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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第49話 なんか信長っぽい?


 衛兵隊の護衛は解除される可能性大!? 犯罪者ギルドの出方もわからないのに、隊長さん、ひどくない?



「新さん」


「おお、ケント殿。何か進展はござったか?」


 俺はムングルトさんの寝室を訪ねた。新さんが警護を買って出ていたので、これからのことを相談するためだ。

 新さんは部屋の中に入らずドアの前だったので話もしやすい。衛兵隊の警護の人もいたが病人の前で物騒な話をするよりもマシだろう。


「隊長さんが来た。これから使用人さんたちの身元を洗うんだって。その中に怪しい人がいなかったら、警護の人間は引き上げるみたいよ」


「それではムングルト殿が危険ではないか?」


「ジェーンいう行方不明の使用人を指名手配したみたいだし、捜査は続けるらしい。でも、この家に掛かりっきりは無理なんだって」


「……確かに、お上が一商家に肩入れするのは些か問題があるであろうな」


「新さんでもそんなこと言うんだ?」


「ケント殿は某をどう見ておるのだ? 某も武士の端くれ、為政者にも為政者なりの苦労があると存じておる。我が殿も藩換えの屈辱を甘んじて受けた。皆苦労しておるのでござる」


 そういや佐竹藩は負け組だったな。徳川派の命令で辺鄙な場所に追いやられたんだ。心から納得してるわけじゃないんだろうけど、折り合いは付けてるんだろうな。

 比べても仕方ないけど、理不尽なことは世間に転がってるんだ。余り感情的になってもいいことなんかないな。


「さすが新さん。じゃあ、これからどうしたらいい?」


「そうでござるな。ムングルト殿の安否は気にかかるが、まさか一生付き合うわけにもいかないでござろう。某たちも身の振り方を考えねばならぬ故、去就が決まるまでは頼まれたら警護を引き受けてもよかろうと存ずるが、ケント殿は如何お考えか?」


「俺もそれでいい。でも、あんまり目立ちたくないから、できれば旅に出た方がいいと思う。新さん、ちょっと……」


 俺は警護役の衛兵さんに、少し持ち場を離れることを告げて屋敷の人気のないところに新さんを連れて行った。

 念のため《気配察知》スキルで周囲に人がいないか探る。

 これでようやく秘密の話ができるというものだ。


「新さん、犯罪者ギルドの出方がわからない。だから、もしかするとアマンダさんが神殿に審判を頼むかもしれない。どんなやり方かわからないけど、俺たちのことが神サマ連中にバレる可能性もある」


「それは一大事にござるな。かといって見捨てるのは目覚めが悪いでござるな」


「そうなんだよ。俺だって目の前で誰かが襲われてるんなら助けるし、確実に狙われてるってわかれば対策に協力するのもアリだと思うよ。でもなあ。これからも狙われるかどうかもわからないのにいつまでも付き合うのはなあ……」


「狙われない可能性もあるのでござるか?」


「あー、うん。隊長さんにも言ったけど、毒薬をあんなふうにわかりやすく置いておくなんて、犯行を諦めたっていう意思表示かもしれない」


「なるほど。ではムングルト殿は安全ということでござるか?」


「いやいや。そう簡単じゃないから悩んでるんだって。可能性ならいくらでも考えられる。もうあの毒はバレたから要らなくなっただけで、別の方法で襲ってくるかもしれない。隊長さんも言ってたけど、裏に貴族がいるかもだって。あっ、そうだった、行方不明の使用人をこの家に紹介したのは以前の衛兵の幹部なんだってさ。そいつが色々悪いコトしてたらしいよ」


