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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第43話 話は聞いている。本部に出頭してくれ


 冒険者といえば護衛、護衛といえば冒険者。

 魔物討伐はって? 俺はこの世界で魔物討伐はしたくないの。あ、食用の狩りは別だよ? これはこれ、それはそれの精神だ。


「よーし、野営の準備するぞー」


 カマロの指示で俺たちは動いた。

 アマンダさんは夜通し進みたがったが、皆でやんわりと反対した。


 ここはウスノースとドルノースの中間地点。大過なく到着した。

 途中ドルノース方面からの商隊とすれ違って、休憩がてら情報収集なんかもしたが、ほしい情報は得られなかった。まあ、ストレートに犯罪ギルドのネタなんか振れないし。ただ、この辺の盗賊が2グループ壊滅したという情報は流れているようで、ウスノースに向かう商隊も増えるのではないかという話はでた。それやったの自分たちです。

 その証拠に、中間の野営地には両方面からの商隊が複数野営の準備をしている。


 ここまで盗賊も魔物の襲撃もなかったが、もし魔物が出たら、俺は戦えるのかと不安に思っていた。人間の盗賊ならもう覚悟は出来ているし、実際何人か殺してしまっている。そこに後悔も不安もない。でも……


「ケント殿。またちーとのことを考えておるのでござるか?」


 なんとなく手が止まっていると新さんが目敏く見咎めてきた。

 俺は作業を再開しながら答える。


「いや、魔物が出たら戦えるかなって思って……」


「悪鬼妖怪でござるか? それは戦うしかないでござろう」


「いや、だって、爺さんの話きいて、実際にゴブリンと会話しちゃったらねえ? 情が湧くっていうか、同情するっていうか……」


「ふむ。言わんとすることはわかりもうす。ケント殿はあれらを人と同じく見ているのでござるな?」


「そんな感じかな? ほら、俺の時代の説明はしただろ? 魔物と仲良く暮らすっていう作品も多かったんだ。実際神たちの失敗がなかったらそうなってたかもしれないし」


「ふむ。ならば話は簡単にござる。人と同じであれば人と同じ対応をすれば宜しかろう」


「人と同じ?」


「左様。某とて好き好んで人を斬るような人道を外れる行いは致したくはござらぬ。しかしながら、戦うべきときは戦い、斬るべきときは斬る、そのような覚悟の前では人も悪鬼妖怪も同じでござる」


「頭ではわかってるつもりなんだけどなあ……」


 俺はなお考えた。

 小説の主人公のようにわざわざ魔物の集落を探して殲滅するのは、特にこの世界ではやりたくない。戦略としては正しいんだろうけど、魔物をゲームの悪役のようにデザインした神どものやり方に腹が立つ。戦うんなら悪辣な神ども相手だろう。

 しかし、チートはあるがそれ自体が神爺さんからの借り物だ。本物の神たち相手には通じないだろう。ここでご都合主義的にまた別の世界の神サマが『力がほしいか?』とかいって乱入してきてもノーサンキューである。

 何しろ俺たちは元の世界に帰るまで潜伏していなければならないのだから。


 結局、自分が一番大事という結論になる。

 でも心では納得がいかない。チートがあるんだから助けられるものは助けよう、などと偽善的発想が生まれて、堂々巡りになってしまうのだ。


「はぁ……これがゲームだったらなあ。何も考えないで無双するのに……」


「げえむでござるか? 何度聞いてもよくわからぬでござるが、らのべなる読み物は理解できるでござるよ。某もこの異世界とやらは夢なのではないかと今も考えているでござる。唐天竺の故事にて胡蝶になる夢を見た御仁が目を覚ますと目の前の粥がまだ煮えておらぬという話を聞いたことがござる。某も目を覚ますとそこは奥州の旅の途中で、飯の支度の最中に居眠りをしているのではないかと」


