数は力だ!
手持ちの手榴弾にも底が見え始めたので一時撤退。
一方的な虐殺を伴う鬼ごっこは終幕した。
鬼達の犠牲で刑期がかなり縮んだ。お前達の死は無駄にはしない。
恐怖におののく鬼達がすぐに反撃を仕掛けてくるとは思えないから、俺たちは針地獄に隠れのんびり休息をとっている。数メートルの針が乱立しているエリアでスペースを確保するため手榴弾で針を折ってある。
「流石に疲れました」
朝貴が欠伸をかみ殺す。頭のネジは締めなおしたので高笑いを響かせることもない。
「残り六千年の刑期か」
元々が一万とんで百年だったから四千百年の刑期を縮めた事になる。倒した鬼は四百十になる計算だ。
「正直、もっと効率良いと思った」「鬼は頑丈でしたからね。威力を上げれば良いのでは?」
朝貴の提案は尤もだがこれ以上は自分も巻き込んでしまう。
「仲間を増やすか」
俺の呟きに朝貴が眠たげな目を向ける。
「地獄行きになった悪人を?」
鬼を虐殺して嘲笑を響かせる奴が言うことか。
「人以外を味方にすればいい」
俺の笑みに朝貴は首を傾げた。
対峙するなり逃げ腰の鬼達に俺は待ったをかけた。
隣には朝貴が控え、周囲を警戒している。伏兵はいないようだ。
「俺は鬼に興味はない。狙いは閻魔の首だけだ」 鬼達は武器を片手に困惑と猜疑心が混ざった視線を俺に注ぐ。
「今まではお前達鬼が閻魔の忠実な部下と思い仕方なく戦ってきた。だが、いくら鬼を虐殺しても閻魔は現れない。おかしくはないか? 何故かわいい部下がこれほどの仕打ちを受けても自ら戦場に現れないのだ?」
俺はゆっくり鬼達を見回す。目があった鬼には険しい顔で頷いて見せる。
「そう、閻魔にとってお前達鬼は使い捨てなのだ!」
鬼の間に動揺が広がる。
「お前達は使い捨てられるような存在か? 違うだろう!」
最も動揺している青鬼を指さし俺は問う。
「お前達は使い捨てか?」
青鬼は狼狽えながら首を横に振る。そりゃそうだろう。仲間の鬼を含めて聞かれているのだから、肯定しようものなら後で袋叩きに遭う。
だが、本来敵であるはずの俺の意見に仲間が同調した鬼達は更に動揺が深まった。
「お前も気付いていたはずだ。そうでなければ動揺しないだろう!」
彼らの動揺は俺が始めた突然の演説に対するものだったのだが、他人の心は読めない。周囲の鬼がどうして動揺したかなど他の鬼にも分からないのだ。
俺はただ理由を付けて閻魔への忠誠心を揺さぶっただけだ。
「不満があるから動揺するんだ」
そして、俺は止めの言葉を口にする。
「不満があるなら立ち上がれ!」
鬼達が震えた。
「「おおぉおっ!!」」
主人公が革命の旗を掲げました。