少年サッカー 第10話 短編版
前夜の金曜、エンリコにコーチ陣が集まった。吉田代表、直輝コーチも加わり、鶴見FC対策の最終会議が始まる。
「前回は10番をマオとワタルが潰せたけど、相手はすぐサイド攻撃に切り替えてきた。層が厚いっす」
直輝コーチの言葉に、村上コーチが続ける。
「攻撃は形が増えてきた。でも守備は前からの圧が足りない。ユースケ、ヒョーガ、ユーメイが前半で走り切れるかが勝負ですね」
山下コーチも頷く。
「サイドバックのオーバーラップも使えるはず。攻撃が最大の防御ですよ」
前半はユースケ・ヒョーガ・ユーメイが全力で走り、後半はナオヤ・ソウ・リュージで勝負。
吉田代表が締めた。
「最後まで諦めない。今年の四年生は楽しみだ」
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翌日。
村上コーチは3人に短く告げた。
「前半終わったら倒れていい。走り回ってこい」
キックオフ。
前線からのプレッシャーは効いていたが、鶴見FCのワンタッチの速さに徐々に疲労が滲む。
右サイドを突破され、クロスから失点。0-1。
「下向くな、切り替えよう!」
声をかけても、選手たちは沈んでいた。
ユースケは怪我を感じさせず走るが、1対1ではまだ怖さが残る。
それでも、前半を走り切った。
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ハーフタイム。
沈む空気を、直輝コーチが破る。
「後半はナオヤ、ソウ、リュージが入るぞ。まだいける!」
ムラッチョにはオフサイドトラップの指示。
ゲンとリクトにはオーバーラップの号令。
選手たちの顔に再び火が灯る。
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後半開始。
フレッシュな3人が走り回り、流れが変わる。
ワタルが奪い、ナオヤへ。
ナオヤが縦へ運ぶと、後ろからゲンが追い越す。
ナオヤは外へパス。
ゲンがトップスピードで追いつき、低いクロス。
そこにリュージ。
トラップ、シュート。
ゴールネットが揺れた。
1-1。
ゲン、リュージ、ナオヤが肩を組んで喜ぶ。
山下コーチは拳を突き上げた。
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だが、ここから鶴見FCの猛攻。
アキがスーパーセーブを連発。
そして、ムラッチョの読みが冴えた。
相手10番のサイドチェンジを、最終ライン全員で一気に上げてオフサイドに仕留める。
副審の旗が上がる。
「よし!」
逆転の気配が漂った。
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残り1分。
相手10番にボールが渡る。
嫌な予感。
振り向きざまのループ。
美しい弧を描いたボールは、アキの頭上を越え、クロスバーをかすめて落ちた。
1-2。
ホイッスル。
選手たちはその場に座り込んだ。
「立て! まだ終わってない!」
吉田代表の声で最後のキックオフをしたが、すぐに試合終了。
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試合後。
村上コーチはすぐに切り替える。
「石川コーチ、次の試合は私が主審、石川コーチは副審ね。浜田コーチは整理体操お願いします」
悔しさで声が出ない自分とは対照的に、選手たちは意外と明るい。
「いい試合できたよな」
そんな声が聞こえてきて、少し救われた。
黒いレフリー服に着替えながら思う。
思い通りにならないことは山ほどある。
でも、思いもよらない奇跡だって起こる。
同点ゴールは、
夜遅くまでのコーチ会、
素直に育つ子どもたち、
そして努力を積み重ねてきた選手たちの“必然”だったのかもしれない。
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