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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
55/65

第55話 ナーバス

お知らせ

来週からペースダウンします。

毎週土曜0時投稿予定。


 目下の懸案であった犯罪ギルド。ヤツラが今後もハーベスト商会にちょっかいを出すかどうか。何とか連中との交渉まで漕ぎつけ、ついには手打ちに成功した。ま、俺が交渉したワケじゃないけどね。



 現在ハーベスト商会で護衛の仕事を継続中。

 手打ちするまでじゃなかったか、ですか? うん。そうだったんだけど、なにしろ犯罪ギルドだなんて名乗ってる連中だ。手のひらクルクルするかもしれない。いきなり信用できるもんじゃないよな。というわけで、当初の二つ目の雇用条件『ムングルトさんの職場復帰』までお付き合いすることになったんだよ。あと1、2週間ぐらいだから俺たちにとってもそこまで負担が大きいわけじゃないから引き受けた。


 ムングルトさんの護衛といっても大半は近くの部屋で待機してるだけ。異常があったら呼ばれる手筈だが平和そのもの。襲撃どころか不審者の一人も現れたことはない。どっちかっていうと邸内をウロウロしている俺たちが不審者みたいだ。

 暇なので部屋にいるときは寝てるか、魔法の訓練をしているか、だ。あ、魔法といっても攻撃魔法をぶっ放してるわけじゃないよ? 新さんは空間魔法を、俺は治癒魔法の取得を目指して独学での修行だ。最近平和で忘れがちだけど、無属性魔法というスキルがある。神爺さんが出し渋った、今の時代では忘れ去られた魔法で、実はすべての魔法に補正がかかるというラノベではありがちの設定だ。俺はレベル10、新さんはレベル4なので、これを活用すれば新しく魔法を取得できるかもしれない。新しくといっても、創造魔法は神爺さんが頑なに取得を禁じられたから、世間一般に出回っている既存の魔法を新規取得するだけだ。これならどこからも目を付けられることはないだろう。


 というわけで修行修行。体内の魔力を無属性魔法の力でグルングルン回す。ラノベでもお馴染みの方法だ。きっと効果があるに違いない。そしてイマジネーション。只の高校生とはいっても現代日本人だ。膨大な情報に晒されて育ったのだ。細胞やら免疫やら身体構造やら、にわかで断片的ではあるものの、知識はこの世界の人たちより持ってるつもりだ。加えてナビさんが忘れているはずの記憶を引っ張りだしてくれる。

 そして実体験。ムングルトさんの診察のため、数日に一度治癒師、つまりお医者さんが訪れる。護衛として立ち会うのだが、ついで、といったていで俺に治癒魔法をかけてもらった。訓練で怪我したと誤魔化して。いや、ウソじゃない。空き時間部屋に篭りっぱなしは辛いので木剣を借りて新さんに稽古をつけてもらったりしているのだ。新さん素でも強いし、俺、満身創痍だよ?

 まあ、おかげでなんとなく治癒魔法の魔力の流れがわかった感じだ。近い将来取得できるだろう。

 新さんの空間魔法取得は難航している。俺が使えるので毎回使って見せたり、空間に関しての現代知識なんかを講義したりしているのだが、理解が追いついていない感じだ。幸いなのは修行に対して前向きなこと。諦めなければいつかは取得できるだろう。地球に帰還するのとどちらが早いか……


 ともかく、護衛の仕事は暇だとはいったが、実は充実している。

 それでも手持ち無沙汰になるタイミングはある。そんなときは新さんとおしゃべりだ。お互いの日本での生活のこととか、話題は尽きない。戦国、ロマンだね。

 あるとき、何度目になるかわからないけど、今回の事件について聞いてみた。


「なあ、新さん。こういう幕引きで納得できる?」


「そう言うケント殿は納得できないでござるか?」


「うん……まだモヤモヤって感じかな? だって、結局実行犯はどうなったかわかんないし、それを命令した連中だって野放しだろ? なんでって思わなくもない」


 そうなんだ。あの日、ガーランドさんは手打ちが決まったって言ってたけど、結局実行犯らしい行方不明の使用人のことや指示していたグループの幹部については教えてくれなかった。ガーランドさん自身が知っているかそれとも知らないままなのかさえわからない。でも俺には聞けなかった。もし聞いて、そのせいで手打ちが失敗に終わると誰も幸せになれない気がしたんだ。これ以上関わらないこと、つまり実行犯を見逃すというのも手打ちの条件なのかもしれないし。


