第51話 講習受けに来たんです
アマンダさんからの依頼は一応終了した。一応ってのが引っかかるが、新米冒険者に探偵の真似事は無理! 衛兵隊も犯罪にならない程度にナアナアで済ませちゃったし、アマンダさん自身も旦那さんが命を狙われなければそれでいいって感じだし、部外者の俺たちが口を出すことじゃないのはわかってる。でもなあ~……
おはようございます。異世界に来てから何日目かわからなくなっちゃったけど、ドルノースに戻ってきて二日目の朝です。あ、ナビさんが14日目だって。聞いてもないのに教えてくれるんだね?
それはともかく、今日はギルドに行って講習を受けるつもりだ。本当は登録後すぐ受けるつもりだったんだけどね。カマロのオッサンに押し切られて護衛の仕事を引き受けてしまった。依頼料の受け取りとかどうなってるのか詳しくは聞いていなかった。
いや、護衛してたとき、無駄に待機時間とかあったから聞けばよかったんだろうけど、忘れてた。今思えば、なんとなくお金の話はしづらいお年頃だったんだろうな。日本でもそんな経験なかったし。
でも、これからどれぐらいこの世界で潜伏してなきゃいけないかわからないし、貧乏は嫌だ! ガメツイとか守銭奴とかいわれてもいいから、今度からしっかり確認することにしよう!
「ケント殿? 行かないのでござるか?」
朝ごはんを食べてまったりしてたら新さんに起こされた? ね、寝てませんよ!? ちょっと考え事してただけです!
「よ、よし。いこか」
ちょっとグダグダしちゃったけど、ギルドに行こう。
道はマップ機能で解決。アッサリと到着した。
中を覗くと一階カウンター前には長蛇の列が。うわー。ラノベで読んだとおりか。ゆっくり朝ごはんを食べた後だから、たぶんこれでもピークは過ぎてるんだと思う。これ、俺たちも並ぶの?
「すみません。講習受けに来たんですが、並ばなきゃダメですか?」
なんか列の整理してた人がいたので聞いてみた。これからは積極的にいかないとね。
答えは『二階に行け』だった。たらい回しというヤツか? それとも講習は二階で受けるのかな? ま、無視されるよりマシか。
講習後わかったことだが、一階は依頼関係と納品関係で、それ以外はすべて二階で手続きをするそうだ。やっぱり登録後すぐに講習受けないとダメだよね? ラノベの知識だけじゃ齟齬が生じるし、ナビさんもこんなローカルルールまでは網羅してなかったようだ。
二階の、登録時と同じカウンターに行ったらすぐに手続きしてくれた。
なんでも、できれば登録後すぐに講習を受けてほしいし、それが定着してはいるのだが、中には知り合いの紹介で冒険者を始める人も多く、いきなりパーティーに入って依頼を受けることもあるのだとか。
カマロのオッサンが無理をしたのではないかと冷や冷やしていたが、よくあることならと安心した。
そして職員の手が空いていれば講習はすぐに受けられると言うので、当然受けることにした。
内容は、新さんには新鮮に感じられたそうだが、俺はなあ……やっぱりどこかで聞いたような話ばかりだった。
もちろん、ラノベすべてが共通しているわけじゃないので、取捨選択? みたいに聞いておかないと判断できないことが多い。例えていうと、エスカレーターは右に並ぶか左に並ぶか、みたいな? うん。ローカルルールだ。
その辺の細かいルールはナビさんが覚えてくれるそうだ。チートだね!
俺が覚えておかないといけないのは二つだと思う。依頼料に関してと他の町に移るときだ。
お金はね、ルールが問題じゃない。心構えなんだと思う。快適な潜伏生活のためにしっかりいないといけないな。
そして拠点移動。これについては新さんとも何度も話し合った。神爺さん次第ではあるが、いつか必ず地球へ帰る。それまで同じところに隠れ住むか、それとも世界を回るか。どちらにしろ神たちは魔物の氾濫を画策している。これは神爺さんにも止められないらしいので出来るだけ魔物の少ないところに避難していたい。その点で見ると、ドルノースもウスノースも『死の森』近辺なのでアウトだ。ここからはどうしても離れておきたい。ゴブリン君たちにまた『魔王様』なんて呼ばれたら最悪の結果しか想像できないからな。
爺さんがクーデターを成功させれば、転移した時間に戻してもらえる。だから十年でも二十年でも待ってやるさ。まさか百年とは言わないだろう。言わないよね? 頼むぞ、神爺さん!
講習が終わったのは昼前だった。実技試験とかはないので、ま、こんなもんだろう。
早速一階のカウンターに行ってみる。ハーベスト商会からの護衛依頼が正式なものだとすればここで報酬を受け取れるはずだ。それを確認しなければならない。
「カードを提出してください……あ、依頼達成ですね? こちらがハーベスト商会からの報酬です。そしてこちらが……え? 衛兵隊本部から? あ、失礼しました。こちらが衛兵隊本部からの報酬です」
受付嬢さんはギルドカードを何かの機械、魔道具? に翳すとお金をくれた。どうやら謎テクノロジーで任務の成否がわかるらしい。犯罪者識別装置といい、地球のテクノロジー真っ青だよ。これで電車も自動車も、スマホやインターネットもないんだから質が悪い。
それはともかく初の給料だ。あ、盗賊から分捕ったモノを売り払ったのはノーカンってことで。衛兵隊からの報酬もここで受け取れたのはよかった。これでわざわざ衛兵隊の詰め所に行かなくて済む。あそこは一般人には心臓に悪いんだよ。悪いことしてなくてもさ。
「ケント殿。これからいかがいたそうか?」
報酬を二等分し、まだ亜空間倉庫が使えない新さんの分を預かったあと、ギルドの建物から外に出た。どこに向かうともなく歩きながらこれからのことを相談する。
本当に何度も話し合ったことなのだが、具体的なことは何一つ決まってないんだな、これが。
「前に言ったように東方面に行こうと思う。ナビさん情報によれば俺たちみたいな黒目黒髪が多いそうだ。木を隠すなら森の中、ってことで目立たずに暮らすにはいいんじゃないかな?」
召喚されて放置された場所が大陸の西側だったらしく、こちらのお金も食料もない状態では一番近くの町に向かうしかなかった。だが、冒険者などという異世界モノ定番の身分を手に入れ、何とか生活費を稼ぐ目処が立ったのだから元の方針に立ち戻ろうと思う。
「それはそのとおりなのであろうが、某の聞きたいのはアマンダ殿の件でござる」
「それか~……」
ホント困った。
心情的には完全解決して心置きなく出発したいところだ。
でも、ファンタジー世界でも現実は現実。手の出しようがないこともザラにあるんだ。特にポッと出の冒険者が出しゃばっても目立つだけでいいことなんかない。目立たないように、がこの世界での俺たちの方針だってのに、懸念を排除するために行動すると嫌でも目立ってしまいそうだ。ジレンマだよな~。
「……仕方ないから一週間ぐらい様子見よう。アマンダさんが神殿に行かなくてもいいって判断したならそれでよし。もし神殿に訴えるってなったら、そのときは俺たちで何とか事件を解決させてもらえるようにお願いしよう。少し目立っちゃうけど、神どもにバレるよりはマシだろう」
「あいわかり申した。やはり神殿とやらは鬼門でござるか」
「こればかりは試してみるわけにもいかないからなあ……」
しばらくは様子見。方針ともいえない方針がやっと決まった。
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