第64話 ここだけの話にしてくださいよ?
ウスノースの街にあるギルドの一つ『戦神の槍』、そこでジェーンさんは冒険者登録をした。まだ合流してはいないが、どうやら登録に問題はないようで現在講習中だそうだ。俺と新さんは二手に分かれ、新さんはジェーンさんの付き添い、俺は戦利品の売却を担当した。しかし、盗賊関連だというと報告しろと忠告を受けた。ドルノースじゃ何も聞かずに買い取ってくれたんだけどなあ?
「そういうことで、盗賊の報告に来ました」
「またお前か。そういうことってどういうことだ?」
わざわざ北門の衛兵隊詰め所に戻ってきましたが、ラノベ的言い回しは通じませんでした。しょぼ~ん……
では、やり直しましょう。
「いや~。実はこの街に来る途中、また盗賊に襲われたんですよ。言うの忘れてました。ギルドで報告したらここにも報告して来いって怒られちゃいまして……」
「何だと! 何故言わなかった! 場所は! 規模は! 被害はなかったか!?」
「ちょ、ちょっと待ってください。ちゃんと報告しますから。でもですね、場所がドルノース寄りなんですよ。野営地あるでしょ? そことドルノースの中間地点からさらにドルノース側でしたね。だからウスノースで報告しなくてもいいのかなあ、って思っちゃいまして……」
「う……ドルノース寄りか……逃げられたならドルノースには報告したんだろうな?」
「いえ? 全滅させて、そのままここに来ましたけど?」
「そ、そうなのか……全滅……じゃ、じゃあ盗賊の規模が小さくて被害は出なかったわけだな。被害があったら、さすがに報告は忘れんだろうからな」
「ええ、まあ。30人程度だったんで大したことなかったですから」
「さん……ちょ、ちょっと待て! 何だ30人て! ふざけてんのか!」
「いえ? ちゃんと埋めといたんで数に間違いはないと思いますよ?」
「そうじゃねえよ! お前ら男二人と女一人だったよな!? それでなんで30人の盗賊相手にできるんだよ! それとも何か? ギルドの討伐隊が一緒だったのか?」
しまった! そんな気はなかったが、『ぼくなんかやっちゃいました?』パターンか?
でも前回も前々回も似たような規模だったし、こっちの戦力もカマロたち4人がプラスされてただけなんだけどなあ? それとも商隊だっだからその人数すべてが戦力だと思ってるのかな?
わからん。ここは正直に聞こう。
「あの~? 3人だと何か問題ですか?」
「何かって、信じられねえって言ってんだよ! 証拠は! 本当に盗賊だったんだろうな!」
「そう言われても……襲われたから返り討ちにしてやっただけで……」
「ちょっと来い! 俺じゃ判断できん!」
門番さんに詰め所の中に引っ張りこまれた。
そして隊長のケージンさんとご対面。どうやら門番さんは丸投げしたようだ。
ケージン隊長は『久しぶりだな!』とにこやかに歓迎してくれた。
そして再開する説明。もう! 門番さん丸投げしたからもう一度始めっからになっちゃったよ!
