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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第62話 買取は数だよ、兄貴!


 ジェーンさんの説得? に成功した。いや、悪いとは思ってるけど、ポッと出の異世界人に正義の味方のマネごとは無理です。そんな勇者的行動はクソ代表神どもの思うツボじゃないか。断固拒否する! そんな感じで、ジェーンさんには泣き寝入りしてもらうことになりました。ごめんね、情けない元勇者候補兼魔王候補で。これもそれもクソ代表神が悪いんだ!



「身元を証明するものはあるか? ん? お前は確かこの前の……」


「あ、どうも。また来ました」


 ウスノースの北門で軽い審査を受ける。『街』と呼ばれるレベルになるとどこもこんなものらしい。by神爺さん&ナビさん。農村レベルだとケースバイケース。魔物対策に力を入れるか不審者対策を重要視するか、いろいろ有るそうだ。

 それはともかく、門番役の衛兵さん、俺と新さんのこと覚えてたみたい。まあ、アークノ商会の捕り物は結構な騒ぎになったし、一時的に衛兵の真似事もしたしな。それに、俺と新さん、頭に手拭い巻いてるラーメン屋の兄ちゃんスタイルだ。目立つといえば目立つ。それでも新さんの月代? ちょんまげに比べれば何てことない。髪が伸びるまでは隠しておかなきゃな。ま、伸びても黒髪だから隠し続けた方がいい。だから俺も同じスタイルなんだ。当分はパーティーのキャラ作りってことにしておこう。


 俺と新さんは指示通りギルドカードを提示した。衛兵さんもしっかりと確認する。冒険者ギルド『戦神の剣』はウスノースにも営業登録してあるようで、すんなり入場が許された。なんと無税。いや、前回は隊長さんの手引きでこっそり入ったから知らなかったんだよ。どちらにしろハーベスト商会持ちだったんだろうけど。


 それより今の問題はジェーンさんである。


「そっちの女は? 新しいメンバーか? それとも護衛対象か?」


「いや~、ちょっと事情がありまして、身分証ないんですよ。この街のギルドで登録する予定ですので、今回は入場税とアレを使ってもらいたいんですよね」


「アレか。まあ、そういう決まりだからな。農村かスラムから逃げ出したってところか? こっちに入れ」


 この衛兵さん、この前俺たちが上司さんを言いくるめて『犯罪者識別装置』を持ち出したこと知ってるようだ。自然に会話してくれてるよ。


 ジェーンさんは、俺たちから装置の話を聞いてるし、取調べに対する自己申告内容も嘘ではないありふれたシチュエーションを皆で考えた。だけど、犯罪を犯したっていう自覚があるので不安で一杯なのだろう、オドオドしながら衛兵さんに従って門脇の詰め所に入っていく。大丈夫だと思うけどな~。

 さすがのナビさんも《透視》や《千里眼》で部屋の中を見れたりはしない。精々《気配察知》で魔力パターンや体調が判別できるくらいだ。まさかここで拷問とかはないだろう。連れ去りには注意しておくけど。


 しばらくしてジェーンさんが出てきた。《気配察知》でわかってたけど、五体満足である。しかし、精神的ダメージは大きかったようだ。いや、悪い意味じゃなくて、たぶん犯罪者と認定されなかったことで張り詰めてた神経が急に緩んだんじゃないかな。放心してる感じだ。


「な? 大丈夫だったろ?」


「は、はい……はい!」


 俺が太鼓判押すと、やっと現実に帰ってこれたようだ。急に元気になった。目元は潤んでたが。ま、ここでこれ以上詳しい話は出来ないから何も言わないが。

 身分証明無しの入場料はここでも金貨一枚だったようだ。盗賊たちから剥ぎ取った現金を持たせてたのでそれはもう支払い済みだ。

 これでやっと街に入れる。


 ウスノースの街は、おかしなことだが、ドルノースの街よりも詳しく知っている。アークノ商会事件で数日の待機を命じられていた時、護衛の仕事も人余りだったので交代で街に出歩いて暇を潰していたからだ。引き換えドルノースではムングルトさんの警護のため引き篭もり。食事も上げ膳据え膳で本当に一歩もお屋敷を出なかった。おかげで滞在期間は長かったものの一切観光ができなかったんだよ。


