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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第53話 犯罪ギルドと取引を?


 事件が完全解決するって小説や漫画の中でも少ないよね。精々ギャグ系かエンタメ系ぐらいじゃないかな。きっと事件が終わったあとでも見えないところでじわじわと影響が残るんだ。それが現実ってヤツなんだろうね。


 

 俺たちはカマロのおっさんに今回の事件の落としどころについて相談してみた。

 カマロは執事のガーランドさんに俺の相談を回し、ガーランドさんはアマンダさんに相談するように勧めてくる。

 いいのかね? 会長夫人なんだよ?


 一旦ガーランドさんは退室した。

 そして俺がお茶を飲み終えたぐらいに戻ってきたのだった。


 その後案内されたのは会長の執務室。商会の建物にあるのが当然だが、自宅にもあるんだそうだ。

 中に入ると、俺たちを待っていたのはアマンダさんは当然として、なんとムングルトさんもいるではないか。


「ああ、ケントさん。ようこそ我が家へ」


「ムングルトさん。お身体の調子はどうですか?」


「おかげさまで。まだ体力は回復していませんが、まるで生まれ変ったようです。それもこれも、ケントさん、シンノスケさんのおかげです。妻の命も何度も救ってもらった上に、私の病も。本当にありがとうございました」


 ムングルトさん、アマンダさん、それに執事さんまで頭を下げてきた。

 俺、そんなに大したことしたつもりはないんだけど。いや、『俺何かやっちゃいました?』ではないんだけどね。


「いやいや。アマンダさんを護衛は普通に仕事でしたし、毒の件はウスノースの衛兵さんの手伝いをちょっとして偶然見つけただけですので、本当に大したことじゃ……」


 その後、護衛で同席しているカマロたちを含めて、何故か皆で『イヤイヤ』『イエイエ』の繰り返しだった。

 まだ高校生の俺には社会人のあり方がわからん。これが普通なのか? 社会に出るのが恐くなるな。そんな俺も、この世界じゃ社会人だ。仕方ない、付き合おうじゃないか。新さん? あの人は泰然自若ってヤツだ。尊敬するよ。


「それで、ご相談というのは?」


 やっと話ができるようになった。

 俺と新さん、ムングルトさんとアマンダさんがソファーに座って向かい合う。


 俺は先ほど応接室でカマロのおっさんとガーランドさんに話した内容をもう一度説明する。ポイントは、『部外者だが、どうしても顛末が気になるので迷惑と知りつつ確認に来た』である。


 本当に聞きたいことは別にある。

 新さんとも何度も話し合ったが、アマンダさんたちが神殿に訴えなければ、どんな結論に至ってもかまわない、泣き寝入りすることを選択したとしても、それで納得する、ということにしたのだ。

 どこかで線引きしなければならないなら、最低限は神たちにバレないようにすることだ。例え周りに不幸な人がいたとしてもだ。救えるのなら救うが、身バレしてまで救うことは出来ない。この世界で、この身に替えてまで、と思える人間はいない。もちろん、将来はわからないが。


 俺たちは地球に帰ることを唯一の目標にしている。それに反することはするべきじゃない。


 そういうわけで、神殿のことは触れず、あくまでも当事者であるアマンダさんたちが納得できるかどうかを確認したい、と話を結んだ。


「……そうですか。気にかけていただいているようで、お礼を申し上げるべきでしょうな。アマンダ。この人たちなら話してもいいんじゃないかな?」


「ええ。護衛も続けてほしかったぐらいです。お話しするのもかまわないでしょう」


 俺の話を聞き終わって、ムングルトさんは意味ありげな反応をした。アマンダさんもである。

 なんだろうか?


