いえない夢の時間
いつもの音が聞こえた。あぁ誰かが犠牲になる時間がやって来た。あちらこちらで叫び声がする。……だんだん近づいてきてる?角を曲がった瞬間、目があった。第六感が警鐘を鳴らしている。
(逃げなければ)
踵を返し、一目散にかけ出した。後ろで追いかけている音がする。さっき狩られたやつは、確か3人目だった。ということは次は……4人目。血の気が引き、足を早めた。
ヤバいヤバいヤバい!4人目は一番ヤバいやつじゃねぇか!運がねぇ!!
必死に走ってふと思った。
(なぜ追い付かれない?)
あいつは……あの時間の時は……誰よりも足が早く、逃げられなかったはずなのに。
後ろを向くと、また目があった。今度はその目をしっかり見ると、愛おしそうに目を細めた。
(こいつ!わざと遅く走ってやがる!)
確信した、こいつはわざとゆっくり走っている。俺の逃げる姿が面白いのか?いや、違う。あの目は本物だ。例えば子の成長を見る親の目だ。慈愛の目とも言えるその目を俺に向けてやがる。なんで!
そういっている間に俺は体力が尽きた。というか、ここは一本道。このまま走っても行き止まりになっているので意味がない。
後ろから抱き締められる形で俺は捕まった。小さく笑っているのが聞こえる。最後の抵抗で、体を捻るが、なんの意味もなさない。余計愛おしそうな目で見られる。ゆっくりと手が俺の横からきて、顔をがっしりと捕まれる。
あぁ、死ぬんだ俺……。
死を覚悟し、目をつぶった。
「ーーーーー、ーーー」
何を言おうとして…
顔が捻れる感触があり、俺は絶滅した。最期の言葉は聞き取れなかった。
しばらくすると、顔馴染みが来た。
「うわ、またやってる」
私の腕のなかを見て、顔をしかめた。
「本当に回りくどい。さっさと言えばいいのに」
その言葉に私は笑って答えた。
『これでいい。いつかわかるさ。あいつは賢いからな』
その時まではこのままでいたいのだ。