まあ、そこまで長い話じゃないからいいけどさ。
聞き終わったケージン隊長は『ご苦労さん。それよりも……』とアッサリと話を終わらせてしまった。
門番さんと全く対応が違うのでなんとなく不安になり、思わず話を戻してしまう。
「あの、そんな簡単に信じていいんですか? あの装置を使うとかは?」
「ん? ああ。別に構わん。あの装置はウソを調べるモンじゃないし、お前たち二人なら盗賊30人ぐらい余裕だろ? 魔石の無駄だ。それに、ドルノースには通告しておくから、確認は向こうの仕事だ。ま、被害無しっていうんなら、俺なら報告書に書くだけにするがな」
何か拍子抜け。っていうか、もともとこんな対応だと思ってたところに門番さんが大袈裟すぎたんだよ。
「そ、そうですか。じゃあ、俺はこれで……」
「まあ待てよ」
うん。引き止められたね。さっきも何か言いかけてたから。
「お前たち、ウスノースに来たのはあれか? アークノ商会の件か? あれから色々出て来て大変なんだ。賠償金に関しちゃ支払いはもうしばらく後になっちまうな。詳しくは中央の役人に聞いてくれ」
「ああ。その件ですか。興味ないこともないですけど、今回はノータッチですので聞かなかったことにします」
「ん? そのために来たんじゃないのか?」
「ええ。言ってませんでしたっけ? 俺たち旅の途中だったんです。あの時は縁あって護衛の依頼を引き受けただけです。済し崩しに最近まで続けてましたけど、円満退職してきました。これで旅が再開できます」
「……そうだったのか……ハーベスト商会だったか? あそこもお前らみたいな腕利きに抜けられて大変だろうな。報復とかは大丈夫なのか?」
「……ケージンさんだから教えますけど、ここだけの話にしてくださいよ?」
「おう。俺が罪に問われない話なら黙っててやるぞ?」
『いつか言ってみたいセリフ』のトップテンに入るか入らないか微妙なところだが、少なくとも俺が現代日本で普通に生活していたら一生使わないだろうセリフを言ってみた。
対して、隊長さんは言われ慣れてるのか、すぐに乗ってくる。
どうやら冗談だとは言ってはいけない空気。
人様の家庭事情を他人に告げるのは気が引けるが、隊長さんはアマンダさんとともにアークノ商会に乗り込んだ当事者だ。しかも、管轄は違えど衛兵である。必要があれば自分でいくらでも調べられるだろう。なら概要ぐらい伝えてもいいかもしれない。というか、詳細は俺も知らないけどね!
「実はですね、ドルノースの領主サマって方にコンタクトできたらしくって、犯罪ギルドとは手打ちになったみたいですよ」
「ほう。領主様ねえ? 向こうじゃそこまで大事になったか」
「あ、いえ。大事にしないための領主サマだと思いますよ。詳しくは知らないですけど、ハーベスト商会の名前は出さずに、あくまでもアークノ商会が依頼をキャンセルしたってことにしたみたいです。違約金がいくらで、実際に誰が払うのかまでは聞いてないですけど」
「なるほどな、そういうことか。考えてみりゃ当たり前だな。下っ端はともかく、犯罪ギルドとの全面対決はお貴族様にとっても都合が悪いからな。神殿に訴えられない程度に、穏便に、なかったことにするのが一番か」
「……やっぱり貴族は犯罪ギルドと繋がってるんですか?」
「……大きな声じゃ言えないがな。それでもあの装置が世に出てからは随分マシになったな。神殿ほど詳しく罪状は出てこないが、何てったって神殿のお墨付きだ。言い逃れはできねえ。即処刑してもいいし、強制的に捜査して芋づる式に関係者を捕まえてもいい。ま、貴族どもは即時処刑を指示してくるから、なかなかな」
「噂で聞いたんですけど、国民全員を調べるんだとか」
「そういうお告げがあったらしいな。だがそう上手くはいかねえだろうよ。罪を自覚してる貴族どもは何だかんだ理由を付けて自分たちを後回しにさせてるし、実際スラムなんかでの判別作業も行き詰ってる状態だ。それを無視して先に貴族を、とは誰も言えねえよ」
ドルノースの衛兵隊からもちょっと話を聞いたが、どうやらこの世界は犯罪者識別装置運用の過渡期のようだ。ラノベではよくあるシチュエーションなのだが、そういうラノベの世界でも貴族はやりたい放題だったし、闇ギルドなんかも暗躍していた。完全な理想郷はないということだろうか。この世界では今後どうなるのかね? 神殿にお告げがあったってことは、あのクソ代表神たちが何か画策してるってことだろ? とても理想郷のためにとは思えないんだけどな。
数十年だか数百年ごとの魔物の氾濫で文明の発展をコントロールしてるって神爺さんがネタばらししてくれたけど、それと関係あるのかな?
わからん。
とにかく、俺たちは地球に帰るそのときまで生き延びるぞ!
【作者からのお願い】
「面白かった」「続きが読みたい」と思われた方は下記にある【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。




