第57話 確認するが、あなたは盗賊の一味か?
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ハーベスト商会と犯罪ギルドの手打ちが決まった。ま、非公式だけどね。それでも俺たちの懸念した神殿の介入は防ぐことができたので結果オーライである。これで円満退職? といきたいところなのに、ドルノースの街を出てわずか数時間で盗賊に襲われた。テンプレ? いいえ、計画的犯行のようです。まったく。犯罪ギルドだって客商売なんだから、信用を大切にした方がいいよ?
「死ねえええっ!!!! ぎゃーっ!」
前方と左右から二十人ぐらいに囲まれた。後ろからも十人ほど追ってくる。逃がすつもりはないようだ。
人数の多い前方は新さんに任せて、俺は後ろを担当しよう。人を殺すことについては、まだまだ忌避感がある。それはいい。なくなったら人としてお仕舞いな気がするから。でも、どうしたって自分の命の方が大事だ。俺は日本に帰りたい。
ということで、手加減せずマジックハンド・パーンチ! 槍を振り回せば飛ぶ斬撃と勘違いするだろ? いくらレベルが高くても俺の腕で白兵戦は無理。魔法でチマチマ削ろう。
おや? この反応は?
「ナビさん、ナビさん。新さんに伝言頼む。おかしな反応があるから、俺はそっちを確認するって」
『回答;了解しました。報告;先方から了承したとの回答がありました』
「わかりにくいけどわかった」
ホント、ナビさんて頼りになるよね。元は《鑑定》スキルなのに通信まで出来るんだから。
チラリと新さんの方を見ると、盗賊の人数は半分ぐらいになっていた。すごいね。俺んトコも半分になったけど、もとの人数が違うからな。
まあ、新さんだからな。安心して任せよう。
そして俺は残りの盗賊を一気に倒すのと姿を晦ますため大技を使う。
大技といっても、見かけだけだ。何せ無属性魔法以外はスキルレベルが低い。工夫しないとな。ただ、ラノベでよく見る方法があるのでそれを利用する。
それとは水蒸気爆発だ。火属性魔法と水属性魔法でお手軽に。そして風属性魔法で蒸気と砂煙を周囲に滞留させる。名付けるとしたら《忍法・砂遁の術》ってところか? それとも《煙遁》かな?
ま、それはどうでもいいとして、俺は砂煙に紛れて大岩の影に隠れた。そして《隠蔽》を自分にかける。残念ながら《気配遮断》のスキルは取れていない。だが、この《隠蔽》は実績があるのだ。たぶん無属性魔法がいい具合に効果を高めてくれているんだろう。
ふむ。後方からの盗賊は無力化したな。では、前方に回り込もう。
どうも怪しい動きをしてる奴らがいる。いや、動きというか、元の盗賊たちの集合場所から動いていないのだ。仲間には違いないだろうが、気になる。たぶんリーダーか監視役だろう。
となると、ここで俺たちが襲ってきた盗賊を倒したとしても、監視役を逃してはこれからも狙われるかもしれない。犯罪ギルドに情報が渡っては面倒だ。
俺はナビさんに頼み、最大範囲で《気配察知》をしてもらった。敵味方の判別は付かないが、人と魔物、動物の区別は付く。
うん。この付近には盗賊たちしかいないな。もし仮に、ナビさんの知覚範囲外にまだ盗賊がいて、特別なスキルで監視されているとしたら、これはもう諦める他はない。今日を生き延びて、もっとレベルを上げるしかない。
「お、いた。男と、なんで女の人が? ナビさん、鑑定で盗賊かどうかわかる?」
《隠蔽》はかけているが、なるべく見つからないように岩に隠れて様子を窺いつつ、鑑定してみる。
『回答;アップデートにより、現在は名前、レベル、スキルに加えて犯罪者の称号があるかが検索できます』
アップデートについては前に聞いたな。確か、鑑定ってのは神界のネットにアクセスするんだよな。ファンタジー感台無しだがアカシックレコードと考えればいいのか? 深いところまでアクセスすれば対象の生い立ちまで調べられるんだろうけど、それをやったら神たちにバレるからって制限されてたんだよな。それが『犯罪者判別装置』の普及で制限が緩和されたってところか。
