表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/26

11.ワイバーン

「さっきのヘリが、こっちに近づいてくる。」

 ワイバーンをモニターしていたカルティニの声で、さっきまでのなごみムードが一変する。

「ワイバーンの武装は今使えないはずだ。それでもあえて近づいてくるとしたら、まさか・・・」

 カルティニは、再び端末で何やら操作を始める。

 しかし、しばらくすると、アクセス不能の警告メッセージが表示される。

「これは・・・まさか・・・」

 カルティニは再び認証を試みるが、やはり認証処理に失敗する。

「そんな・・・サリファ様のDICTが・・・まさか・・・」

 カルティニは目の前の端末の認証エラーを見て、一瞬言葉を失う。

 だが、すぐに気を取り直すと、慌てて端末でゼウスネットワークにアクセスする。

 幸いにもカルティニのDICTアカウントはまだ生きていた。

 カルティニは、自分のDICTでゼウスネットワークにアクセスしてパーソナルデータの検索を始める。

 ほぼ全世界の国民の情報が登録されているゼウスネットワーク。

 しかし、いくら検索しても、サリファの名前は見当たらなかった。

「そ、そんな・・・」

 カルティニは絶句する。

 つまり、これはディルスターがサリファのDICTアカウントを削除したと言うことになる。

 アカウントの権限剥奪ではない。

 DICTアカウントの削除であった。

 しかし、ゼウス・ネットワークが支配するこの世界において、DICTアカウントの抹消は重大な意味を持っていた。

「どうやら、お父様は私を死んだものとして扱ったようね。」

 サリファは自分のアカウントが削除されたことを知って、ため息を一つつく。

 DICTアカウントは、全ての国民に与えられたアカウント

 状況に応じて、権限の付与や一部機能停止と言ったことは行われるが、DICTアカウント自体の抹消が行なわれることはない。

 DICTアカウントが抹消されるのは、死んだ時だけである。

 アルシアはサリファのDICTアカウントを抹消することで、サリファを抹殺する意思を示したことになる。

 事実を知って、もっとショックを受けるかと思いきや、サリファは意外にも冷静さを保っていた。

 逆に関係ないはずの有騎や奈央の方が驚いていた。

 そして、それ以上にカルティニの方がはるかに動揺していた。


「サリファ様のDICTアカウント抹消って、これが・・・これがディルスターの意志なのか!!?」

 カルティニは怒りに震えていた。

「どうやら、これで私もアンノウンの仲間入りのようだね。まあ、覚悟はしてたけどね。」

 サリファはそう言うと、有騎達の方を見てニコッと微笑む。

 だが、有騎はサリファの手が少し震えていることに気づいた。

 表情には出さずとも、内心は相当動揺しているに違いない。

