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3分

作者: べーべー

ふわぁ…ふわぁ…

「あー、無職最高。サイコー。気分、良好ー。」


そう一人ごちる、ある意味最強の男"田中 太郎"は今日も今日とてオンボロアパートの一室で、悠々自適に暮らしていた。


これと言った趣味もなく、怠惰を愛する性分である田中であるが、一つ奇妙な能力を持っていた。それは…


「3分後の光景が見えるってぇ…見えてるよ〜地の文よ。神よ。」


そう、何を隠そうこの男、超能力者なのだ。3分後の光景を感知することのできる微妙で革命的な能力の持ち主。


田中はこの能力を使って行なう"とあるゲーム"にうつつを抜かす日々を送っていた。


そのゲームというのが3分後の自分はカップ麺を食べることが出来ているのかいないのか、というふざけた内容のゲームだ。もちろんソロプレイ。


生の実感。幸福感の報酬としてカップ麺をズルズルと啜るスリルあるルルるな遊び。こちらとしては唆る要素なしの凡人の嗜みであるが、田中にとってはルーティンそのものである。



pm3:00


「さてと、今日も見ましょうかねぇ〜3分後の俺の微笑みを!」


と強く意気込み、行動に移した俺。

いつも通りの行動。いつも通りの光景で"ある"はずだったモノはなく、とてつもなく暗くて眩しい。そして唐突に身体が浮き始め、その煌びやかな暗闇へと誘われてゆく。


こんな経験は初めてだ。能力の故障か?崩壊か?それとも世界の終わりか?段々とスケールがデカくなり思考が停止する。そう、これはきっと夢だ。そもそも、3分後の光景が見えるなんて現実的にあり得ないわけで。


最初から夢だったんだ。俺、田中には原作者がいてそのストーリーが打ち切られそうになっている。都合の良い短編の断片として扱われ、ボロボロになってら捨てられる。会社でもそうだったしな…。


たとえ現実でも。悔いはないさ。嘘、最後にカップ麺味噌カレータンタン風味を食べて終われたら……


チーン。ターン。チーン。


俺は味噌カレータンタンだ。思い出したんだ、全てを。頭上にいるのはおそらく「神」と言う存在なのだろう。光の中に闇が広がり、その闇の中に光が差し込んでいる。


頭上を見つめること、数十秒。体は宙に浮き、その光と闇に吸い込まれてゆく。


「これで終わるのか。俺の生は…せめて……せめて3分前に戻れる魔法があれば……」


「その願い……聞き届けた」

神は言った。地の文の神は言った。3分前に戻してやると。



pm3:00

今日も今日とて、田中はゲームに勤しむのだ。

BAD END




「ってなかんじの映画を作ろうって思ってるんよ!絶対ヒットするって!ね!」

そう豪語するのは自称脚本家の"中田二郎"。映画同好会のリーダーだ。


「いや、どこが。支離滅裂で華がない。以上。つまんないよ、素直に」

と苦言を呈しているのが、"矢上信夫"。二郎の親友であり、映画同好会のメンバーの一人だ……まぁ、メンバーは一人しかいないのだけれど……。


中田「ちっ、なんだよ。絶対バズると思うんだけどなぁ〜これぐらいのインパクトがないと食いつかんべよ、矢上ぃ」


矢上「ネジぶっ飛びすぎ、こんなんじゃ作品になんないって。まず、文章構成が下手。下手っぴさ。そこから直さないとなぁ…それに…」


中田「あー、うるさいうるさい!!!くぁ〜腹減った…って12時25分!やべぇ、購買のカップ麺無くなっちまう!」


中田はそう言うと廊下に飛び出して行った。


矢上「ちょっ………はぁ……人の話ぐらい聞けよ………最後の会話がこんなしょーもないので終わるなんてな…ははっ」




pm12:28



世界は滅亡した。


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