第13回戦 武蔵野西陵戦①
武蔵野西陵が勝ち、昼過ぎに埼玉光栄高校インターハイ初戦が始まった。
シングルス1早坂、シングルス2大石、ダブルス天堂・大石、シングルス4天堂、シングルス5鹿鳴館。
できるだけロクは温存したかったが、小田切先生の采配を信じるしか無い。
S1、早坂の相手は望月だった。
ペンホルダー表の前陣速攻、主将としての貫禄を見せつけてくるタイプだと聞いていた。
試合が始まると、早坂は持ち前のフットワークで、望月の速攻に食らいついていった。
決して受け身にならず、拾って拾って、隙があれば果敢にバックハンドスマッシュを振り抜く。
ベンチから見ていても、随分と成長したな、と思わされる内容だった。
回り込んでのスマッシュ、ドライブ、ブロック。絶滅危惧種の日ペンドラは、望月を十分に翻弄した。
ツッツキからの台上ドライブ、バックハンドのスマッシュ、いわゆる「右打ち左押し」を存分に活かした攻撃。
最終ゲームまでもつれたが、11-8で早坂が制した。
「よっしゃあああああ!」
ベンチに戻ってきた早坂に、天堂が「その意気だ」と声をかける。
1勝目。良いスタートだった。
S2の大石は、藤山を相手にストレート勝ち。ハンドソウラケットという初見殺しに、大石の技術。
バックハンドはフラットかつカット気味にカーブドライブを多めに、フォアは豪快に振っていった。
すでに見た通りの、丁寧で崩れない試合運びだった。
これで2連勝。
ダブルス。天堂・大石のペアが、千葉・多々良の組み合わせと当たった。
序盤は互角の展開だったが、多々良の得意なロブに何度も粘られ、決定打を欠いたまま競り負けた。
「すまん、みんな」
「やられた。悪い。頼む」
天堂と大石が頭を垂れる。
「大河、シュウ、謝るのは試合の後でいいわ。千葉くんと多々良くんのことをできるだけ伝えて」
小田切先生が指示を飛ばす。
「千葉はフラット気味に打ってくる。表面がやっかいだ。赤面だな。あとは多々良はカット気味のタイプだ。お互いにサインを決めて、どっちが打つか、攻撃するか決めてる。千葉はフラットだから、粒高のロクが……」
「でもさあ、4番は橋本って選手だし、5番は高安って選手だよ~。天堂、次も試合だから、ほい、ドリンク飲んでけば~」
ロクの何気ない一言に、ちょっと場が和んだ。
「みんな。頼むな。行ってくる」
1勝1敗のイーブンに、S2までの貯金を持っていかれる形になった。
S4、天堂の相手は橋本。反転ペンホルダーの粒高ブロッカーだった。
「俺、粒高相手も初めてかもな、公式戦」
台に向かう前、天堂がそんなことを呟いていた。
確かに粒高は垂木とロクがいるが、垂木はまだまだだし、ロクは粒高をメインにしていない。
慎重に攻めるが、橋本のブロックが繰り出す変化に何度もリズムを崩され、決めきれないラリーが続く。
最終ゲームまでもつれたが、僅差で橋本に軍配が上がった。
「くっっっっっっっっっっっっそ……」
戻る途中に、天堂が何度も天を仰いだ。
2勝2敗。
ここまで、苦しむとは思っていなかった。
勝負は、S4の大将・ロクに託された。
「ま、やるだけのことしかできないから、応援よろ~」
気だるげに、いつもの様子で、ロクは台ヘ向かった。
試合が終わったのか、女子部の田中や岸田、若松も応援に来ていた。