んじゃ、鑑定よろしく。
『回答;了解しました……鑑定結果;名前・ボルサリーノ、性別・男、レベル・25、所有スキル……』
ナビさんの鑑定結果は聞いていて余り参考にならなかった。盗賊の名前なんか聞いても知らないし、偽名だったらどうすんの? って感じだ。ああ、レベルと犯罪者かどうかだけ教えてもらえばよかった……
そう考えて指示し直そうとすると、意外なところで聞き覚えのある名前が飛び出した。
『……鑑定結果;名前・ジェーン、性別・女、レベル・10……』
「ちょ、ちょっと待って? ジェーン? ホントに?」
『回答;女性の名前はジェーンで間違いありません』
思わず声が出てしまったが、《隠蔽》のおかげか距離があるせいか、二人に気取られることはなかった。ふ~。焦ったぜ。
それにしても、ジェーンか。
ハーベスト商会の、現在行方不明になっている使用人。ムングルトさんに毒を飲ませていたかもしれない、第一の容疑者の名前だ。
ネタ的に偽名だと思っていたが、まさか本人なんだろうか? 偽名として使われやすい名前のナンバーワンが、男はジョン、女はジェーンだった。だが、それは地球でのこと。決め付けはよくないな。単なる偶然で同じ名前の人かもしれないし。
こうなると名前なんか関係ない。問題は盗賊の仲間かどうかってことだ。
「で、ナビさん。どうなんだ?」
『回答;女性に犯罪者の称号はありません』
「そっか~」
うーむ。これは面倒なことになった。犯罪者だったなら、心を鬼にして『悪即斬』で済んだというのに。立ち位置からして盗賊の仲間っぽいんだけど、どういうことだ? 脅されているとかか? それとも、毒を盛ったといってもお腹を壊す程度だったから犯罪の称号までは行かなかっただけ? うーむ、わからん。
だが、とりあえずリーダーっぽい男の方は片付ける。これは俺たちの未来のため決定事項だ。
「マジック・パンチ!」
無属性魔法の射程距離まで飛び出し、一気に決める。定番の盗賊との問答など求めない。無抵抗の相手がどうのとか、この世界で甘いことも考えない。衛兵隊の隊長さんにも言われたし、ナビさんの鑑定を俺は信じる!
「え? キャーッ!」
不意打ちで隣にいた男が頭を潰された。それを目にしたジェーンは悲鳴をあげてしまう。そして腰を抜かしたのか、バランスを崩し転んでいた。
「……確認するが、あなたは盗賊の一味か?」
盗賊リーダーが死んだことを《気配察知》で確認してから俺は彼女に近づき、彼女の正体を尋ねた。
本当のことを言うかどうかはわからない。尋問のスキルなんてないが、別の手段は持っている。ま、それは新さんと合流してからにしよう。
そうすると間が持たないし、彼女を放っておくと逃げられる可能性もあるからな。言ってみれば世間話のようなものだ。
「あ、あ、あたしは……」
「落ち付け。こいつらが犯罪ギルドだってのはわかっている。残りの30人ももう相棒が倒してるはずだ。ここから見ていただろう?」
俺は新さんのいる方向を指差した。遠目だが戦っているのが見えた。いや、もう最後の一人だった。
俺より《気配察知》のレベルが高い新さんは、俺に気付くと手を振ってきた。
俺も振り返す。
その後新さんは倒れている盗賊たちに止めを刺しまわっていた。新さんもこれ以上犯罪ギルドに関わりたくはないのだろう。生きたまま捕まえるメリットが何一つないからな。
広範囲の気配察知で生きた盗賊の反応がなくなると、新さんはこちらに移動してくる。俺がジェーンを連れて行って合流してもよかったが、彼女はまだ腰を抜かしたままらしい。新さんには色々面倒をかけるなあ。
次回は8月13日0時投稿予定です。
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