表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
54/65

第54話 朗報


 アマンダさんのお宅にお邪魔して今後の方針を確認した。神殿さえ絡まなければ俺たちとしては文句ない。例えグダグダでスッキリしない結末を迎えたとしてもだ。



 俺たちがお邪魔した日の午後、とある貴族にアポイントが取れたというのでアマンダさんは出かけていった。カマロのおっさんたち『稲妻とグリフォン』の4人が護衛として同行していた。

 そして俺たちは急遽お屋敷の護衛として雇われた。

 旅に出ることは伝えているのだが、どうしてもといわれて臨時で依頼を受けることにしたのだ。事件のその後が気になることも伝えてしまっていたから断りにくかったのもある。

 護衛の期限は、目安としては、犯罪ギルドと手打ちが正式に決まるか、或いは交渉が長引いたとしたらムングルトさんの体調の完全回復まで、ということにしてもらった。さすがに長期滞在は考えていない。犯罪ギルドの方針次第だが、もし交渉に応じた時点で解決できたと看做していいだろう。あとは条件の問題だ。アークノ商会からの依頼は違約金を払うということでなかったことにすればいい。メンツがどうのこうの言い出されるよりはよほどマシというものである。

 もしメンツに拘ったら? 俺たちにはどうしようもないですね。そのために領主様にコンタクトを取ろうとしているワケだし、そうなると領主様側にもメンツはあるだろうから徹底的に叩くことになるかもしれない。犯罪者識別装置があるんだ。大儀名分があれば上層部も重い腰を上げるだろう。俺的には神殿まで飛び火しなければ何でもいい。まあ、交渉の段階で領主様の関与を仄めかすだろうから向こうもバカな対応はしないと思う。マジでバカでないことを祈っております。


 そんなこんなで一週間。

 正確には異世界に来て21日目。この世界の6月15日だそうだ。

 ついに進展があったらしい。


 ドルノースの領主と面会することが決まった。街一つ村数個の小領主とはいえ領主は領主。即日面会とはいかず、これだけ待たされることになったのは仕方がない。しかも、犯罪者識別装置関連でどこの領地もゴタゴタしているのだから一週間は短い部類になるようだ。


 俺たちと言えばこの一週間は正直暇だった。いや、護衛ってすることあまりないんだよね。気を付けたのは毒の持ち込みぐらいだ。特に食事は毎回『鑑定』しているよ。あとはムングルトさんの部屋のドアや窓が見える場所で待機してるだけ。でも、これだって二人で24時間対応できるわけがないので大半は使用人さんたちが見ててくれる。俺たちは近くの部屋で休憩してることの方が多かったぐらいだ。


 で、そのムングルトさんはどうなったかといえば、順調に回復してきている。まあ、もともと使われた毒は致死性のものではなく、常用さえしなければ命に別状はないとのことだった。しかもこの世界には『治癒魔法』や『解毒魔法』がある。今のムングルトさんは健康体なのだ。ただ、長い間寝たきりだったので衰弱していて、それはいくら魔法でも回復はしない。ゲームとは違うんだ。適切なリハビリが必要だとのこと。実際もう一人で歩けるようにはなっている。あと1、2週間すれば商会長業務に復帰できるだろうといわれている。

 そしてムングルトさんが復帰すればハーベスト商会の力も取り戻せるらしい。なんでも、ムングルトさんが病気のころ(毒とは知られていなかった時)は商会の将来を不安視されていて、取引にも影響は出るわ、冒険者の護衛を集めようとしても敬遠されるわだったが、復帰確実の噂が流れると手のひらクルーで取引が増えたんだとか。しかもウスノースでは悪どくやっていたアークノ商会が潰れたものだからその縄張りをめぐって商戦が激しいらしい。アマンダさんの実家のハモンド商会も勢力を伸ばし、それに連なるハーベスト商会も業績が上がるだろうという業界の噂まであるらしいからね。


 まあ、それは俺たちには関係ないことだけど、お店が順調ならいいことだよね? 神殿に駆け込まなくても大丈夫だよね?


