表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
61/65

第61話 私、黙ってます


 犯罪ギルドの襲撃を退け、ジェーンさんを保護した。確保ではなく保護。バージョンアップしたナビさんの鑑定では犯罪者と看做されなかったからね。ムングルトさんも結果的に無事だったし、俺自身には遺恨はない。それよりも下手に自首でもされて事件が蒸し返されることの方が面倒。是非ともこのままフェードアウトしてほしいものだ。



「私、本当に黙ったままでいいんでしょうか?」


 ウスノースへ向かっている道中、少しずつジェーンさんとの距離も縮まり、休憩時には身の上話も聞いた。

 だが、あまり聞きたくない質問も投げかけられた。ちなみに一番聞きたくないワードは『神殿に何もかも訴えます』だ。ジェーンさんは加害者でもあるが誘拐、違法奴隷の被害者でもある。むしろ被害者の割合の方が大きいぐらいだ。被害者として神殿に助けを求めるというのなら誰がそれを止めることができるだろうか。幸いなのは神殿は莫大なお布施をしないと動いてくれないらしいということ。一般人がおいそれとは利用を考えることはないだろう。抜け道はあるようだが。


 ジェーンさんを神殿に行かせたくないのは、100%俺と新さんの都合である。クソな代表神どもに情報が伝わるかもしれない要素は極力排除したいところだ。

 さて、何といって神殿を回避させるべきだろうか?


「それは難しい問題だな。だが、他人の俺たちがとやかく言うべきではないと思う」


「でも……」


「だが、アドバイスくらいならできると思う。他人と意見を交わすだけでも考えが広がるしな。それに、ハーベスト商会については俺たちも無関係ってわけじゃないし」


「そ、そうでしたね……」


 ブレイン・ストリーミングだっけ? ブレイン・ウォッシュじゃないよな?


「新さん、何か意見はないか?」


 新さんはジェーンさんの処遇を俺に丸投げしてきたが、こういうのは意見が多い方がいい。


「では、某から一つ申し上げよう。ジェーン殿、この世には理不尽なことなど掃いて捨てるほどあるでござる。それに正面から立ち向かうか、それともやり過ごすか、どちらを選んでも苦難の道でござろう。しかし、敢えて言うならば、やり過ごせば少なくとも命は助かる。子孫を残す機会もあろう。斯く言う某はやり過ごしたことで生き延びられ、こうしてケント殿という素晴らしき仲間に巡り会えたのだ。死こそ安易な逃げでござる。将来に望みをかけるのであれば一時の理不尽など捨て置くがよかろう」


 おっと、丸投げした割に奥の深い意見が出てきたぞ? つーか、よくわからん。急に褒められた気もするが反応に困る。

 ジェーンさんもよくわかってない表情だ。《言語理解Ⅸ》仕事してんだろうな?


「えーと、ジェーンさんは具体的にどうしたいとかある? 例えば犯罪ギルドを壊滅させたいとか、それとも、誘拐の犯人だけは捕まえたいとか」


「……自分でもわかりません……」


 そりゃそうだ。現代日本でも判断は分かれるだろう。むしろ泣き寝入りする確率が高いんじゃないかな? 刑事ドラマで出てくる証人保護プログラムみたいな制度があって、戸籍も変え、整形までして身元を隠せるとしても犯罪組織に立ち向かうのは恐いと思う人は多いはず。国がどこまで本気で守ってくれるか信頼の問題もあるしな。


「そっか。じゃあさ、わかるまで保留したら? 自分が殺されてもアイツらを断罪したいとかまで考えてるわけじゃないんだろ?」


「そこまでは……」


「ああ、よかった。もしそうだったらとても付き合いきれないからな。アイツらゴキブリみたいに湧いてくるから単なる正義感からじゃキリがないぞ? それに、恨みを晴らすだけっていっても、相手をどうやって探す? ギルドに依頼しても金はかかるし見つかる保証もない。神殿は確実かもしれないけどもっともっと金がかかる。それで本当に恨みが晴れるのか?」


「…………」


 ジェーンさんは黙って考えている。

 神殿が無意味だっていうところに気付いてくれたかな?