「ここ、ここ。泊まったことないけど、いい宿だってさ。カマロのオッサンが言ってた。今日はここに泊まろうぜ」


 ナビさんに頼らずとも案内できる。

 朝、早立ちしたとはいえウスノースに付いたのは大分日が傾いた頃だ。3時ぐらいかな? 夏だから昼時間が長いけどもうすぐ夜になる。その前に宿を決めて、それからギルドに行こう。


 カマロから教えてもらった宿はやっぱり冒険者御用達らしいが、その中でも高級な部類に入る。ほら、ラノベであるじゃん? 大部屋で雑魚寝ってヤツ。もしかしたら現代日本にもあるかもだけど、正直恐い。俺たち色々秘密あるし、特に今回はジェーンさんがいるからね。


 すんなり個室が三つ取れました。

 一応部屋を確かめて、夕食の時間を聞いてから外に出る。次はギルドだ。


 この世界のギルドは、ラノベでお馴染みの全世界で統一された巨大組織、というヤツではなく、どちらかというと現代日本にある派遣会社みたいなモノだ。小さな個人経営規模から大都市に支社をいくつも持つ大規模なモノもある。吸収合併もあるが、面白いのは『提携』というシステムで、旅する冒険者にとっては便利だろう。

 もっと面白いのは、そこの発行するギルドカードが国際的なパスポートとして機能する点だろう。実にファンタジーだ。まあ、国にとっては冒険者からの税金回収が簡単になるのでどうでもいいことかもしれないが。


 それはともかく、俺たちはウスノースにいくつかある冒険者ギルドの一つにやってきた。ギルド名は『戦神の槍』。名前でピンと来るが、『戦神の剣』の提携ギルドだ。なんでも、創業者は同じパーティーメンバーだったそうで、他の街に『戦神の○○』があるそうだ。ただし、遠くに行けば名前被りのギルドもあるので注意しろ、とのことである。そりゃそうだと思った。ネットで一元管理してるわけじゃなさそうなのでギルド名も自由なんだろう。


「こんちわ。買取と、あと新人の登録お願いします」


 夕方近くとあって、ぼちぼち冒険者たちが清算に戻って来ていてギルド内は少し混んでいた。それでも何とか職員を捕まえて来意を告げる。

 買取と登録は別の場所なので二手に分かれた。空間倉庫持ちの俺は当然買取担当(新さんも使えるけど、まだまだ小さい)。新さんにはジェーンさんの登録に付き添ってもらった。レベル10あるからギリギリ大丈夫だと思うけど、高レベル(偽装で32にダウン)の保証があればスムーズにいくと思う。


 ジェーンさんには、出来れば、お金はかかってもいいから、今日中に講習を受けさせておきたい。夜になっちゃうけど、それさえ抑えておけばこの街を出て行けるからな。ダメでも明日の朝講習を受けさせて午後には出発したいものだ。


 そんなことを考えながら買取の列に並ぶ。


「次の人」


「えーと、アイテムボックス持ちで、結構な量なんですが」


 やっと俺の番。

 アイテムボックスの申告に周りがざわついたが、そこはプロ、受付のおねーさんはすぐにバックヤード的なところに案内してくれた。

 お約束か何かなのか、裏の担当者はおっさんである。


「アイテムボックス持ちなんだって? 出してみろ」


 日本のサービス業ではクレーム必至の対応である。これも異世界あるあるだ。もう慣れたよ。


 リクエストにお応えして遠慮なく。ドサドサ! カウンターから零れました。おっさん呆然。これも異世界あるある、かな?


 ブツは盗賊からの戦利品。質より量です。買取は数だよ、兄貴!


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