 だから、有騎はサリファの力になりたいと思った。

「大丈夫、サリファ様には俺達がついている。」

 有騎はサリファの手を握って、力強く答えた。

 その手に奈央が手を重ねる。

 奈央も有騎と同じ気持ちであることは、表情を見ればわかった。

「ありがとうユウキ、ナオ。私は大丈夫だよ。」

 サリファは気丈に立ち上がると、怒りに震えるカルティニの方へと向かう。

「カルティニ、もしかしてあなたのDICTも・・・」

「いえ・・・私のDICTアカウントはまだ残っています。

 何か意図的なものを感じますが・・・」

「向こうの意図がどうであれ、あなたのDICTアカウントが残っていてよかった。」

「でも、これではお嬢様が・・・」

「やっぱり、お父様はあなたの力を欲している。

 だから、今ならまだ、カルティニだけでもディルスターに戻ることが―――」

「いいえ、それだけはありえません。」

 サリファが話し終わる前に、カルティニは力強く否定する。

「でも、このままだと、私のせいでカルティニまで・・・」

「言ったはずです。私はお嬢様をどこまでも守り通すと。

 それ以外に、私の任務など存在しません。」

 カルティニは、サリファをまっすぐ見つめて、力強くそう話す。

 そのカルティニの真面目な表情を見て、サリファはクスッと笑う。

「本当にもう、カルティニは大馬鹿だね。」

「いえ、お嬢様に比べれば私などまだまだ・・・」

「つまり、私が大馬鹿者だって言いたいわけ?」

「お嬢様と私、2人そろって最強の大馬鹿者ですよ。」

 カルティニがそう言うと、サリファはクスクス笑いだす。

 それにつられてカルティニも笑い出す。


「ワイバーンがさらに接近してきました。」

 外を監視していた仲間の一人が大声で叫ぶ。

「じゃあ、大馬鹿者のカルティニ、派手にやっちゃって。」

 サリファはそう言うと、ニヤッと笑ってカルティニの肩を叩く。

「お任せを。私のDICTアカウントを残していることを後悔させてやりますよ。」

 カルティニもニヤリと笑みを浮かべる。

「な、なんかあの二人、怖くない?」

「ウ、ウン・・・」

 そんな二人の様子を見て、有騎と奈央は少し引いていた。


「ここまで接近してきているということは・・・多分、敵はワイバーンに搭載している火器類を使って直接攻撃するつもりなのでしょう。」

 サリファがそう言うと、カルティニも頷く。

「おそらくそうでしょう。

 ただ、さっき調べた限りでは、あのワイバーンにはそれほどの火器は搭載されていません。

 元々白兵戦なんてものは想定してなかっただろうから、当然と言えば当然ですが。」

「でも、今は神戸を通過中だ。

 敵も都会のど真ん中でマシンガンをぶっ放すようなマネは・・・」

 有騎がそう言ったまさにその瞬間だった。


 ズダダダダダ!!!!