「それから、別の問題もある。ジェーンさんが衛兵や神殿に訴えたり、ギルドで誘拐犯の捜索を依頼したりすれば当然犯罪ギルドにジェーンさんの情報が流れる。しばらくは衛兵隊や神殿が保護してくれるかもしれないけど、一生ってのはありえない。一人になったところで襲われるだろうな」


 これは脅してるわけじゃない。かなり高確率の推測だ。

 ジェーンさんも、想像してしまったのか、ブルリと身体を震わせていた。


「それに、ハーベスト商会のこともある」


 ハーベスト商会の名前が出る度にジェーンさん、ドキッとした表情になるんだよな。でも仕方がない。


「あそこはもう犯罪ギルドと手打ちをしたんだ。仮初の平和だろうけど、今は波風を立てたくない。今更ジェーンさんに出てこられても困るだろうな」


「そ、そうですよね。私なんか名乗り出ても迷惑ですよね……」


「そ、そうなんだよ。だから、どうしても犯罪ギルドが許せないっていうんじゃなければ、ハーベスト商会のためにもそっとしててほしいな、なんて思ったりなんかしちゃって……」


「わかりました。私、黙ってます」


「え? 保留でいいんだよ? 今決めなくても……」


「いえ、いいんです。ハーベスト商会にこれ以上迷惑をかけたくありませんし、それに、組織から逃げ回ってる身ですから、目立っちゃダメですもんね」


「目立っちゃダメってところには賛成だ。今後どうしたいかはともかく、決める前に犯罪ギルドに見つかったら折角奴隷から解放された意味がなくなるからな」


「はい。そうします」


 かなり思考誘導が効いたみたいだ。ちょっと罪悪感。

 でも、現代日本なら、警察がダメでも弁護士などに相談はできる。こっちの世界はなあ……誰かに相談したら速攻で情報が流れる未来しか見えない。偏見じゃないと思う。戦国時代もそうらしいけど、自己責任の割合が大きすぎるよね? 

 ジェーンさんにはこれからの将来犯罪ギルドと関わらず幸せになってもらいたいものだ。


 ちょっと休憩するつもりだけだったのに結構時間を取ってしまった。

 俺たちは慌ててウスノースの街に急ぐ。犯罪ギルドの別働隊がいないとは限らないからな。


 ジェーンさんに歩きながら更に話を聞いた。

 俺たちより体力が低いのでペースがきつそうだったけど、真面目に答えてくれる。

 それによると、今回の襲撃は突然連れてこられたそうだ。正式な組織のメンバーではなくあくまでも奴隷なんだから事前の相談や連絡はないんだろう。

 なんでも、ハーベスト商会のお屋敷で俺たちの顔を見ていたことで本人確認のため連れてこられたんだと。それで、この襲撃のあとそのままドルノースを離れ別の街に移動する予定だったとか。そりゃ、実行犯であるジェーンさんの名前と顔が知られてるんだから衛兵隊もそのうち嗅ぎ付けるだろうさ。後は芋蔓式。その前に逃がそうって魂胆だな。割と普通。口封じされなかったのは単にジェーンさんが奴隷という商品だったからで、もし切羽詰ったら簡単に殺されちゃうんじゃないかな?

 逃げられて良かったよ。

 いや、奴隷から解放されたのが幸運だったのか? 

 これで所有者が他にいて今も奴隷のままだったらどうしたものか。衛兵に引き渡すわけにも行かないし、神殿なんか以ての外だ。この手で口封じ? 俺が犯罪者になっちゃうよ!


 あ、ちょっとナビさんに確認……おお! 何だよ! 俺でも奴隷解放できるじゃん! 《闇属性魔法》のレベルは低いけど《無属性魔法Ⅹ》でゴリ押しできるってさ! 神爺さん、ありがとう!


 今度違法奴隷に出会ったとき、選択肢が増えるのはいいことだ。


 少し気分が上向きになったところでウスノースの街が見えてきた。

 さあ、この街では何も問題ないといいなあ。あれ? フラグ?



【作者からのお願い】

「面白かった」「続きが読みたい」と思われた方は下記にある【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