ただいま世紀末。
「大変です!」
閻魔は部下の声に対してうるさそうに振り向いた。
「どうかしたのか?」
落ち着いて促す。
長年地獄を仕切り罪人達を送り込んできた。悪人が集まれば何か悪さをするもので部下が飛び込んできたのもその類だろう。
「地獄で鬼が殺害されました!」
部下の顔は怯えきっている。自らの持ってきた知らせに閻魔が怒ることを恐れているようだ。
新入りはこれだから困る。鬼はただでさえ恨みを買っているのだ。事故などで一時的に動けなくなった鬼を地獄の囚人が徒党を組んでリンチすることは稀にあることだ。
「それは昨日すでに聞いている」
「別件なんです!」
部下の慌て振りに閻魔は眉をよせる。この短期間で二名の鬼がやられるとは。
「事故の防止策を練らねばならんなぁ」
「そうじゃないんです!」
事故じゃないのか? 閻魔は首を傾げる。ならどうやって頑丈な鬼を殺害するというのか。
「地獄の鬼達が……。」
部下はごくりと唾を飲む。
「鬼達が?」
閻魔が促すのに部下は震える声で答えた。
「虐殺されてんですよっ!」
「ヒャッハー」
世紀末を感じさせるかけ声と共に俺は逃げまどう鬼の群へ手製の手榴弾を投げ込んだ。
釜ゆで地獄の燃料に用意された木をくり貫き、同じく釜ゆで地獄の火力調整用に用意されている火薬と針地獄で拾った金属片を混ぜ合わせて詰めた凶悪な代物だ。
着弾地点の鬼達が破片に貫かれて苦しみ出す。すかさず踊り込んだ朝貴が槍代わりの針で急所を貫き弄ぶ。
「ふふふ、悲鳴が足りませんよぉ!」
ノリに乗って頭のネジが緩んだ朝貴が笑う。仲間の俺でも若干怖い。鬼達から本当に悲鳴が上がってる。
「悲鳴がうるさいんですけどぉ? あはははっ!」
今「どうしろってんですかぁ」と叫んだ鬼よ、どうしようもないから諦めろ。
心の中で同情しつつも、俺は悲鳴を増やすべく手榴弾を手に取った。
鬼相手に何しても……やりすぎか。