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慎重すぎる探索者は、ダンジョンで長生きする 〜攻略しない探索者の、純冒険成長記〜  作者: 風間レオ


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第19話 速さの違い

 第二階層での“短い侵入”を繰り返すようになってから、時間の感覚が変わった。

 何分いたかではない。何歩進んだかでもない。

 ――違和感に、どれだけ早く反応できたか。


 それだけが、基準になっていく。


 その日、境界の前でカインと再び顔を合わせた。

 言葉は要らなかった。互いに、同じことを考えていると分かる。


「今日は、少し深い」

 カインが言う。

「嫌なら、途中で切れ」


「……了解です」

 俺は頷いた。


 境界を越える。

 音が消え、距離がほどける。


 一歩。

 二歩。


 何も起きない。


 三歩目で、胸の奥がざわついた。

 理由はない。ただ、感覚だけが警鐘を鳴らす。


 俺は、止まった。


 カインは、止まらない。


「……っ」

 俺の喉が鳴る。


 次の瞬間、カインの足元の床が、わずかに沈んだ。

 完全ではない。だが、兆候だ。


 カインは、即座に跳ねるように後退した。

 判断に、間はない。


 床は、完全に沈んだ。

 もし、半拍遅れていたら――。


「今の、感じたか」

 カインが、振り返らずに言う。


「……はい」

 俺は、正直に答える。

「でも、止まるのが、遅れました」


「だろうな」

 カインは、淡々と続ける。

「お前、考え始めてから止まる」


 胸が、少し痛んだ。

 その通りだ。


 俺は、“嫌だ”と感じてから、

 それが正しいかどうかを、無意識に確認している。


 カインは、確認しない。

 嫌なら、切る。


 進む。

 また、違和感。


 今度は、俺の方が早かった。

 理由は分からない。

 だが、足が止まった。


 カインが、俺を見る。

 わずかに、眉が動いた。


 床は、沈まない。


「……今のは?」

 俺が聞くと、カインは肩をすくめた。

「お前が先に切った。だから、俺も止まった」


 胸の奥で、何かが静かに鳴った。


 正解かどうかは、分からない。

 だが、判断の“速さ”は、共有できる。


 その後も、侵入と撤退を繰り返す。

 時には、俺が遅れる。

 時には、カインが先に切る。


 成功も、失敗も、残らない。

 残るのは、身体の反応だけだ。


 境界まで戻り、二人同時に足を止める。


「……どうだ」

 カインが言う。

「少しは、速くなったか」


 俺は、正直に答えた。

「……はい。考える前に、足が止まることが増えました」


「それでいい」

 カインは、短く言う。

「考えるのは、戻ってからでいい」


 第一階層に戻る。

 音が、現実に戻る。


 俺は、その場に立ち、深く息を吸った。


 考える探索者であることは、捨てない。

 だが、考える“順番”を変える。


 第二階層では――

 **判断が先で、理解は後だ。**


 それが、この場所で生き残るための、

 新しい癖になりつつあった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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