第52話 相談
ドルノースの町でしなければならないことは一応終わったと思う。本来ならすぐに旅に出るべきなんだろうけど、一度関わってしまった事件の結末が気になる。というより、神殿恐い。
おはようございます。異世界生活15日目の朝です。
今日はカマロのおっさんに色々話を聞こうと思います。依頼で出かけていなければいいのですが……
「カマロかい? もう出かけたよ」
朝食時に女将さんに聞いたらこんな答えが返って来ました。出端を挫かれた感じです。昨日のうちにアポイント取って置くべきでした。社会人なら自然とできるんでしょうかね?
後悔先に立たず。そこまで大袈裟なことではないけど、次からは注意するということでしっかりと朝食はいただきました。
その後カマロたちを訪ねるため再びアマンダさんの自宅に向かう。
カマロの所在は俺の予想で3箇所ある。一つはギルドで仕事探し。二つ目はハーベスト商会の護衛の仕事をすでに引き受けて仕事中。三つ目は、二つ目と被るけど、護衛は護衛でも商会ではなくムングルトさん個人の護衛かな。
俺もムングルトさんの安否が気になるので先に自宅の方へ訪ねてみることにしたのだ。
「すみません。護衛の仕事してるカマロに会いたいんですが」
貴族のお屋敷というわけではないが、ちゃんと門番がいる。
門番の人は、俺と新さんのことをなんとなく覚えていてくれたようだ。昨日一昨日は衛兵の格好をしてたんだけどね。たぶん二人とも頭に手拭い巻いてるから印象に残ってるんだろう。快く招き入れてくれた。ていうか、カマロを呼んでくれた。
やっぱりここにいたらしい。
「おう、どうした? 護衛の仕事がしたいのか? お前たちならアマンダさんも喜んで雇ってくれるはずだ。なんなら俺たちのパーティーに入るか?」
門番に呼ばれて出てきたカマロは俺たちを見るなり護衛の仕事の勧誘して来た。パーティーに引き入れようとまでするし。
「いやいや。ちょっと相談があっただけだ。今いいか?」
「相談? まあ、ここじゃなんだから中に入れよ」
護衛の権限がどこまで大きいか知らないけど、部外者を簡単に入れてもいいのか? 門番さんもどうぞ、どうぞって、ホントにいいのか?
「アマンダさんが出かける前で、ちょうどよかった」
途中執事さんに出会って歓迎された。そして応接室に案内される。お茶も出してくれるみたい。何か悪いな~。
貴族とか上流階級の人だったら、きっとお茶が出るまで会話とかないのかな、と思いつつソファーに座るが、俺たちは普通の人間、ていうか、冒険者という底辺の存在なので、お茶があろうがなかろうが関係ないとばかりに話し始める。
「アマンダさん、出かけるのか? 悪いな、そんなときにお邪魔しちゃって」
「いや、いつ出かけるかわからんから、その辺は気にしなくていいんじゃないか? で? 話ってのはアマンダさんにか? なら、後でガーランドさんに聞いてみればいい。お前たちなら、時間があれば会ってくれるだろうよ」
ガーランドさんていうのは執事さんのことだ。会長夫人に直接会うのは普通は難しい。身分もそうだけど、女性だからね。よっぽどのコネがないと。
「いや、誰に相談したらいいか、まずそれがわからんから、とりあえずカマロのおっさんに聞いてみようと思ってな。時間は大丈夫か? 護衛の仕事中なんだろ? なんなら宿ででもいいんだが」
「何の相談か知らんが、アマンダさんが出かけるまでは待機中だ。交代でムングルトさんの護衛もしてるから屋敷から出なければ問題ない。何より、お前たちには恩があるからな。話の一つや二つ聞いたところで文句は言われんだろうよ」
カマロのオッサンは相談に乗ってくれるという。
俺は新さんに目配せした。新さんは頷いてくれる。よし、じゃあ、遠慮なく相談しちゃいましょう。
「そうか。じゃあ、お願いしようかな。相談っていうのは他でもない、今回の事件のことだ。事件は終わったことになるのか?」
「んん? どういうことだ?」
聞き方が悪かったのか、カマロは怪訝な顔をする。
「んー、何て言ったらいいかな。知ってのとおり、俺たちは冒険者になったばかりだ。護衛の仕事も初めてだったんだ」
「うん、それで?」
「狩人なら、獲物を獲って、それを売ればお仕舞いだろ? でも、護衛の仕事って、期間が過ぎればそれで終わりになるのかなって。特に今回の事件は解決したとはいえないだろ? 実行犯も、その後ろの犯罪ギルドとかいうのも野放しだし。そりゃ、護衛の仕事がそいつらを捕まえるわけじゃないのはわかってるけど、何か、こう、ちゃんと解決しないとモヤモヤするっていうか、気になるんだよ。このままじゃ旅に出ても後ろめたいっていうか、やっぱりモヤモヤするっていうか……」
「……同じだ」
「え?」
俺の話を黙って聞いていたカマロはポツリと呟いた。
「知ってるだろ? この商会の人間も、俺たちのパーティーメンバーも殺された。その仇は取ったが、そいつらの仲間がまだいる。逆恨みで襲ってくる可能性だってある。俺も事件が終わったなんて思っちゃいねえよ」
そうか。そうだった。この事件、もう何人も死者が出ていたんだ。人の命が安い世界。決して見下してるわけじゃないけど、そんな世界、時代はあるんだ。新さんのいた戦国時代はもっと安かったのかもしれない。
でも、当事者にとってはやりきれないだろうな。その点は、俺たちは当事者とはいえない。他人事に過ぎない。
そんな俺たちが、事件の解決がどうのと口出ししてもいいものだろうか。なんか場違いな気がして来たな。
「……それで、結局どうしたいんだ? 旅に出るとか言ってたが、止めて俺たちみたいにここで護衛として雇ってもらうか?」
どうしたらいいか、わからないから相談してるんじゃないか。そんなことは言えず、黙ってしまった。
そのタイミングを見計らったかのようにノックの音が聞こえてきた。
カマロがドアを開けると、お茶の用意をした執事さんとメイドさんが。
あ、このメイドさん、行方不明の推定実行犯のメイドさんと同室で、容疑者になりかけた人だ。よかった。首にはなってないみたいだ。
執事のガーランドさんは俺たちに今回の件で礼を述べながらテーブルにお茶やお菓子を並べていった。
「ちょうどいい。ガーランドさんにさっきの話、してみたらいい」
「え?」
「どのようなお話でしょうか。私でよかったら聞かせていただきますが」
カマロが相談相手にガーランドさんを紹介して来た。
ふむ。相談相手が増えるのは歓迎だ。ガーランドさんも話を聞いてくれるって言うし、話してみよう。
ガーランドさんは執事らしく立ったままなので、ちょっとやりにくいが、俺は先ほどカマロに話した内容を繰り返した。
そして最後に、俺がどうしたいか、気持ちが固まっていないながらも付け加える。
「そういうわけで、できれば落としどころというか、アマンダさんたちが納得しているかどうか知りたいのです。部外者が出過ぎたことを言っているのは承知してますが」
「……なるほど……わかりました。ケント様。お手数ですが、今の話、もう一度奥様に話していただけませんでしょうか?」
「え? あ、はい。かまいませんが……」
執事さんへの相談は結局アマンダさんへの相談へとシフトしていく。
これもたらい回しなのかな?
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