第63話 通報の義務があったらしい
第一関門、衛兵隊の『犯罪者識別装置』を突破したジェーンさんは、現在第二関門であるギルド登録の最中だ。来る者拒まずと聞いてるけど、戦闘能力皆無だからなあ。
ウスノースの街にある冒険者ギルド『戦神の槍』、そこの買い取りコーナーで少しハッチャケてみました。といっても一度に大量の武器・防具・その他を出しただけだよ。30人規模の盗賊だ。街を逃げ出す計画もあったようなので結構な荷物を抱えていたんだ。ソイツらから容赦なく剥ぎ取ったね。下着以外すべて。新さんが斬りまくって血塗れになったのも《クリーン》の魔法で新品同様。ま、元からボロだったし、バッサリいってるのも多いので買い叩かれても仕方がない。数で勝負だ。在庫一斉処分だ。
「……武器やら防具はともかくよぉ、それ以外は服屋とか道具屋に売った方がいいんじゃねえか?」
「伝がない。探すのも面倒だから引き取ってくれ。ダメなら道具屋紹介してくれ。出来れば今日中に買い取ってもらえるところで頼む」
「うーん。しゃあねえ。こっちで引き取ってやる。だが、安いぞ?」
「かまわない。そんなに差はないだろ? 掘り出しモノがあるわけじゃなし」
実は魔道具が数点あったが、それは自分たちで使えるかもと思って買取には出していない。新さんのために良さそうな剣も取ってある。ここに出したのはマジで処分品なのだ。手間をかけたくない。
「違いねえ。で? コレの出所は?」
「出所ってほど大したことじゃない。盗賊を返り討ちにした戦利品だ」
買取のオッサンは査定しながら世間話のように聞いてくる。俺も、疚しいことなどジェーンさん関連及び神サマ関連ぐらいしかないので、正直に答えてやった。
「おいおい。どんだけデカイ盗賊団だよ」
「30人ぐらいだ。大した数じゃない」
「大した数だろうが! お前、報告はしたんだろうな?」
「報告って、どこによ? ここのギルドの依頼を受けたわけじゃないし、第一、ドルノース近くで襲われたんだ。この街には関係ないんじゃないか?」
「ドルノースか……いや、ドルノースなら無関係とはいかねえ。それに、これだけの数がいっぺんに買い取りに出されたら問題視される。あとでうるさく言われる前に報告しとけ」
「えー? 面倒。あ、おっさんに今報告したじゃん」
「バカ言うな。ここは買取だ。悪いことは言わねえ、誰か職員捕まえて報告しといた方が身のためだ」
「……わかった。あとでそうしとくよ」
「よし。こっちも終わりだ。〆て金貨35枚と大銀貨4枚だ。端数はオマケして切り上げてやったぞ。感謝しろよ」
「税金はどうなってる?」
結構な額になったな。でも、どうせ買い叩かれてるんだから切り上げ云々は無視した。それよりも税金対策だ。
「お前さん、ウチの会員じゃねえだろ? カード次第だな。提携してたら15%、それ以外なら20%、カード無しなら50%だ。なんならウチのギルドに入るか? 支払いは待ってやるぜ?」
そういえばウスノースのギルドで聞いたな。というか提携先だからここのギルドに来たんだよな。
えーと、金貨20枚の収入と仮定すると、所属ギルドなら金貨2枚、提携ギルドなら金貨3枚の税金が取られることになる。ギルドの移籍金と入会金が同じ金貨1枚であれば、金貨20枚以上の収入があれば移籍した方がお得というわけだ。手続きの面倒臭さは置いといてだけど。
でも、処分品のつもりだったし、銅貨1枚2枚で躍起になる気はしない。
とはいうものの、金貨35枚か……5%の差ってことは金貨1枚と大銀貨7枚プラスアルファだな。うーん、入会費除いても日本円にして7万ぐらいか。無視するのは庶民代表としては辛いものがあるな。
俺と新さん二人が入会金払ったら逆に足が出る。この街で冒険者活動するならそれでもいいんだが、早々に出ていく予定だ。移籍は一人分でいいかな?
