表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
慎重すぎる探索者は、ダンジョンで長生きする 〜攻略しない探索者の、純冒険成長記〜  作者: 風間レオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/36

第28話 集めるほど、揃っていく

 証言を集めるほど、安心するはずだった。

 少なくとも、普通のダンジョンなら。


 だが第三階層では、逆だった。


「……増えてる」

 俺は、ノートを閉じて呟いた。


 数じゃない。

 情報量でもない。


 **同じ結論に辿り着く速度**が、異様に早い。


 午前中だけで、七人。

 年齢も、経験も、価値観も違う探索者たちだ。


 それなのに。


「第三階層は、自分を見つめ直す場所だ」

「怖いけど、必要な体験だった」

「進むか引くかを、選ばされるだけだ」


 言い回しは違う。

 声色も違う。


 だが、聞いているうちに分かる。

 **語っている中身は、同じ物語だ。**


 ミラが、腕を組んだまま言う。

「まるで、用意された選択肢から選ばされてるみたい」


「……はい」

 俺は、頷く。

「しかも、自分で選んだと思わせる形で」


 それが、一番厄介だった。


 誰も、強制されたとは思っていない。

 むしろ、満足している。


 ギルドの奥で、第三階層の簡易報告がまとめられていた。

 職員が、困った顔で言う。


「内容が、揃いすぎてるんです」

「揃ってるなら、いいじゃないですか」

 別の職員が言う。

「危険が少ないってことだろ?」


 俺は、その会話を聞いて、口を挟めなかった。

 説明できない。


 危険だと感じる理由が、

 **“説明できないこと”そのもの**だからだ。


 昼過ぎ、エリオがギルドに現れた。

 相変わらず、穏やかな笑顔。


「調査、進んでる?」

 軽い調子だ。


「……ええ」

 俺は、言葉を選ぶ。

「証言は、かなり集まりました」


「なら、見えてきたろ?」

 エリオは、当然のように言った。

「第三階層が、何を試してるか」


 俺は、即答できなかった。

 その沈黙を、エリオは肯定と受け取ったようだ。


「答えが揃うって、悪いことじゃない」

 彼は、静かに続ける。

「混乱がなくなる。恐怖も減る」


 その言葉に、反論できない自分が怖かった。


 確かに。

 混乱は減る。

 死者も、今のところいない。


 だが――


「……揃いすぎてる」

 俺は、低く言った。

「現象が違うのに、結論だけが同じなのは、不自然です」


 エリオは、少しだけ目を細めた。

「人間って、そんなもんだろ」


 その一言が、胸に刺さる。


 正しい。

 正しすぎる。


 だからこそ、第三階層は危険だ。


「……もし」

 俺は、言葉を絞り出す。

「もし、その“答え”が間違っていたら?」


 エリオは、首を傾げた。

「間違ってたら、どうなる?」


「皆、同じ方向に、間違える」


 エリオは、しばらく黙った。

 だが、すぐに笑った。


「それでも、納得して死ぬなら、悪くないだろ」


 背中が、冷えた。


 その言葉に、悪意はない。

 本心だ。


 納得していれば、結果は受け入れられる。

 それが、人間だ。


 ミラが、はっきりと言った。

「……私は、嫌」


 エリオが、驚いたように見る。


「納得したまま、動けなくなるのは」

 ミラは、続ける。

「生きてるって、言わない」


 その場の空気が、少しだけ張り詰めた。


 俺は、ノートを開いた。

 新しいページに、短く書く。


 ――第三階層・仮説。

 ――証言を集めるほど、物語が固定される。

 ――情報共有が、最大の罠。


 ペンを置く。

 心臓の音が、やけに大きい。


 第三階層は、

 攻略情報を求める者を、

 最も深く縛る。


 ――だから、集めるほど、揃っていく。


 その事実だけが、今は確かだった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