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少年サッカー 第10話 短編版

作者: 岩田 ヒロ
掲載日:2026/06/03

前夜の金曜、エンリコにコーチ陣が集まった。吉田代表、直輝コーチも加わり、鶴見FC対策の最終会議が始まる。


「前回は10番をマオとワタルが潰せたけど、相手はすぐサイド攻撃に切り替えてきた。層が厚いっす」

直輝コーチの言葉に、村上コーチが続ける。


「攻撃は形が増えてきた。でも守備は前からの圧が足りない。ユースケ、ヒョーガ、ユーメイが前半で走り切れるかが勝負ですね」


山下コーチも頷く。

「サイドバックのオーバーラップも使えるはず。攻撃が最大の防御ですよ」


前半はユースケ・ヒョーガ・ユーメイが全力で走り、後半はナオヤ・ソウ・リュージで勝負。

吉田代表が締めた。


「最後まで諦めない。今年の四年生は楽しみだ」


---


翌日。

村上コーチは3人に短く告げた。


「前半終わったら倒れていい。走り回ってこい」


キックオフ。


前線からのプレッシャーは効いていたが、鶴見FCのワンタッチの速さに徐々に疲労が滲む。

右サイドを突破され、クロスから失点。0-1。


「下向くな、切り替えよう!」

声をかけても、選手たちは沈んでいた。


ユースケは怪我を感じさせず走るが、1対1ではまだ怖さが残る。

それでも、前半を走り切った。


---


ハーフタイム。

沈む空気を、直輝コーチが破る。


「後半はナオヤ、ソウ、リュージが入るぞ。まだいける!」


ムラッチョにはオフサイドトラップの指示。

ゲンとリクトにはオーバーラップの号令。

選手たちの顔に再び火が灯る。


---


後半開始。


フレッシュな3人が走り回り、流れが変わる。

ワタルが奪い、ナオヤへ。

ナオヤが縦へ運ぶと、後ろからゲンが追い越す。


ナオヤは外へパス。

ゲンがトップスピードで追いつき、低いクロス。


そこにリュージ。

トラップ、シュート。


ゴールネットが揺れた。


1-1。

ゲン、リュージ、ナオヤが肩を組んで喜ぶ。

山下コーチは拳を突き上げた。


---


だが、ここから鶴見FCの猛攻。

アキがスーパーセーブを連発。


そして、ムラッチョの読みが冴えた。

相手10番のサイドチェンジを、最終ライン全員で一気に上げてオフサイドに仕留める。


副審の旗が上がる。

「よし!」

逆転の気配が漂った。


---


残り1分。


相手10番にボールが渡る。

嫌な予感。


振り向きざまのループ。

美しい弧を描いたボールは、アキの頭上を越え、クロスバーをかすめて落ちた。


1-2。


ホイッスル。

選手たちはその場に座り込んだ。


「立て! まだ終わってない!」

吉田代表の声で最後のキックオフをしたが、すぐに試合終了。


---


試合後。

村上コーチはすぐに切り替える。


「石川コーチ、次の試合は私が主審、石川コーチは副審ね。浜田コーチは整理体操お願いします」


悔しさで声が出ない自分とは対照的に、選手たちは意外と明るい。


「いい試合できたよな」

そんな声が聞こえてきて、少し救われた。


黒いレフリー服に着替えながら思う。


思い通りにならないことは山ほどある。

でも、思いもよらない奇跡だって起こる。


同点ゴールは、

夜遅くまでのコーチ会、

素直に育つ子どもたち、

そして努力を積み重ねてきた選手たちの“必然”だったのかもしれない。

本編はこちらから

https://ncode.syosetu.com/n0828ls/10

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