 凄まじい銃声が車内まで聞こえてくる。


「敵の戦闘ヘリが並走して、こちらに向かってガトリングガンをぶっ放してやがる。」

「マジか!?」

 大都市神戸の中心で、平気でマシンガンをぶっ放してきた敵の攻撃に、さしもの有騎達も驚く。

「何を今更驚いてる。

 相手はディルスターだぞ。

 奴らだったら、神戸に核攻撃だってやりかねない。」

 カルティニがそう言うと、車内の空気が一気に重くなる。

「有騎、この車はミサイル発射できるんだよな?」

 カルティニが有騎に尋ねる。

「屋根に対空ミサイルが2基設置してある。

 ただし、小型だから相手のヘリまで届くかどうかわからないし、ヘリは市街地を飛んでいるんだぞ。」

 まさか応戦するつもりじゃないだろうな。」

「タイミングが来たら、こちらから仕掛ける。」

 カルティニはそう言うとニヤリと笑う。

「ま、まさか、神戸でミサイルを発射するつもりじゃ・・・」

 奈央が恐る恐るカルティニに尋ねると

「いくらなんでもそんなことはしないよ。」

 サリファが応える。

 そして、サリファはカルティニの方を向く。

「カルティニ、あれを使うの?」

「ええ、お嬢様。」

 カルティニはそう応えた後、隣にいた有騎に話す。

「いいか、まずはこのまま神戸を全力で走り抜けろ。

 さっき地図を見たが、この先、この道路は比較的密集地から外れた場所を通る。

 少し先まで行けば、山が多い地域になる。

 仕掛けるとしたら、そのタイミングしかない。」

「じゃあ、それまでは・・・」

「威嚇攻撃をしつつ、全力で逃げる。

 そのために、このロケット砲を利用させてもらうぞ。」

「わかった。」

 有騎は無線を取り出すと、バイクに乗っている一馬につなげる。

「一馬、これから全速力で逃げるぞ。そっちは大丈夫か?」

「ああ、燃料は多分持つだろう。ただし、バリアはもうほとんど使えない。」

「そうか。じゃあ、ハロルド号の右側を走って、敵の戦闘ヘリの死角に入りこめ。」

「ああ、そのつもりだ。」


 一馬のハイウェイスターは速度を上げると、ハロルド号の右側に隠れるように並走する。

「速度を時速180キロまで上げるぞ。気をつけて追いかけてこい。」

「180キロで安全運転もへったくれもないだろう。」

 一馬はそう言うと、豪快に笑う。


「後方よりアークライダー接近。」

 奈央が悲鳴に近い声を上げる。

「あの戦闘ヘリだけでも厄介なのに、アークライダーまでお出ましとはね。」

 有騎はため息をつく。

「ワイバーンが制御機能を失っている以上、あのアークライダーは自立型の可能性が高い。」

 カルティニがそう言うと、有騎達の表情がさらにげんなりする。

「制御型と違って、自立型は手ごわいんだよなあ。」

「そうそう、独自のアルゴリズムに基づいて攻撃をしかけてくるし。」

 サリファも思わず苦笑する。


「あのアークライダーも小型ミサイル搭載タイプで、しかもこっちの攻撃に備えて、前方にバリアを貼っている。

 なんで日本にあんなのがいるのよ?」

 さっきから奈央は半泣き状態で、後方のアークライダーの様子をモニタしていた。

「任せろ。」

 とその時、ハロルド号の2階に設置していたミサイル発射口が開く。

「まずは、後ろの五月蠅い蠅どもから片づける。」

 カルティニは、端末の映像を見ながら慎重に照準を合わせる。

「カルティニさん、ここでミサイル発射は・・・」

 それを見た奈央が慌てて止めようとするが、

「わかってる。あのミサイルは別の用途で用意した。」

 カルティニはそう答えると、ミサイルではなく後方に装備している銃を発射する。

 カルティニの撃った機銃は、アークライダーに全弾命中すると、全部横転し爆破した。

「すげえ・・・」

 それを見ていた一馬が思わず感嘆の声をあげる。


「でも、あのアークライダー、前方にバリアがあったはずなのにどうして?」

 奈央は不思議に思った。

 ミサイルでも打ったのであればともかく、普通の銃弾ではバリアに弾き返されてしまうはずだ。

 しかし、アークライダーのバリアが銃弾を弾き返した痕跡は全くなかった。

「一体これは?」

 有騎も驚いた表情で、カルティニに尋ねる。

「カルティニ、あれを使ったんだね。」

 サリファがそう言うと、カルティニは静かに頷く。