「難しい話でござるな。ケント殿は某より詳しいであろうが、知ってのとおり我がお家は豊臣方に着いたためその責めを負わされて領地替えになり申した。某一人でなく、家中の者は憤懣遣る方なしでござった。こうなれば敵わずとも徳川に一矢報いようと血気に逸る者も一人二人ではなかったでござる」


「でも、謀反を起こしたとは聞いたことないから、大人しく従ったんだよね?」


「そのとおりでござる。恨みつらみはあったでござるが、結局はお家の存続を取ったのでござる」


「やっぱり悔しい?」


「そうでござるな。しかし、戦場に出ぬうちに勝敗が決まったのが一番悔しいでござるよ。実際に戦っていれば勝敗はわからなかったと申す者も居ったほどでござる。ただ、戦場で刃を向けた上での敗戦では沙汰が厳しくなった可能性もあり申す。それに、ケント殿に教えられたその後の歴史を見ると、これこそ塞翁が馬でござるな、負けてもお家が長く続いたのなら祝着至極でござるよ」


「あー、それね? ものの本によると、徳川は関東にいた佐竹家が邪魔だったらしいし、結局は改易か藩換えを考えてたみたい。西軍に付いたのをこれ幸いと遠くに飛ばしたんじゃないかって。一説では、佐竹家が今更徳川に味方しても持て余されるだけだからワザと敵になって藩換えの処分で済ませてもらおうとしたって、爺ちゃんが言ってた。俺的にはそんなギャンブル、恐くってできそうもないけど、ホントなの?」


「いや、某のような地侍では上の方々の考えなど聞かされておらぬでござる。しかし、それが真にござるなら、我が殿はかなりの策士でござるな。お仕えした甲斐があるというもの」


「まあ、そこは日本に帰ったときに聞いてみればいいんじゃない?」


「そうでござるな。某ごときが直に口を利けるお方ではないが、それとなく重職の方に聞いてみるでござる」


「そう聞くと、戦国時代にタイムスリップも面白そうだな……神爺さんに頼むか……いやいや。そんな話じゃなかった。えーと、つまりは新さんはお家が一番大事と。アマンダさんたちもそんな感じで、ムングルトさんの命は当然として、商会の存続が大切なんだと、そういうこと?」


「ありていに申せば」


「いや、わかってたよ? 何度も聞いてたからね、その結論。それでも納得いかないのは俺がおかしいからか? まだこの世界にも戦国時代にも慣れないだけ? 慣れたら俺どうなるの? 日本で暮らしていける?」


 そう、恐いのは現代日本の価値観を失ってしまうこと。どれがいいとか悪いとかという話ではない。周りと違う価値観で生きていけるのかということ。

 少し考えてみると、日本では只の高校生。守るべきお家とやらはない。強いていえば日本の政府なんだろうが、そこに仕えているわけじゃない。社会人になってどこぞの会社に就職したとして、新さんやガーランドさんみたいにお家大事でお勤めができるだろうか。きっと個人的感情を優先してしまいそうな気がする。

 いや、ブラック企業だの社畜だのという言葉もよく聞く。あれはもしかしたら個人的感情を優先できなかった人たちの末路なんじゃないだろうか。心からでないにしろ国や会社を優先せざるを得ない環境。死なば諸共ってつもりでないと国や会社に反抗するメリットがない。デメリットの方が大きすぎる。たぶんみんながそう思っちゃったんだ。なら右倣え。日本の国民性ってヤツだ。俺も社会人になったらそうなってしまうのかなあ? 大人になんかなりたくないって思うのはこんなときで合ってるのかなあ?


「ケント殿、ケント殿! しっかりなされよ!」


「あ。新さん……」


 日本と異世界とのギャップ。それが度々俺をナーバスにさせるようだ。今回のは異世界自体は関係なく学生と社会人とのギャップといっていいけど。


「ケント殿。この世には儘ならぬことも多いでござるよ。悩むのもよいが、悩みすぎてもロクなことはござらぬ。人生塞翁が馬でござるぞ」


「そ、そうだね。悩んでもしょうがないよね」


 新さんが励ましてくれた。

 おかげで俺は心の平静を取り戻せた……かな?


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