牛の首
カランカラン。
背後で大きな音がした。
草原でお弁当をぱくついていた俺たちは、ぎえ、とかうわ、とか言って散り散りに走った。
「俺の〜、俺のサンドイッチぃ」
「まあ、諦めろ」
牛の放牧してるなー、とは言ってたんだ。たしかに。でも襲撃されるとは思わなかった。
カウベルの音に振り向くと、そそり立つ牛の巨体。あんなにデカいとは思わなんだ。
「牛の……首を……絞って……」
「なんだって?よく聞こえなかったが?!」
「弁当を取り返そうぜ」
「もう全部食われたのにどうやって?」
友人たちは、一頭の乳牛を数人がかりで押さえ込んだ。
「牛のっ!首を!」
「首を押さえるのか?」
冗談じゃない。顔がドアップだぜ。
「違う!牛の乳首を搾れ!」
「バケツもなんにもないぞ」
「直に飲むんだ」
「なんてこったい」
チーズみたいに濃厚なミルク。
俺たちは代わる代わる牛の乳首を搾った。
「よし、いけ!」
牛の尻を叩いて追いやった。
ぐるるるる、ぎゅるるるる。
「腹の調子が……」
周りは草原でトイレはない。
俺たちは集団で腹を下した。