「あれって何ですか?」

 奈央がカルティニに尋ねる。

「さっき撃ったのは、バリアを貫通するための特殊な銃弾だ。

 我々SALIDしか持っていない貴重な武器だ。」

「バリアに備えた武器か。なんていうか色々と皮肉な武器だな。」

 有騎がそう言うと、カルティニも「違いない」と苦笑する。


 バリアは、元々は要人を守るために開発された技術であった。

 しかし、バリア技術が普及すると、要人警護以外にも様々なところでバリアは応用された。

 そして、ディルスターに敵対する勢力にも、バリア技術が普及するようになった。

 そして、独自にバリア技術を発展させていった。

 バリア技術は、ディルスターが世界を席巻する前から発達していた技術なので、DICTによる武器無効化にも対応できないものがレジスタンスの間で広まっていた。

 そのため、レジスタンスを鎮圧するために、SALIDは対バリア貫通武器を持つようになっていたのだ。

「その貫通武器で、アークライダーのバリアを貫通することになるとはな。」

「それにしても、アークライダーの急所を一撃で鎮めるとはさすがだね。」

 サリファはカルティニの腕前に改めて感心する。

 カルティニは追手のアークライダーを全て一発の銃弾で仕留めていた。

 カルティニは狙撃の腕もプロフェッショナルであった。

「ですが、手持ちの貫通弾は全部使い果たしてしまいました。

 いつもであれば、もっと持っているのですが・・・」

 カルティニは、サリファを慌てて追いかけてきたため、普段身につけている装備のほとんどを車内に置き忘れていたのだった。

「とりあえず、今は逃げるのが先決です。」

 アークライダーを撃破したハロルド号とハイウェイスターは速度を一気に上げて、高速道路を駆け抜けていく。

 それに並走するように、ワイバーンもおいかけてくる。


「こっちに向けてバズーカ構えてる奴がいるわよ。」

 ワイバーンの映像を映し出した奈央の表情が再び真っ青になる。

「大丈夫。そのためのミサイルだから。」

 カルティニがワイバーンに対してミサイルをロックオンすると、ワイバーンはすかさず回避行動に出る。

「ワイバーンの全ての武器が使用不可になっている以上、ああやって乗組員自ら武器を使うしかない。

 だから、ワイバーンの操縦は自動追尾モードにするしかなくなる。

 ワイバーンの自動操縦モードは実に優れている。

 ミサイルのロックオンを素早く感知すると、すかさず回避行動に移る。」

「それで、さっきミサイル発射準備をしていたのか?」

 有騎がそう言うと、カルティニは頷く。

「元々不安定なヘリで、あんなバズーカ撃とうとしているんだ。

 回避行動なんかされたら、体勢も安定しないだろう。」


 カルティニの言う通りで、ワイバーンの回避行動により、機内の伊織の体勢は大きく崩れていた。

「ロックオンだと!!!まさか!!!」

 伊織は敵にロックオンされたことに驚く。

 ワイバーンは高速道路に非常に接近している。

 これは、不安定なヘリからのバズーカを撃とうとしたためだが、この状況ではどう考えても敵のミサイルの方が命中率は高いだろう。

 これでは、あまりにもこちら側が不利だ。

「クソッ、全速回避だ!!!」

 伊織はワイバーンの操縦モードを手動に戻すと、大きく高速道路から離れる。

 大きく離れたところで、敵がミサイルを撃ってくる様子がないのを見て、とりあえずホッとする。

「トラックに搭載タイプのミサイルだから、射程距離が短いのだろう。

 だが、うかつに接近すると、逆にこちらがやられかねない。」

 伊織は少し考える。

(敵のミサイルを回避しつつ、手動の武器であのトラックを撃破するにはどうしたものだろうか?)

 そうこうしているうちに、ハロルド号は神戸を抜けるとトンネルへと入っていく。

 ここからは山やトンネルが多くなる。

(そうだ、さっきハッキングした時に、データも一部入手していたはず。

 その中に、あの車に関する情報があるかも・・・)

 伊織はそう思い、端末にアクセスする。

 だが、取得したはずのデータは、すべてきれいに抹消されていた。

 おそらく、カルティニの仕業だろう。

「クソッ!!!」

 伊織は思わず端末のキーボードを叩く。

(こうなったら、敵の油断をついて攻撃に出るしかない。)

