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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第60話 異世界の一般人は戦国武士の新さんと同じ体力である

ペースダウンしました。

週一投稿になります。


 違法奴隷から解放されたジェーンさん。《鑑定》では犯罪称号がないのはわかってるけど、それを隠しているので、次の街・ウスノースで確かめに行くことに。荒野に放置していくことは出来ないので旅の仲間に入れることになりました。



 盗賊の襲撃とジェーンさんへの尋問? に結構時間がかかり、結局旅の一日目は中間の野営場所までとなりました。俺と新さん二人なら頑張れば一日でウスノースに着けたんだけどね。


「すみません。いただきます」


 ジェーンさんに俺特製のスープを渡す。

 空間倉庫には時間遅延の機能が付与してあるので生肉も葉野菜も数日は持つ。カモフラージュとして干し肉や保存食も用意してあるけど、できれば使いたくはないな。


 野営地では食事が終わればすることは見張り以外はない。ジェーンさんにはテントを使ってもらって俺たちは交代で見張りをやろう。ここら辺は内陸の気候らしく、梅雨も台風もないらしい。地球温暖化もヒートアイランド現象もないようなので、夏でも日本よりは過ごしやすい。毛布があれば野宿でも平気平気。うわ、俺ってば、いつの間にかワイルドになってんじゃん。


 ジェーンさんは、見張りもせずテントを独り占めすることを気にしてたが、『信用できないから』と偽善ならぬ偽悪的に説得したら素直にテントに入ってくれた。今は馴れ合うよりも程々の距離を置いてくれた方がいいからね。


 それに、信用できないのは本心だ。ただし、人格面じゃなくて技術面でだけど。ジェーンさんってスパイやらされてた割りに、そっち方面の《隠蔽》とか《気配察知》とか《暗殺者》みたいなスキルは一つも持ってなかったよ。たぶん犯罪ギルドからの繋ぎ役の人がそっち方面のプロで、ジェーンさんは言われたことをしてただけじゃないかな? アマンダさんのところだって極普通の商家なんだからプロのスパイじゃなくても情報は抜くことができたんだろう。

 そんな冒険者としても経験のないジェーンさんに見張りを任せるなんて危険だ。これからはナビさんをフル活用することを決めたんだから、大いに役立ってもらう。たとえ俺と新さんが居眠りをしても自動で《気配察知》が反応して教えてくれる設定だ。ナビさんをスキルとして許可してくれた神爺さんに感謝だな。


 こうして旅の一日目は終わった。

 二人で交代で見張りをするのは辛かったが、異世界召喚されたばかりの頃数日は荒野で二人で野宿していたのだ。装備も食料もある現状は天国といっていいぐらいだ。大袈裟かな?


 あ、装備といえば、テントもう一つ買っておこう。まさか同行者が増えるとは思わなかったので、カマロたちにもらった一張りしか持ってなかった。俺と新さん二人だけならそれでも足りるからな。新さんも空間倉庫使えるようになったし、便利なものはキープだ。アレだな、アイテムボックスで一軒家を持ち歩くラノベの主人公の気持ちがよくわかる気がしてきたな。


 そんなことを考えながら朝食作り。周りは真っ暗だが、ナビさんによるともうすぐ明け方らしい。


 お、確かに明るくなってきた。二人を起こしてご飯食べて早めに出発しようか。


「お、おはようございます。何かお手伝いしましょうか?」


「いや、早く出発したいから食べちゃって」


 会話も事務的に。これは、できるだけ早くドルノースから離れたいと告げているし、その気持ちはジェーンさんのほうが強いかもしれないので納得してくれた。それに、ジェーンさんは俺たちがハーベスト商会に雇われていたことを知っている。今同行しているのはウスノースでジェーンさんが犯罪者かどうか確かめるためと理解しているので、それまでは指示に従うつもりのようだ。


 三人で俺特製の麦粥を掻き込むように食べる。

 そして、早立ちはするが、周りで野営している人たちに変に思われない程度に落ち着いて行動するように心がけた。


「ジェーンさん。辛くなったらすぐに教えてください。無理して歩けなくなると逆に困るので」


「は、はい」


 歩きながらではあるがジェーンさんに指示する。

 ジェーンさんのレベルは10だ。これは、『このゴミめ!』と野菜人のハゲに馬鹿にされそうな、元々の俺の倍の数値だ。神爺さんとナビさん情報によると、冒険者など戦闘に関わる職業以外の成人の平均だそうで、いかにインドア高校生が軟弱なのかわかるというもの。逆にいうと異世界の一般人は戦国武士の新さんと同じ体力であるという事実。恐ろしい。


 なので、昨日もジェーンさんは野営地まで俺たちについてこれた。

 だが、今日はもう少しペースを上げるつもりだ。俺がレベル32で新さんが40である。ま、ジェーンさんの様子を見ながらだな。


 自分の境遇がわかっているらしく、ジェーンさんは黙々と歩き続けた。

 たまに休憩を入れる。俺も鬼じゃないからな。

 休憩中まで黙っているのも精神的に辛いので、さりげなく《治癒魔法》をかけてやりながら話しかけてみる。主に話題は犯罪者と判別されなかったら今後どうするか、についてだ。神殿に直訴するとか言われると困るので予定は知っておきたい。


「そうですね。実家に帰りたいですが、私が逃げたことがバレて組織が探そうとするなら実家に迷惑がかかるかもしれません。やっぱり帰れませんね」


「それは……」


 神殿の話題が出なかったのはいいが、ジェーンさんの選択は結構身に詰まされるものだった。帰りたいのに帰れない、俺と新さんは思わず口篭ってしまう。


「あ、そこまで悲惨な話じゃないですよ? もともと家を追い出された身ですから」


「え?」


 ジェーンさんの身の上というのはこうだった。

 ジェーンさんの実家はこの国(ミルガファーン王国・ほぼ忘れていた)の王都近郊の農村で農業をしていて、子沢山だそうだ。家は長男が継ぐが、次男以下は小作人扱いになるか家を出て行くかの二択、女は嫁に行くという選択肢が加わるが、相手もまた農家らしい。

 ジェーンさんは家を出ることを選択した。

 追い出されたといっても嫌われてとかじゃなかったようである。


 新さんは話を聞いてすぐに納得した感じであったが、俺は、意味はわかるがピンと来ない感じだ。現代日本はモラトリアムが長いし、俺の親はサラリーマンだし、家業といわれてもな。就職はしても実家に居座る人たちもいるって聞くから、成人と同時に家を追い出されるってキビシすぎないか? それとも現代日本人が甘えすぎなのかな? うん、多分後者だ。


 それはともかく、ジェーさん、成人してすぐ王都に向かったそうだ。そしてその道中、人攫い専門の盗賊に襲われたらしい。

 攫われてから3年になるが、もしかしたら実家はジェーンさんが攫われたことすら知らないだろうという。

 俺はそんなバカなと思ったが、農村から出て行った人間の扱いはそんなものらしい。新さんも『さもあらん』とか言ってるし、マジか?


「だから、お二人はそこまで心配しないでください。3年も経っちゃいましたけど、元に戻っただけです。どこか遠くに行って娼婦でも何でもして生きて見せます。あ、捕まるかもしれないんですよね?」


 ジェーンさんは結構前向きだ。盗賊を倒した直後はオドオドしてたんだけど、違法奴隷から解放されたことを実感し始めてるのかな?


「たぶん捕まらないと思う。奴隷に決定権はないから。命じた人間の責任だよ」


「そうですか……でも、たとえ捕まらなかったとしても、このまま組織のことを黙っててもいいんでしょうか?」


 難しい質問キター!


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