「どこにでも悪党はいるのでござるな。ではそやつを引っ捕らえれば……ケント殿が悩んでるということは、そうはいかぬということでござるか?」


「あー、うん。粛清、ってのをされたんだって。隊長さんは貴族の口封じじゃないかって言ってた」


「それは……では、手掛かりがないということで? まさに死人に口無しでござるな」


「うん。残りの使用人さんの身元を洗うって言ってるけど、今も残ってるなら怪しい人はいないだろうね。八方塞がり。あとはアークノ商会で犯罪ギルドの詳しい情報が出て来るのを期待するしかないねえ」


「なるほど、それで下手人の頭目の正体がわかれば捕縛も可能と」


「あー、それがね、アマンダさん、犯人を捕まえるよりご主人の安全を取るって」


「それは……いや、それも致しかたあるまい」


「新さんもそう思うんだ」


「ケント殿は異なる考えをお持ちか?」


「いや、まだこっちの人たちの考えに慣れないだけ。脅されてお金を払うんなら被害者だろうけど、安全を買うため犯罪者と取引すると考えれば、それって法律的にどうなのかなって。アマンダさんたちも犯罪者ギルドの関係者と思われないかな?」


「どうでござろうか? 確かに某も判断が付き申さぬ」


「だよねぇ……」


 こちとら頭脳も身体も普通の高校生だ。郷土史マニアのじっちゃんの名誉に懸けても解決案など出てくるわけもない。

 ため息しか出てこないな。


「隊長殿に相談してはいかがでござろう?」


「その隊長さんが手を引くって言ってるんだけどな。相談て、何を相談するんだ?」


「餅は餅屋。ケント殿が言っていた、どこからが犯罪になるか、でござるよ。アマンダ殿が犯罪者にならないというのであれば我らのお節介は必要ないでござろう」


「犯罪に当たるってことになったら?」


「……難しいでござるな。だからこそ隊長殿に相談すべきかと存ずる」


「まあ、それしかないか。この世界のユルさに期待するしかないな。ったく、日本じゃ考えられないよな。盗賊殺しても何も言われないし」


「そうでござるか? 己の身を守るのは、結局は己しかないでござるよ」


 そうだった。新さんは、ヘタしたらこの世界より殺伐とした戦国時代の人だったよ。自力救済が当たり前。勝てば官軍、負ければ賊軍。祇園精舎の鐘がどうの、盛者必衰がどうのだったか、そんな価値観持ってるんだろうな。

 いや、俺だって理解はできるよ。でも、現代日本で温い学生生活送っていた俺にいきなり実践しろっていわれても心の準備が……


 いやいや。問題はそこじゃなかった。


「あー、新さん。この際アマンダさんが犯罪者たちと取引するのが法に触れるか触れないかはアマンダさんの選択だ。放っておけばいい。問題はアマンダさんが神殿に頼るか頼らないかなんだ」


「それは……法に触れるとあらば神殿に頼るのでは?」


「いや、そうでもない。隊長さん、犯罪者ギルドの捜査打ち切るって言ってるんだ。アマンダさんが取引することも見逃すつもりらしい。詳しく聞かないと結局わかんないけど、たぶん、それぐらいじゃ犯罪にならないと思う。商売的な不正取引じゃなくて安全保障上の取引なんだから色々言い訳はできると思う。でないと、人手不足を理由に犯罪ギルドを野放しにした衛兵隊が犯罪者として看做されるんじゃないかな」


「なるほど。では、結局我らはいかがいたせばよいのでござろうか?」


「……静観するしかないね。もしアマンダさんが神殿を頼ろうとしたら、そのときは阻止する方向で。邪魔するんじゃなくて、俺たちで事件を解決しよう」


「具体的にはどのように?」


「さあ? とにかく神殿にバレないようにするのが大事なんだ。片っ端から犯罪者ギルドの連中を捕まえるとかすればいいんじゃない? 新さんの腕が頼りだな」


「……是非も無し、でござるか……」


 お? なんか信長っぽい? まあ、新さんが納得してくれたらそれでいいか。


 しかし、面倒なことにならないといいな。神爺さん、クーデターはよ!


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