「みなさま、朗報です。犯罪ギルドは正式に手を引きました」


 関係者、ムングルトさん夫妻と『稲妻とグリフォン』の面々、俺と新さんが執事のガーランドさんによって一室に集められた。

 そしてガーランドさんの第一声がこれである。


 まさに晴天の霹靂。

 関係者たちは聞こえてはいたものの、反応できなかった。もちろん俺もだ。

 一体どういうこと? 


 ガーランドさんも皆の反応を見て、詳しく説明してくれた。

 こういうことである。

 この一週間、犯罪ギルドとの交渉に向けて領主を引っ張り出すべく伝を当たっていた。これは主にアマンダさんが担当していた。

 しかし、水面下でガーランドさんがすでに犯罪ギルドと接触を果たしていたらしい。

 これは、領主へのコネを辿る内の派遣貴族の中に犯罪ギルドと繋がりのある者がいたらしく、硬軟織り混ぜて懐柔したらしい。どんな説得方法かまでは聞いていないが。

 それで領主との面会に先立って犯罪ギルドと交渉を始めていたようだ。

 向こうも大事にはしたくなかったようで、交渉には応じてくれたようだ。しかし、条件で少しゴネられたらしい。犯罪ギルドと関わったことが世間にバレたら、なんて脅しもかけられたらしいが、それはブラフだろうということらしかった。あくまでも交渉を有利にしようとしているのがミエミエだったという。

 そして領主と面会が叶うという情報が流れるや、手のひらを返したように交渉がまとまったのだという。それが今日のこと。まだ領主との面会はしていないのに。

 ガーランドさん曰く、あえて領主様との面会前に手打ちをしておきたかったのだろうという。

 なるほど。もし領主が犯罪ギルド撲滅の指示なんか出したらソイツらにとっては大打撃だろう。出来ればもう終わったことだと報告してほしいんだろうな。


「それでは、主人はもう狙われないのですね?」


 ガーランドさんの説明が一段落したあと、アマンダさんは恐る恐るガーランドさんに確認した。


「はい。相手が相手ですので契約書はありませんが、いくら口約束でも、これを破ると御領主様のメンツを潰すことになります。さすがにそれはないでしょう」


「ああ、あなた! よかった!」


「アマンダ! 苦労をかけたね!」


 ガーランドさんの自信に満ちた返答に感極まったのか、アマンダさんはムングルトさんに抱きつき、ムングルトさんもアマンダさんを抱きしめていた。


 ゴホン、とガーランドさんが咳払いすると、一同は我に返る。おっと、俺もつい見蕩れちゃったよ。


 そして、ガーランドさんは『ですが……』と説明を続けた。


 その内容はというと、犯罪ギルドがどうしても譲れない条件についてだった。

 が、それはこちらからも妥協点として提案しようと考えていたことだったので、ガーランドさんもその条件を呑んできたという。

 その条件とは、アークノ商会の名義で相場の違約金を払う、ということであった。

 いくらかはこの場では明言しなかったが、条件を呑んだというのならハーベスト商会で払える金額なのだろう。

 アマンダさんも『お金で済むなら払う。主人の命には代えられない』と常々公言していたからな。


 この条件のキモは『あくまで依頼人のアークノ商会の都合で依頼を取り消しただけ。犯罪ギルドが依頼に失敗したわけではない』という形に収めることである。


 ガーランドさんの分析によると、犯罪ギルドも一枚岩ではなく、今回のクループが失敗したと看做されると別のグループが勢力を伸ばすため、その依頼を引継ぐ可能性があるという。そうなってはハーベスト商会にとっていいことはない。単に強気で交渉してもメリットはないらしい。そもそもハーベスト商会は犯罪ギルドに関わりたくはないのだ。アークノ商会の名義で取引するならそれに越したことはない。お互い知らないことにしましょうというわけだな。なるほど、納得した。


「それなら、ご領主様にだけはそのように報告しておきましょう。お金がかかるわね」


 どうやら領主にも付け届けの必要があるらしい。

 新さんは当然と言うような表情だが、現代日本人の俺に言わせるととんでもない話だよな。


「なに。僕が復帰したら、いくらでも稼げるよ。心配しないでいいよ、アマンダ」


「あなた……」


 また二人の世界に突入したようだ。


 そこかしこから咳をする声が聞こえてくる。

 あ、俺もだ。風邪かな?



【作者からのお願い】

「面白かった」「続きが読みたい」と思われた方は下記にある【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