「ケントさん、シンノスケさん。私たちはこれからある方にお会いする予定です」


 アマンダさんが代表して答えてくれた。

 たぶん、まだ本調子じゃないムングルトさんに代わってのことだろう。


 アマンダさんの話はこうだった。

 カマロも言っていたが、アマンダさんは人に会うために出かける予定がある。

 その人というのは貴族だという。

 貴族といっても色々あるそうで、この町の領主のように領地を持っている貴族もいれば、領地を持たずに国から年金をもらっている貴族もいるらしい。所謂『法衣貴族』というヤツだ。ラノベでもお馴染みである。

 法衣貴族は普通は王宮などで文官をしたり、直轄地で代官を務めるらしいが、中には地方領主のところに出向して部下になる場合も多いのだとか。この場合、地方領主は王宮にパイプができるし、法衣貴族は地方領主から給料が出るので収入は増える。国は年金も安く抑えることが出来るそうで、三者ともにメリットがあるようだ。

 そんなわけでどんな小さな町にでも複数の貴族がいるらしい。

 以前はこの派遣されてきた貴族たちが色々悪さをしていたようだ。部下といっても派遣だ。地方領主に心から忠誠を誓っているわけじゃない。

 しかし、最近は神殿の新たな動きで貴族たちが慌てている。犯罪者識別装置の件だ。そもそも被害者が神殿に訴え出たら例え貴族であろうとも罪に問われてしまうのはわかりきっていたことだ。それでも悪事を働いてきた貴族の罪深さよ。

 だが、装置のおかげで今度こそ犯罪が割りに合わないと理解できたようで犯罪活動は自粛気味らしい。


 アマンダさんはこの機会を捉えて貴族に協力を求めることにしたそうだ。今なら無体な要求はされないだろうということらしい。


「協力というのは、犯罪ギルドの件ですか?」


「はい。これからお会いする方が直接コネを持っているかどうかはわかりませんが、犯罪ギルドの幹部クラスの方に面会できるように相談を持ちかけてみるつもりです。その前に領主様に取り次いでいただければ話は早いのですが」


 俺の感覚からすれば、無体な要求はなくとも、どう考えても門前払いされる予想しかできないが、ここで気になるワードが。


「領主?」


「ええ。こちらとしては後ろ指差されるようなしておりませんが、世間体というものもあります。ですが、領主様のお声がかりがあれば堂々と取引できますので」


「やはり犯罪ギルドと取引を?」


「はい。私どももこのままでは不安が拭えません。多少のお金で済むならそれで終わりにしたいのです。多くの身内が亡くなりました。神殿に訴えてでも仇を取りたい気持ちは今でもありますが、それは更なる争いを起こすだけです。今生きている人間のためにもこれ以上の追求はしないことにしました。ですが、向こうがこれからも襲ってくるのかどうかわからないのは恐いのです。それをハッキリさせるためにも、どうしても話を通さなくてはならないのです」


 アマンダさんの言葉には強い意志が感じられた。


 なるほど。俺たちの考えとほぼ一緒だ。途中で『神殿』というパワーワードが出たときは焦ったがな。


 つまりは、取引というより、ヤクザ用語の『手打ち』なんだろう。

 ただし、単にお金を払ってじゃ、ナメられて今後も脅迫されかねない。そこで貴族や領主をバックに付けてお話し合い、というわけだ。


 少し安心した。


「そうですか。すみませんでした。部外者なのにそこまで深いところを聞いてしまって」


「いいえ。部外者などとは思っていませんよ。ケントさんたちは命の恩人ですから」


「そんなことは……いえ、それはいいんですが、そうですね、アマンダさんたちの方針を聞かせていただいてスッキリしました。俺たちは旅に出るまでもうしばらくこの街にいますので、何かあったらお手伝いします。いつでも声をかけてください」


「ええ、それでしたら、しばらく護衛をお願いしたいのですが……」


 十分納得できる方針だったので、話し合いは終わりにして帰ろうとしたのだが、余計な一言が災いしてか護衛の仕事を打診されてしまった。

 こりゃ断れんよな……


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