしばらくして、なぜか映像が途切れます。
そして、その後、再び映し出された映像にはもうリングウェル研究所はなくなっています。」
レイヴァンの映し出した映像を見て、サリファは言葉を失う。
「つまり、リングウェル研究所の人間が消失したというのは事実だが、消失したのは人間だけではない。
正確には、リングウェル研究所自体が消滅したということです。」
レイヴァンは繰り返し当日の映像を繰り返し流し続ける。
それを見て、サリファの表情は真っ青になっていた。
レイヴァンは話を続けた。
「この映像は、ゼウスネットワークの衛星から映された監視映像ですが、人間が加工した形跡は全くありません。
色々専門家に調べさせた結果なので、間違いありません。
だとしたら、地球の遥か上空にある監視衛星の映像が、なぜ突然乱れたのでしょうか?
優秀な科学者から色々なご高説を聞きたいところですが、生憎父の監視が厳しくて、まだ何の仮説もない状況です。
何せ、この映像を手に入れるだけで、何人死んだかわかりません。」
「でも、あなたは何か思いついてるんじゃないの?」
サリファが尋ねるが、レイヴァンは首を横に振る。
「残念ですが、私が思いつく発想は、非常にSFチックな発想しかありません。
まあ、私の近くにいる何人かの研究者も、私の意見とそう大して変わりませんがね。」
「SFチックでもいいから、教えてほしい。」
サリファがそう言うと、レイヴァンは少し驚いた表情を浮かべる。
「姉上がそこまで食いついてくるとは思いませんでした。
いいですよ、それほど面白い話ではありませんが・・・」
レイヴァンはコーヒーを入れると、サリファに差し出す。
サリファはマグカップを受け取ると、コーヒーに口をつける。
「リングウェル研究所は別の時空に消え去った・・・というのが私の仮説です。」
レイヴァンの話を聞いて、サリファはむせそうになる。
「だから、つまらない話になると言ったでしょう。」
「確かにSFチックな話だね。」
「でも・・・否定はしないんですね。」
レイヴァンがそう言うと、サリファはマグカップをテーブルに置く。
「私にこの現象の説明ができないのに、他人の仮説を否定できるわけないでしょう。
否定できるだけの知識を持ち合わせてるんだったら、その知識を組み立てて、とっくに自分なりの仮説を立ててるよ。」
「実に姉上らしい考え方だ。
あくまで論理的に物事を考えようとする。
例え、一見突拍子もないことであっても、自分に理解が及ばないことであってもね。
決して、感情論だけで否定したりしない。
だから、姉上には話を聞いてもらえると思いました。」
「でも、本当に空間を切り取ったように、きれいに消えているよねこれ。
レイヴァンの言ってること、案外当たってるんじゃない。」
サリファは険しい表情のままそう言う。
そして、レイヴァンの表情も険しくなる。
「もし当たっていたとしたら、とんでもない話だと思いませんか?
あの研究所で一体何の実験が行われていたのか?
DICTに関する研究以外にも、様々な研究が行なわれていたそうですが、その詳細はディルスター内部でもほとんど知られていません。
クルサード家の人間である私や姉上ですら知らない何かとんでもない実験が行なわれていた。
そのうちの一つが、時空に関する実験だったと考えれば納得がいきます。
そんなものを研究して、一体何をしたかったのかわかりませんがね。」
「・・・・・・」
サリファの表情が再び強張る。
父は一体何を企んでいたのだろうか?
