雨降る帰り道、1
「おーい、カッコー」
振り返ってみれば、同級生の船元が信号の向こう側で手を振っていた。
ちなみに、カッコとは俺のあだ名。
猫背=変なカッコ(格好)、
昔が大好き=過去。
そんなのが集まってカッコと呼ばれるようになったわけだ。
「船元、男子高校生が手を振りながら大声だしてるってすごく恥ずかしいと思わないか?」
俺は信号を渡ってきた船元に問いかけた。
「いやー、最近テンション高くてさ。もう大丈夫、なんでも出来るって思える」
「そのあとで爆死するんだな、わかるよ」
「あ、ネタわかるんだ」
どうでもいいような事を話しながら、帰っていく。
幸せと思える。
「そういや今度の映画いつ見にいこうか?」船元に問う。
「んー、カッコは何時がいい?」答えが返ってくる。
「俺は最初の時間がいいな。しかも上映開始日の」
「いいよ。ハッカーフォームか、楽しみだなー」
雨の日でも、晴れの日でも。
こんな会話が毎日続く。
船元は、俺の話すことを理解できる。
俺も、船元の話すことを理解できる。
中学校時代の友達によると、俺とこいつは似ているらしい。
何が似てるか。
それはゲーム、アニメ等にとても詳しいということ。
要するに、俺たちはオタクとして見られていた、ということだ。
最初にそう言われたとき、お前はオタクがどういう人のことを言うのかわかってねぇ。
俺は毎日パソコンやってるから詳しいだけなんだよ。
と答えて、周りの人にひかれた。
覚えている。小学校、中学校の思い出。
忘れるはずがない。
これが、今の俺を支えているのだから。
思い出に支えられて生きている。意味不明だろう。
何が意味不明なのか。
聞いても、答える人はいなかった。
「おいカッコ、どした?黙り込んで。八ッ、まさかこの世界を支配する魔王のち」
「ねーよ」
まあいいや。今はこいつとの会話を楽しもう。
気がつけば、場所は既に行き慣れた中学校の前まで歩いてきていた。