「……じゃあ、お言葉に甘えて、手続きしてくるから待っててくれ……あっ!」
「どうした?」
「いや、そういえば仲間が先に手続きしてたんだ。終わったら取りに来させるよ」
「なんでい。そうだったのかよ。それなら早く言えってんだ」
「悪い、悪い。俺もここまで買取値が高くなるとは思わなくて、仲間が手続きしてるの忘れてたんだよ」
仲間とは言ったが、実はジェーンさんのことだ。
ここのギルドの会員になったのなら買い取りは任せればいい。俺と新さんの移籍金を支払わなくても済み、見事な節約術だ。
これで買取の方は目処がついた。おっさんにまた来ると一言挨拶してから移動する。おっさんに言われていた盗賊の報告だ。
一階フロアは依頼関連なのでスルー。混んでるしな。
その他の手続き関連は、ドルノースと同じく2階にある。さすが兄弟ギルド。
「すみません、パーティーメンバーの男女二人、来てませんか? 男の方はこんな風に頭に布巻いてるヤツです」
2階に来ても新さんたちの姿を見かけなかったので職員に聞いてみた。いや、ナビさんに頼めば探してくれるだろうけど、大袈裟だよね?
「ああ、あの二人でしたら講習中です。厳密には一人が、ですけど」
俺の頭の布を見て、職員の女性が答えてくれた。目論見どおり同じパーティーだと認識してくれたようだ。
「ということは、ジェーンは問題なく登録できたってことですね? よかった」
「ええ。レベルに不安がありましたが、パーティーなら問題ないと判断しました。それよりもこんな時間に講習を申し込まれても……いえ、確かに業務時間内ですけど、通常は午前中か、事前に予約しておくものですよ? お仲間の人、ちょっと強引じゃありませんか?」
「あはは。それは失礼しました。できれば明日の朝から活動したくて。それより、買取のおっさんから言われて報告に来たんですけど」
職員のおねーさん、ちょっとお怒りだ。新さんたら、ジェーンさんの講習を捻じ込んだのはグッジョブだけど、一体どんな手を使ったんだ? その皺寄せが俺に?
笑って誤魔化そう。盗賊の件もこうなるとナイスタイミングだ。おっさん、ありがとう!
「報告ですか? 買取で何か問題でも?」
「いや、盗賊から押収したものを買い取りに出したら報告してこいって言われたもので……」
「盗賊ですか。討伐の依頼を受けた……というのではなさそうですね。詳しく教えてもらえますか?」
「はいはい」
そんなわけで、おねーさんに説明する。場所、時間、人数、そして戦利品。
ドルノースでの、ハーベスト商会絡みについては秘匿した。手打ちしたんだし、領主も関わってるみたいだからな。
ただし、『以前とある商家の護衛中盗賊を倒したことがある。今回護衛の仕事ではないが少数で移動していたので報復ついでに襲われた可能性もある』とボカして伝えた。ギルドが調べようと思えば、ウスノースではアークノ商会の事件もあったので、簡単に調べられるだろう。俺の口から背後関係まで教えてやる必要はない。大体証拠はないからな。
「何か証拠になるようなものは……」
「ないな。戦利品の武器やら何やらだけだ。死体は埋めた。場所は伝えたとおりだ。自分たちで確認してくれ。俺たちは御免だがな」
「せめて首だけでも持ってきてもらえたらよかったんですが……奨金が出たかもしれませんよ?」
「そんな物持ち歩きたくない。賞金もいらない。かかる火の粉を払っただけだ」
「で、では、カードか何か、盗賊の身元を証明するものはなかったですか?」
「盗賊のカードなんてあるのか? いや、何枚か見たな。でも、本人のものか盗品かわからないし、持ち歩いて誤解されるのも嫌だったから死体と一緒に埋めたぞ?」
その後、衛兵に報告したのかと確認され、してないと答えると頭を抱えられた。
どうやら護衛の依頼を受けていなくとも通報の義務があったらしい。そんなこと講習で言ってたかなあ?
すぐに行ってこいと言われたので仕方なくギルドを後にした。
ジェーンさんの講習が終わる前に戻ってこれるかなあ?
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