その底知れない父の企みに恐ろしさを感じゾッとなる。
「ちなみに、リングウェル研究所の所員で、2人の生存者がいることがわかっています。」
レイヴァンがそう言うと、サリファは驚いた表情でレイヴァンの方を見る。
「一人は、ルノワ・フェイという男。
DICT開発の中心メンバーですが、当日はたまたま出張でカリフォルニアの研究所にいたそうで、事件に巻き込まれずに済んだそうです。
しかし、事件が発生してから1か月後に、彼は謎の失踪をとげます。
厳密に言うと、彼だけではなく、彼と接触のあったカリフォルニアの研究所員も何人か失踪しています。
彼らがどこに行ったのか、未だに生死すら判明していません。」
「・・・・・・」
「そして、もう一人の人物が、園山零という日本人。
彼もリングウェル研究所の所員だったんですね。
彼は事件の前日から母リノアの命令で、日本に行っていたようです。」
「まさか、園山氏がリングウェル研究所の所員だったことまで知っていたとはね。」
「そして、彼も事件発生後に行方不明になった。
しかし、まさかアンティルなんて組織のリーダーになっていたとはね。
もしかしたら、ルノワ・フェイの方も、案外アメリカのどこかでレジスタンス活動でもやってるのかもしれませんね。」
「レイヴァン、園山氏は今どこにいるのですか?」
サリファの脳裏に嫌な予感が走る。
七色の小箱を持っている以上、園山零はレイヴァンに捕まっている可能性が高い。
もしかしたら、色々と拷問されているかもしれない。
「彼はリングウェル研究所の貴重な生き残りだ。
心配しなくても、丁重に扱っていますよ。」
レイヴァンがそう言うと、サリファは少しだけ安堵した表情を見せる。
「アンティルのリーダーである園山零が、リングウェル研究所の生き残りだとわかった時点で、姉上が日本に向かった目的は容易に想像できました。
日本で開催することが決まったアマテラス完成式典は、そのために姉上が計画したものだったのでしょう。
もっとも父上が式典に参加することは誤算だったようですが・・・」
レイヴァンの話を聞いて、サリファの背筋がぞっとなる。
自分がひそかに立てたはずの計画。
しかし、全てレイヴァンには全てお見通しだったのだ。
そして、知っていながら、レイヴァンは何食わぬ顔をして、今までずっと自分に接してきていたのだ。
「姉上が無理をしてまで、アンティルと接触した理由は二つ。
一つは母上が預けたという七色の小箱を受け取ること。
そして、もう一つはリングウェル研究所で何が起こったのかを直接聞くこと。
そうですよね?」
レイヴァンの問いかけに、サリファは何も答えられなかった。
下手に何かを答えたら、レイヴァンに全てが暴かれてしまう。
そう考えると、何も話せなくなってしまったのだ。
「嫌だなあ、そんなに怖い目で見ないでほしいな。」
レイヴァンはそう言って笑顔を見せるが、サリファの表情はこわばったままだ。
「やれやれ、まさか姉上にここまで警戒されてしまうとはね。」
レイヴァンはそう言うと、サリファの目の前の机の上に七色の小箱を置く。
「これは姉上に差し上げます。
恐らく、この七色の小箱も、リングウェル研究所で発明されたものなのでしょう。
だとしたら、私達が持っていても、恐らく何の意味もないでしょう。」
サリファは恐る恐る七色の小箱に手を伸ばす。
そして、七色の小箱を手にすると、何か不審なものがないかをすぐにチェックする。
「私が何か仕掛けているとでも思っているのですか?」
だが、レイヴァンがそう言うと、サリファの動きが止まる。
「言ったはずですよ。私は姉上の味方だと。」
レイヴァンはそう言うと、笑顔を見せる。
だが、その笑みを見て、サリファの表情は険しくなる。
サリファは確信する。
レイヴァンはとても危険だ。
ちょっとでも隙を見せたら、恐らくレイヴァンに全て暴かれてしまうだろう。
レイヴァンは私の味方だと言うが、それはレイヴァンが私に好意を寄せているからであって、私が彼の好意を突っぱねても味方でいてくれる保証などない。
私は、レイヴァンの行為を受け入れることはできない。
私にとって、レイヴァンは弟だ。
血がつながっているとかいないとか関係ない。
レイヴァンが養子になってから、ずっと私とレイヴァンは姉と弟として一緒に暮らしてきた。
私にとって、レイヴァンは弟であり、愛すべき家族の一員である。
でも、それは家族愛であって、恋愛対象ではないのだ。
私がレイヴァンを完全に拒否した時、レイヴァンはどういう行動に出るだろうか?
父の味方になって、私を殺しにやってくるだろうか?
それとも、私への関心は失せて、私に全く関わらないでいてくれるだろうか?
それとも、なお私につきまとい、求愛し続けてくるだろうか?
その時、ふとサリファはレイヴァンが昔した空母の名称の由来話を思い出す。
「この空母の名前はイスファール(ISFAAL)。姉上の名前サリファ(Salifa)の文字を入れ替えて作った名前ですよ。」
サリファの背筋に寒いものが走った。




