トイレの花子さんがこんなおっさんの理由はねえ!
なんで俺はこんな所に居るんだ?
なーんて、現実逃避している場合じゃなかった!
や.ば.い…!完全にやばい!
俺は今の自分の姿を見下ろす。
白いブラウスに膝丈の真っ赤なスカートに白い靴下に女児用の校内履き…誰かに見られたら通報案件だろ!
しかもここ…
「早く、早く早く行って帰ろう」
パタパタと言う2つの足音とともに近付いてくる可愛らしい2つの声。慌てた俺は端から3番目のドアの中に隠れた。
「く、来るんじゃね〜ぞ!」
両手を胸の前で組んでいるのか分からない神に祈る。
しかしそれを人はフラグと言う。やはりその祈りも虚しく足音は俺の隠れたドアの少し前で止まりゆっくりとその内の1人がドアの前に立つと【コンコンコン】3度ノックした。
「は、花子さんいらっしゃいますか?」
少女の声に息を詰めていた俺の口が勝手に言葉を紡いだ。
「はーい」
思った以上に野太い声が出た。
「ひっ、で、でた!」
「ギャァァァ」
声を聞いて逃げ出した少女達。そりゃそうだろトイレの中からオッサンの声が返ってきたんだから。って、どうして返事した俺?
花子さんって?
それよりも早くここから逃げないと…
トイレの個室から出てせめて女子トイレでなく男子トイレに移動しようと個室を出た俺は手洗い場の鏡に映った自分自身の姿に呆然とする。
鏡からははみ出ているがおかっぱ頭に40才過ぎた見慣れた俺の顔。白いプラスに赤い吊りスカート…
どこから見ても変態じゃねーか!
男子トイレで見つかってもやばくないか?この格好。
そう言えばさっきの子が「花子さん」とか言ってなかったか?
気が付けばいつの間にか俺はトイレの花子さん(仮)になってた。
妖怪になるにしてももう少しTPOとか考えても良くなかったか?それともこれは俺の深層心理に…ないな。うんないわ。