第46話 ここでやっと名前が登場
毒薬発見! しかし女性を泣かせてしまった! どうすりゃいいの?
毒薬発見の報告を衛兵隊本部にしてもらう。問題の部屋は現場保存のため封鎖。
応援が来るまでルームメイトさんに泣き止んでもらおう。
「……すみませんでした……」
先ほどから『すみません』しか言わなくなったルームメイトさん、名前はルビーさんというらしい。アマンダさんに一室借りて事情聴取中。というより応援が来るまで隔離&見張りだ。
当然二人きりじゃないよ。
余り多いと恐がるかもしれないのでアマンダさんと執事さんが付き添い、衛兵さん一人と俺の二人で監視することにした。新さんはムングルトさんの護衛に回った。
「えーと、これは尋問じゃないですが、軽く質問してもいいですか?」
正式な取調べは当然衛兵隊がやるとしても、関わった者として知りたいことはあるのだ。
同席している衛兵さんもただ待っているよりは、と許可してくれた。ルビーさんも先に身の潔白が証明されれば本番の取調べでも落ち着いて対応できるだろうしね。
泣きながら一生懸命答えてくれたが、ルビーさんから聞いた内容はアマンダさんが他の使用人たちから聞いたこととほぼ同じだった。
朝起きるとルームメイトのジェーン(ここでやっと名前が登場)の姿がなかった。しかし使用人が早起きするのは当然で気にも留めなかったという。
ジェーンのベッドの上の薬ビンについても全く気が付かなかったらしい。この件に関しては、『お仕えするご主人様やお客様のお部屋でのことなら重大なミスですが、自室なら仕方ありません』と執事さん(ガーランドさんという名前だそうだ)が擁護。アマンダさんも認めたため不問になる。衛兵さんも他人の家のことまでは口を出さないと黙認した。
この段階でルビーさんがやっと泣き止んだ。
以前は衛兵隊に目を付けられるとヒドイ目に遭うと噂されていたらしい。もちろん神殿に駆け込んで助けを求めることも出来るが大金がかかる。借金との引き換えの身の潔白を証明するか、冤罪で裁かれるか、庶民にとってどちらも遠慮したいものだ。
今では『犯罪判別装置』があるので、気軽とはいえないが、冤罪は減るだろう。しかし、庶民としては容疑者になるというだけで社会的に不利になることも否めない。ここら辺は現代日本と同じだな。
ただ、完全に容疑者から外されたわけではない。何といってもここは剣と魔法の世界なのだ。仮にルビーさんが真犯人とすると、罪をルームメイトのジェーンに押し付けるため殺害、死体は魔法で処分、ということも考えられる。俺でも犯行は可能だ。死体を亜空間倉庫に入れれば完全犯罪なのだ。いやー、犯罪者判別装置サマサマだな! もっと普及してほしい。ルビーさんも本番の取調べが待ち遠しいことだろう。
ちなみにルビーさんをフル鑑定してみたところ怪しげなスキルや魔法は持っていなかった。ほぼシロである。
ちなみのちなみに、いくらカンストしていても俺と新さんの鑑定スキルでは犯罪者かどうかはわからない。神界のネットにアクセスする権限が制限されているからだ。無理にアクセスすると現権力者の神たちに存在がバレる。これはナビさん情報だ。
そう考えると最近登場した犯罪者判別装置は神界にアクセスできるんだろう。というか、時期的に魔王を判別するために代表神たちが用意したモノなのではないかと今更ながら思っている。一度使ったことがあるが、情報が神界に漏れてないといいな~。イレギュラーがあったから『魔王』の称号はなかったし、大丈夫かな?
衛兵隊の応援を待ちながら朝食をもらった。いや、まだ早朝なんだよね? 付き添いの衛兵さんも褒めてた。よくメイドがいなくなったことに気が付いたって。言ってることさっきと違うよね? あ、報告のタイミングのこと? よくはわからんが、ハーベスト商会の規模なら大勢の使用人がいて、仕事中は各自バラバラだから一人二人見かけなくても普通は気付かないって。じゃあ何故さっきはあんな態度を取った? え? こんなに早く気付けるんならいなくなる前に気付いてほしいって? そりゃ無茶だ。
衛兵さんも無茶な要求だったと考え直してルビーさんに謝っていた。
ルビーさんも恐縮していたが、表情は更によくなっていた。うん、疑いが晴れてよかったね?
そうこうしていると、ついに応援の衛兵さんがやってきた。それも隊長さん自らのお出ましだ。
「毒が見つかったって?」
「あー、はい。毒だとは鑑定に出ませんが、ウスノースのアークノ商会にあったものと同じ成分ですね。それについては間違いないです」
「そうか。ホントにあったか……よし! いなくなったという使用人を指名手配しろ!」
隊長さんの号令で連れてこられた衛兵さんたちが一斉に屋敷を飛び出していった。
隊長さんは詳しいことが聞きたいと関係者を集める。
あれ? 現場検証はしないの? 先に説明ですか。はいはい。
集まったのは先ほどと同じ部屋。メンバーも同じ。それに隊長さんと書記役の衛兵さんが加わっただけだ。
説明は昨日から俺たちに付き添っていた衛兵さん(テリーさんという名前)から始まり、時折俺に確認があった。
昨日は時間も遅かったので捜査は限られた場所に留まった。ムングルトさんの寝室、厨房などだ。毒が仕込まれそうな食材や水差し、本命の薬を調べたが成果はなかった。聞き取り調査も行なったが、ムングルトさんだけが口にするものといえば病人食か薬だけなので捜査は難航した。どう考えても直前に混入されたとしか思えない。魔法で遠隔操作しているならお手上げだ。
そんなわけで素人捜査ではなんともしがたく、一日目は終了することにしたのだ。屋敷を隅から隅まで捜索するには明るい内がいいし、従業員全員を取り調べるのも衛兵隊の応援が必要だとテリーさんも認めたからだ。
で、翌日、つまり今朝になって事態が進行したわけである。
そこの説明もテリーさんが中心となって説明した。何度もルビーさんの名前が出てくるが、その度にルビーさんはビクビクしていた。
「うーむ、わけがわからん。毒が見つかったのはいいことだが、あからさますぎやしないか? そこんとこ、どう思う?」
説明を聞いていた隊長さん(バッツさんという名前だった)が俺に聞いてきた。何故に?
「えーと、捜査は素人なんですが……」
「かまわん。何でもいいから気付いたこと教えてくれ」
「あー、怒りません?」
「怒らん。言ってみろ」
「じゃあ言わせてもらいますが、従業員とか使用人の身元、調べましたか?」
「なに?」
「ウスノースから連絡あったの、何日か前ですよね? 護衛を派遣してたのは知ってますが、どんな調査したんですか? いや、イヤミで言ってるわけじゃなくて、ただ捜査状況を知りたいなと。事前に身元が怪しい使用人がいたならそれこそあの装置で調べればよかったんじゃないかなと」
「……残念だが、鳥便の紙切れ一枚じゃ大々的な捜査はできねえ。鑑定に出ない毒なんて言われても調べようがねえ。身元調査についてもだ。言い訳するわけじゃねえが、衛兵の規律を正したばかりでな、確証もなしに余り突っ込んだことは憚れるんだよ」
「あー、そういうことですか。事情も知らないで変なこと言ってすみませんでした」
マズい!? やっぱり素人が口出すことじゃないよな! 怒られるかな?
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