「あー、それ聞いたことある。受験生だからじゃねえな。小説の導入部分でよく出てきた気がする。まあ、それに関しちゃ神爺さんが戻してくれるっていうんだから結果的に似たような感想を持つだろうな。それこそ成功するように神に祈るしかねえよ。

 問題はそれまでどう暮らしていくかなんだよな」


「ケント殿の身は某が守るでござる」


「いやいや。新さんばかりに頼るわけにはいかないから」


「いやいや、某こそケント殿に頼ってばかりでござるよ」


「いやいや、俺こそ――」


「いやいや、某こそ――」


 その後俺たちはイヤイヤ合戦をカマロに止められるまで続けた。

 こうして野営の夜は更けていった。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 異世界12日目。


 アマンダさんの希望で早立ちする。

 今度は到着予定地が目的地のドルノースなので早いに越したことはない。

 出来ればほかの商隊と一緒のほうがより安全なのだが、アークノ商会の一件で、これ以上盗賊の襲撃はないだろうとの希望的予測のもと、アマンダさんの希望通りペースを上げた。


 俺は慣れない乗馬ながら、何とかついて行っている。ケツが痛い。切実に治癒魔法がほしい。乗馬スキルでも可。まあ、ダメなときは馬車に乗せてもらおう。


 その後何度か休憩を挟んで、予定より早くドルノースに到着した。もちろん盗賊や魔物の襲撃はなかった。時折獣の姿が見られたが、こちらも襲われることはなかった。


「ハーベスト商会か。話は聞いている。本部に出頭してくれ」


 外門の衛兵さんがカマロの顔を見てすぐに反応してくれた。

 しかし、それ以上の情報はくれないようだ。

 俺と新さんも今回はギルドカードですんなり入門? 入国? 許可が出る。やっぱり金貨一枚は高いよな。ギルドに入ってよかったよ。


 アマンダさんはすぐにでもご主人のムングルトさんに会いたいところを我慢して衛兵隊の本部に向かう。馬車を6台も引き連れていく必要はないので従業員と5台の馬車は商会に帰すことに。

 俺もお役御免かと思ったのだが、アマンダさんとカマロに懇願されて本部まで付き合うことになった。そういえばウスノースでの捕り物に参加してしまったのだから、事情は聞かれるんだろうな。


 本部に着くとすぐに会議室に案内され、南門から連絡が来ていたのだろう、以前会ったことのある隊長さん? が待っていた。


「ハーベスト会長夫人、ウスノースから連絡は来ています。実際に夫人が狙いだったとは災難でしたな」


 特に仰々しい挨拶は無しに話が始まった。


「あの! 主人は無事でしょうか!」


 アマンダさんにとってこれが一番聞きたかったことだろう。


「ええ、無事です。確かに連絡にあったとおり、治癒院の治療で治っていますな」


「再発は? 毒はどうなっていますか?」


「その件ですが、こちらも高レベルの鑑定持ちがいないのでハッキリしたことはわかっていません」


「そんな……」


「ああ、念のためウチの人間が護衛についています。まさか衛兵を目の前にして毒を盛るとは思えませんな。今のところ何も報告がないのでご主人の容態は変わりないでしょう」


「そうですか……」


 アマンダさんは安心したような、それでもまだ不安なような、そんな表情をしていた。


 その後はウスノースでの捕り物の話になる。

 俺が主に質問されていた。

 そして肝心の毒薬の話になる。


「それで、お前さんの鑑定ではわからないというんだな?」


「はい。アークノ商会の会長の独り言を聞いてそれとわかりました」


 思いっきり嘘をついてしまった。嘘発見の魔道具がないことを祈る。というか、あるなら容疑者に使ってほしい。

 でも、神爺さんとの約束で目立つことは極力避けたいんだ。ここは神に免じて許してほしい。そもそも部外者が出しゃばってもいいことはないからな。衛兵さんたちの努力を期待しよう。


 俺の答えに会議室は沈黙に包まれるのだった。


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