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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第4話 俺は400年後の未来から来ました

新作始めました。二作品あります。是非よろしくお願いします。


別作品『鋼の精神を持つ男――になりたい!』 https://ncode.syosetu.com/n1634ho/ 月水金0時投稿予定。


本作品『相棒はご先祖サマ!?』 https://ncode.syosetu.com/n1665ho/ 火木土0時投稿予定。



 森の中に異世界転移、と思いきや、偶然苗字が同じお武家様に出会った。しかも出身地まで同じ? 御先祖様フラグが立った? 守らないと俺の存在がタイムパラドックスとやらで消滅? そんなSF展開は勘弁です。



 爺ちゃんから伝授された知識で状況を把握。ありがとう爺ちゃん。話聞く度にうざいとか思ってごめんね。戻れたら孝行するから……はあ、戻れたら、か……実際、事態は何も好転していないな。とにかく、この山? 森? を脱出してから歴史チートを考えよう。


 何、持っていたカバンに色々教科書が入っている。その中に日本史の教科書も。そう、置き勉してたのを今日回収したのだ。

 関が原の戦いは1600年。受験生じゃなくても覚えやすい。佐竹藩の国替え時期については詳しくは覚えてないが、領地丸ごとの引越しだ。戦後処理の手続きも面倒だろうし、引越しトラック便があるわけじゃなし、一、二年はかかるんじゃないか?

 そうすると今は1602年前後、今後は江戸幕府開設や大阪夏・冬の陣、家康死去などイベント満載。ぐふふふふ……


 おっと、今は脱出が優先だった。


 だが、その前にやっておくイベントが。

 身バレである。

 タイミングが難しい。隣でポテチに舌鼓を打っているお武家様は俺のことをワケあり高級武士の問題児だと思ってるようで、身元を尋ねようとしない。だが状況次第では信頼ポイント激減、この時代だと火炙りにされても不思議がない。何せ正体はド庶民。逆の立場だったなら「この印籠が~」とか「桜吹雪が~」とかキメ台詞を吐けるのに。


 ポテチ一袋なくなったところで告白タイムといくか。


「馳走になり申した。詳しくは尋ねませぬが、やはり南蛮渡来のものでござろうか? 実に味わい深い。貴重な物ではござらぬか?」


「いえいえ。お気になさらずに。それより、こちらも聞いてもらいたいことがあるのですが……」


「……拝聴致そう」


「どうも……じゃあ、まずは、俺、武士じゃありません」


「……それは……勘当された故……というワケではないのでござるな? されど、農民には見えぬし、非人にしては身奇麗に過ぎる。では、堺で南蛮人と関係を持つ大店商人の息子か……」


「いや、別にクイズを出してるわけじゃなくてね、これからちゃんと説明しますよ。ただ、信じられないかもしれないので……」


「わかった。聞こう」


「はい。俺は400年後の未来から来ました」


 ぶっちゃけました。

 反応がないけど、どうだろ。


 俺が現代日本で初対面の人からいきなりそんなセリフを聞かされたらどう反応する? 「はあ、そうですか。じゃあこれで失礼します」とか言って逃亡を選択するだろう。元からの知り合いが告白してきたなら、相手のキャラ次第だが、「じゃあ、俺は地底人枠でいいぞ」とか話に乗った振りして結局は信じないんだろうな。七割冗談、二割詐欺、残りの一割は本気でイタイ人扱いだろう。現代日本はシビアなのだ。


「やっぱり信じられないですか」


「信じることはできぬが……」


「では何者だと言われても、それ以外の答えはないんですよね。証拠もあるような、ないような。それも信じてもらうしかないんですよ」


 日本史の教科書見せたところで、捏造だと言われればそこで終わり。コーラやポテチはメイドイン南蛮が合理的解釈。未来の出来事を伝えても、それが本当に起こるまで時間もかかるし、第一それは占い師の領分だ。

 本気で身分を証明するって難しいんだな。現代地球だって、指紋とかDNA鑑定とかあるんだろうけど、そもそも登録されてなきゃ意味がない。22世紀ぐらいには実用化されるのだろうか。


「うむ……」


「いや、要は武士だと思われても後で面倒になりそうじゃないですか。だから先に言っておこうと思っただけで未来云々は忘れてもらって構いません」


「う、うむ。さようか。あいわかった。では、何故ここにおる?」


 少しは話が進んだ。


「そう! それが問題! いや、街で買い物してたら、いきなり森の中にいて、帰り道もわからなくて、どうせ帰れないならとりあえず人の居るところに行きたくて……」


「む、お主もか!」


「はあ、アレですね、この時代だと、『神隠し』ってやつかな」


「なるほど、神隠しか。納得行った」


 納得するんだ。


「それで、ですね、できれば森を出るまで協力してくれないかな~と。熊とか怖いですから。あ、食料はお分けしますよ。何せ命がかかってますから」


「それは願ってもない。こちらから頼む」


「それから、ですね。森を出た後のことですが、この時代のお金が……秋田が近いんならそこまで連れて行ってくれませんか? できれば、そこで仕事を紹介してくれるとありがたいんですが……」


「む、金子か。そうであるな、貴重な食料を分けてもらうのだから相応の礼はせぬとな。あいわかった。上役にも相談するゆえ安心すると良い。ひょっとすると御家老辺りが興味を持たれて仕官が叶うやも知れぬぞ」


「いやいや、そこまでは考えてませんから。しばらく食べられるだけ稼げればいいですから。どちらにしろ、よろしくお願いします」


「む? そうか。まあ、これも何かの縁。何事によらず話してみるが良い。某にできることなら何とかしてやろう」


「はい。大助かりです」


 若くて下っ端とか言ってたけど武士は武士。コネゲット! 

 しかし、一生帰れなかったらマジどうしよう? 受験に失敗してからのニート生活に絶望してるわけじゃないんだから、マジショック。あ、泣きそう……


 いや、ここは目先の命大事にだ。


「それで、これからどうします? 道どころか方角もわからないんですが」


「む、できれば開けた場所までは辿り着きたい。ここでは火も起こせそうにない故な。日が暮れるまでまだ間がある。歩くしかない」


「わかりましたが、どの方向に?」


「むむ。運に任せるしかないな。そなたが決めてくれ。食事も水も世話になるゆえ、某が口を出さぬ方が良い」


 おう、男前。でも、運任せなのはしょうがないか。よし!


「じゃあ、あっちで」


 適当に、といっても木漏れ日から判断して西っぽい方角を指差した。もし本当にここが奥羽山脈だとしたら秋田は日本海側、つまり西側だ。


 新之助様も意見はなさそうなので前に進もう! 荷物はまだ重いが、心は大分軽くなった気がする。やはり一人より二人。


 この先も誰かと出会えるといいな~。

次話4月7日木曜日0時投稿予定です。

以後この作品は作者がエタらない限り毎週月水金0時に投稿します。


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