第45話 こりゃ決まりだな
首尾よくドルノースに帰還。それはいいが、毒薬の捜査を頼まれた!? 思わず引き受けてしまったが、俺って只の高校生よ!? 期待が重い!
「今日はここまでにしよう」
「……仕方ないでござるな」
「まあ、そう簡単に見つかったら苦労はしないな」
日が暮れた。
ハーベスト商会は結構な身代で照明器具も多いが現代日本とは比べるべくもない。魔法で光も出せるが俺は捜査の中断を申し入れた。
新さんも、付き添いの衛兵さんも同意してくれる。きっと戦国時代とこの世界の感覚は似ているんだろう。
「ケントさん、シンさん、今日はこちらにお泊りください。粗末ですが夕食もご用意させてありますので」
「それじゃ、お言葉に甘えます」
「かたじけない」
着替えて少し休憩したアマンダさんは俺たちの捜査に合流して来た。会長夫人が一緒にいると捜索が実にスムーズだった。
しかし、結果は出ない。
正直にいえば、こうなることは予想していた。戦闘ならチートのゴリ押しで俺でも何とかなるが、家宅捜査に適したチートは持っていない。ピンポイントで毒薬を発見するなんて運任せじゃん。ナビさんにも聞いてみた。答えは不可能の三文字である。片っ端から目に付いたものを鑑定する作業が続いた。
いや、実はナビさんからアドバイスはあったのだ。
それはハーベスト商会の関係者、従業員や使用人に魅了をかけて犯罪者ギルドの人間がいないか調べるというものだ。
新さんと内密に協議した結果、却下した。
アマンダさんの願いは叶えてやりたいが、さすがに俺のチートをすべて曝け出すわけにはいかない。鑑定も低レベルだと誤魔化しているくらいだ。闇魔法を使えるなんてバレたらどうなるか。いや、まだこの世界の常識は知らないけど、国に警戒されそうなのは想像に難くない。
まあ、ムングルトさんをフル鑑定してみたところ、治療の予後は順調みたいでリハビリに専念すれば健康体を取り戻せそうだ。
あとは変なモノを口にしないように気をつければいい。低レベルの鑑定でも、毒とは表示されないが見慣れない成分はわかるので、そういう人材を雇えばいい。
明日もう一日捜索しても見つからなかったらアマンダさんに提案してみよう。大本のアークノ商会が捕まったのだから雇われただけの犯罪者ギルドも手を引く可能性もある。『犯罪者にも矜持がある! 依頼はやり遂げる!』とか『こうなれば皆殺しだ!』なんて言い出さないでほしいところだ。
アマンダさんに案内され夕食を食べる。
軽く状況を確認してみた。
ウスノースの衛兵隊からドルノースに連絡が来てすぐに護衛が派遣されてきたそうだ。今も交代でムングルトさんの寝室前を見張っている。毒による犯行だというのは、やはり低レベルの鑑定持ちしかいなかったので半信半疑だそうだ。しかし、正式な報告だからと、規律が正常化した衛兵隊は真剣に取り組んでいるという。聞くところによると、以前は相当腐敗していたらしい。今はイメージアップに努めているというところかな?
それから、カマロたち『稲妻とグリフォン』は依頼完了で一旦ギルドに報告に向かったそうだ。ハーベスト商会の護衛は今後も続けるらしいので早ければ明日にでも再依頼するとのこと。
アマンダさんに挨拶して休ませてもらう。特別に客室を貸してもらえた! 全力が出せないのが心苦しい!
新さんと苦笑しながらベッドに入る。
クリーンの魔法があるから風呂がなくても快適だ。そういえば風呂なしにも慣れた。もう2週間近いからな。
お休みなさい。
事態が動いたのは翌日、俺たちが異世界転移してきて13日目のことであった。
「どうかしましたか?」
館が少し騒がしい。
朝起きてそんな気がした。商人の家だからかもしれないし、初めて来たところだからこれが日常だといわれればそんなものかと納得できる程度だが、気になるものは気になる。
「ああ、ケントさん、お見苦しいところを。実は使用人が一人いなくなりまして……」
捜索を再開する前に挨拶をと思いアマンダさんを探して、ついでに聞いてみるとそんな答えが。
「……えーと、言いにくいんですが、その人が怪しいんじゃ?」
「……私もそう思います」
身も蓋もない予想だが、この状況ではそうとしか思えない。
とにかくその使用人の部屋に向かった。
途中説明を聞く。
この屋敷の使用人は通いと住み込みの両方がいるらしい。独身は住み込みで家庭持ちは通いだそうだ。問題の使用人は若い女性、わかりやすくいえばメイドさんだ。
大きな敷地の一角に使用人用の建物があり、何人かの使用人をはじめ衛兵さんの一部も集まっていた。全員だとムングルトさんが無防備になってしまう。陽動かも知れないからな!
「奥様!」
アマンダさんと俺たちが到着すると使用人の代表らしい、年配の男性が話しかけてきた。執事さんってところかな? しらんけど。
詳しい説明を衛兵さん共々聞く。一応俺と新さんも衛兵さんの格好だからな。
使用人の部屋はすべて二人部屋。問題のメイドさんも当然ルームメイトがいた。その人は真っ青になりながら衛兵さんの質問に答えていく。
朝起きると問題のメイドの姿はなかった。しかし、使用人の朝は早くて当然。ルームメイトの彼女も気にすることなく朝のお勤めに部屋を出たようだ。
仕事をしているうちに館のどこにも問題のメイドの姿がない。朝食のときに仲間に聞いても見ていないという。いくら仕事が忙しくても朝食の場に現れないのはおかしい。しかも今は絶賛捜査中なのだ。悪い予感がしたルームメイトの彼女は仲間と相談して上役の執事さんが出勤して来るとすぐに報告した。報連相。いいね!
執事さんも状況が状況なのですぐに対応、屋敷を捜索し問題のメイドを探させた。俺が騒がしいと思ったのはこのせいであるらしい。
そして衛兵さんにも報告し、使用人棟に集合した。今ここ。
「その女が出て行ったのに気が付かなかったのか?」
「すみません、すみません」
衛兵さんの質問に謝るばかりのルームメイトさんだった。もはや涙腺が決壊している。
「まあまあ、とにかく調べてみましょう」
アマンダさんも執事さんも彼女を責めるつもりはなさそうだが、衛兵さんの手前庇うことも出来ない、そんな表情をしている。仕方ないので俺が前向きに話を進めよう。
今の今まで仲間だと思っていたんだから仕方のない話だ。それにまだいなくなったメイドさんが犯人と決まったわけでもないからな。
と思っていました。
「……新さん、こりゃ決まりだな」
「そうでござるな……」
女性の部屋に入るのは実は初めてだ。
それはともかく、これは捜査である。張り切って何かしらの証拠を探そうとしたところ、二つあるベッドの一つに、これ見よがしに小さなビンが転がっていた。
鑑定してみると、まさに探していた毒が入っている。
「えーと、気付かなかったんですか?」
「すみません、すみません!」
しまった! 俺も女性を泣かせてしまった!
証拠は見つかったが、ルームメイトさんを宥めるのに結構な時間を取られてグダグダな一日の始まりであった。
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