 伊織は、ワイバーンの速度を一気に上げる。

 ワイバーンはハロルド号がいるであろう場所からどんどん離れていく。


「ワイバーンがいない。」

 トンネルを出ると、並走していたはずのワイバーンがいなくなっていることにカルティニが気づく。

「どうやら諦めて帰ったみたいだな。」

 無線で一馬はそう言うと豪快に笑う。

「奴らがそんなに簡単に諦めるとは思えないけどなあ。」

 有騎がそう言うと、隣にいた奈央も頷く。

「お前らが心配しすぎなだけだ。」

 一馬はそう言うと、もう一度豪快に笑う。

 本当、こんな楽観的なリーダーの元でよく今まで生き延びてこれたものだと、有騎と奈央は思った。

「まあ、いいや。敵がいない今のうちにハイウェイスターを回収しておこう。

 幸い、ハロルド号以外、車が一台も走ってない状態だし。」

 有騎はそう言うと、ハロルド号を停車するように命じる。

 もちろん、周囲の警戒は怠っていなかった。

 だが、幸いにもワイバーンもアークライダーも出てくることはなかった。

「奴ら、本当に諦めて帰っちまったみたいだな。」

 ハロルド号に戻ってきた一馬が、再び豪快に笑う。

「カルティニはどう思う?」

 サリファがカルティニに尋ねる。

「残念ながら、素直に諦めて帰ったとは思えません。

 SALIDが敵を逃して帰ろうものなら、厳罰が待ってますからね。」

 カルティニはそう言うと、端末にデータを表示する。

 どうやら、先程逆ハッキングした時に盗んだデータのようである。

「ワイバーンに搭乗している人物ですが、登録認証IDを調べたところ、どうやらSALID一人だけのようです。

 名前は風宮 伊織というようです。」

「風宮 伊織・・・あれっ、どこかで聞いたことがあるかも?」

 その名前を聞いて、サリファは首を傾げる。

「まさか、お嬢様に私以外のSALIDの知り合いがいるとは知りませんでした。」

「いや・・・知り合いと言うか・・・どこかで聞いたことのある名前のような気がしたんだけど・・・思い出せない。」

「そうですか。」

 カルティニはサリファの様子から、色々と推測を立て始める。


(お嬢様の記憶力は非常に優れている。

 お嬢様は、世界中で色々な人と会っているが、その多くの人達の顔と名前を全て記憶されている。

 そのお嬢様の記憶が曖昧ということは、恐らく会ったとしてもかなり昔のことだろう。

 そして、お嬢様は覚えていなくても、伊織の方は覚えていたとしたら・・・)

 これまでのワイバーンの攻撃を思い出す。

 一連の攻撃は、ハロルド号を破壊することに何の躊躇も見られなかった。

 もちろん、SALIDの一員である以上、任務に私情を持ち込むことは許されない。

 だが、それにしても神戸上空でミサイルまで撃とうとするのはさすがにやりすぎである。

 しかも逆ハッキングされたら、今度はすかさず接近戦で攻撃しようとしてきた。

(仮にお嬢様に対して悪い方の私情があるとしたら・・・ますます諦めて帰ったとは思えないな。)

