第35話 答えを求められて
第三階層を抜けたという話は、思っていたより早く広まった。
ギルドに顔を出した瞬間、視線が集まる。
好奇心、期待、不安――そして、切実さ。
「どうだった?」
「どこを通った?」
「条件は? 何に気をつければいい?」
質問は、途切れなかった。
皆、真剣だ。
命がかかっている。
だからこそ、俺は口を開けなかった。
「……通過しました」
それだけ言う。
「それで?」
「意味が分からない」
「何かあるはずだろ」
ミラが、俺の隣に立つ。
「これ以上は、話さない」
不満の声が上がる。
怒りも混じる。
「独占か?」
「教えれば助かる命もあるだろ!」
正論だ。
胸が、少し痛む。
「……納得できる話は、しません」
俺は、静かに言った。
「第三階層では、それが一番危険だから」
誰も、納得しなかった。
当然だ。
エリオが、群衆の後ろから前に出る。
「彼は、嘘をついていない」
穏やかな声。
「ただ、語らないだけだ」
俺と、エリオの目が合う。
短い沈黙。
「俺は、語る」
エリオは続ける。
「意味がなければ、人は進めない」
「……進まなくていい時もある」
俺は、それだけ返した。
場は、割れた。
語る者と、語らない者。
誰もが、自分の正しさを信じている。
ギルドは、結論を出せなかった。
第三階層は当面、個人判断。
情報共有は、任意。
それが、限界だった。
外に出ると、夕暮れだった。
ミラが、ぽつりと言う。
「嫌われ役、最後までやるのね」
「……はい」
俺は、空を見上げる。
「でも、強制はしません」
立ち止まる人がいれば、それでいい。
進む人がいても、それはその人の選択だ。
俺は、ノートを閉じた。
答えは、どこにも書いていない。
それでいい。
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