 カルティニは上空の様子をモニターに映し出す。

 だが、いくら見渡してもワイバーンはどこにも見当たらない。


「だから、トンネル入って攻撃できなくなったから帰ったんだよ。」

 一馬はあくまで楽観的だ。

 だが、一馬以外は全員そうは思っていなかった。

「お嬢様、多分ワイバーンはこの先のどこかで待ち伏せしているはずです。

 私はさっきのトンネルを抜けたところで攻撃を仕掛けてくると思っていたのですが・・・」

 カルティニがそう言うと、サリファも頷く。

「多分、ワイバーンは別のところでこちらをモニターしているはず。

 それでカルティニ、ワイバーンのシステムが復旧する可能性はある?」

「いえ、先程侵入した時に徹底的に破壊しておきましたから、あれは機内での修復は不可能でしょう。

 伊織はどうやらコンピューターにはそれほど詳しくはないようですし。」

「そう、よかった。」

 それを聞いて、サリファは安堵する。

 カルティニもそこはぬかりはなかった。

 神戸上空でミサイルを撃とうとしたくらいだから、州都から離れた場所に行こうものなら、トンネルごとミサイルで吹き飛ばすぐらいのことはやって来かねない。

 だから、カルティニは全てのシステムを徹底的に破壊した。

 リモートでの修復も困難にするよう、あらゆる技術を駆使して、徹底的に破壊した。

「新しいワイバーンが出撃してくると言う可能性は?」

「それも考えられますが、ワイバーンが配備されているのはこの辺では大阪だけだったはずです。

 今から大阪から出撃してくるにしても、今から我々に追いつくにはそれなりに時間がかかるでしょう。」

 ハロルド号は明石市に入っていた。

 神戸市の大都会とはうって変って、地方小都市らしい光景が周りに広がっていた。

「今は、後方から来るかもしれない敵よりも、前方に待ち構えている敵を第一に考えるべきでしょう。」

「ええ、そうね。」

「ワイバーンにあるのは、手動で使う武器だけです。恐らく、敵はそれが効果的に命中できる場所に待ち構えているはず。」

「だとすれば、トンネルの出口で待ち構えている可能性が一番大きいな。」

 話を聞いていた有騎がカルティニにそう言う。

「トンネルか・・・問題は、どのトンネルで待ち構えるかだが・・・」

 カルティニはそう言うと、端末に地図を表示する。


「ここからしばらくはトンネルも山もない。

 となると、襲ってくるとしたら、この辺りか?」

 カルティニはそう言うと、現在位置よりも遥か先の位置を指でさす。

「姫路か。」

 有騎がカルティニに指の位置を見てそう言う。

 だが、少し考えて、カルティニは訂正する。

「いや、敵はもう少し前で攻撃を仕掛けてくる。恐らく、姫路に入る手前で襲ってくるはずだ。」

「でも、あの辺にトンネルあったっけ?」

 有騎がカルティニに尋ねる。

「トンネルはあくまで可能性の一つにすぎない。

 最適な場所は恐らくここだ。」

 カルティニはそう言うと、一点を指す。

 そこは、大きなジャンクションがあった。

 その指を指した場所を見て、有騎は驚く。

「この場所って、今の速度だとあと十分ぐらいで着くぞ。」

「敵は我々が中国道に行くことを望まないだろう。

 バイパスならともかく、中国道は日本の主幹道路の一つだ。

 さすがのディルスターも中国道を封鎖するのは躊躇するだろう。」

「と言うことは?」

 サリファが尋ねる。

「恐らく、ここにアークライダーを集結させている可能性が高い。

 我々がアークライダーに集中している隙に接近して攻撃してくる可能性は十分考えられる。

 何せ、この辺は山が多い。

 低空飛行して隠れることも可能だ。」

 カルティニがそう言うと、サリファの表情が険しくなる。

「そもそも、今の状況だと、アークライダーだって撃破できるか・・・」

 サリファがそう言うのも当然だった。

 先程、自立型アークライダーのバリアを破ることができたのは、カルティニの持っていたバリア貫通弾によるものだった。

 でも、バリア貫通弾はもうない。

 ハイウェイスターも燃料やエネルギーが尽きていて、これ以上戦うことは無理だ。

「どれだけ待ち構えているかわからないけど、ハロルド号の武器だけで戦うのはキツイなあ。」

 さすがの一馬も少し表情をこわばらせる。

「いっそのこと高速を降りるってのはどうだ?」

 有騎がカルティニに尋ねる。

 バイパスは一本道で、このままでは袋小路に陥るだけだ。

 そう考えると、確かに高速を降りるのは一つの手である。

 しかし、カルティニは首を横に振る。

「出口のハイウェイゲートは全て封鎖されているはずだ。

 仮に破壊して下に降りたとしても、私のDICTは今でもゼウスネットワークで監視されているから、位置はすぐに突き止められてしまう。

 そうなったらもう絶対にワイバーンを振り切れなくなる。

 我々はここらの地理を把握しているわけではないし、姫路から出撃してきたアークライダーに包囲されたところを、ワイバーンから砲撃されたら終わりだ。

 ここは一気に突破するしかない。」

 カルティニが力強くそう言うと、有騎も奈央も頷くしかなかった。

「さっきハイウェイスターは電磁バリアを張っていたが、もしかしてこの車もバリアを張れるか?」

「一度くらいなら・・・」

 奈央が答える。

「そうか・・・できるんだな。」

 それを聞いて、カルティニはニヤリと笑みを浮かべる。

「じゃあ、今から言うことを準備してくれ。」

 カルティニはそう言うと、奈央にあるものを渡した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