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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第37話 くっ、くははははは! お前たち! 出会え!

 目には目を。歯には歯を。陰謀には陰謀を。って、そんなに大袈裟なものじゃない。日本の警察がやったら世間がうるさい別件逮捕。その程度だ。だって異世界だから問題なし!



 sideアークノ商会・会長


「旦那さま。ただいま連絡が入りました。北門は閉じられ、ハーベスト商会らしき商隊が入ってきた様子はなかったそうです。また、ハーベストの会長夫人らしき女性が一人衛兵隊に保護されて来たのが確認されたとのことです」


 日暮れの鐘が鳴ったあと、秘書から報告があった。

 ふん、既にコアクットから報告を受けているわい。どうやら衛兵どもも投げ文どおり動いてくれたらしい。アマンダに死なれてはワシの楽しみが減るからな。


「うむ。下がっていいぞ。夫人がやってきたら知らせるように……」


「旦那様。失礼します。今、ハーベスト商会の奥様が表に……」


 秘書に指示を出そうとしたら別の使用人が報告に来おった。

 もう来たか。ぐふふふ、さぞ慌てておることだろうよ。


「応接室に通しておけ」


「はい。かしこまりました」


「お前は隣の部屋に用心棒どもを用意させておけ」


「はい」


 秘書に指示を出し、二人を下がらせる。

 ぐふふふ。これで煮るのも焼くのもワシの思うがままだ。一思いに止めを刺してやるか? それともさらに甘い言葉をかけてじっくり嬲るのも楽しいわい。


「旦那様。お案内しました。それから……」


 アマンダの苦しむ顔を想像していると再び秘書がやってくる。だが、歯切れが悪い。


「何だ?」


「はい。衛兵が一緒に来てます」


「衛兵? 何故中まで入れた?」


「それが、まだ盗賊襲撃に関して聞くことがあるとのことで、特別護衛中なのだとか……」


「ちっ、最近の衛兵は融通が利かないヤツが多いな。まあ、部外者がいたところで契約に問題があるわけでもない。行くぞ」


「はい」


 ワシは秘書を連れ応接室に向かった。


 応接室に入ると、長椅子に座ったアマンダと、その後ろに衛兵が二人立っている。

 ちっ、邪魔するようなら契約不履行を盾に追い出してやる。


「やあやあ、アマンダさん。今回は御不幸でしたな」


「……お耳が早いですね」


 ちっ、衛兵の前で嫌な言い方をしおって。ワシを疑っているのか? 


「そりゃあ商売柄当然ですな」


「では、私が夜分遅く尋ねてきた理由も?」


「ええ。予想はつきます。期限の延長をお望みですかな? 残念ですが、契約は契約ですからな」


「いえ。それはもう構いません。薬を売っていただきたいのです」


「何? これは驚いた。ですが、契約不履行で、となると、お高いですぞ?」


「構いません。今すぐ購入いたします」


 な、何故こんなに強気なのだ? 衛兵がいるからなのか?


「げ、現金はお持ちですかな? ツケ売りはしませんぞ?」


「ちょっといいか?」


 む。衛兵如きが商売に口を出すな!


「何でしょう? これはれっきとした取引。部外者は口を出してほしくありませんな」


「いや、そうでもないぞ? 話を聞けばおかしなことばかり。薬代値引きのためにべらぼうな安値で仕入れしてたんだろ? 何故先に薬を渡さない?」


「そういう契約でしたからな。第一当時は国外から取り寄せるために手元になかったですから。言いがかりは困りますな」


「だとしても何ヶ月も前のことだろ? 今はあるんだろな? 今日が契約の最終日って聞いたぜ。今薬の準備ができなかったら、それこそ詐欺だ。俺たちの出番だと思わないか?」


「ぐっ……と、当然用意してありますとも」


「じゃあ、見せてみろ。奥さんも買うとはっきり言っているんだ。ああ、言っておくが、こっちには『鑑定』スキル持ちもいるからな。おかしなマネはしないほうがいいぞ」


「何を失礼なことを。商人として当たり前のことです。では、用意してまいりますのでしばらくお待ちください」


 ワシは仕方なく席を立つ。


「旦那様……」


「うるさい! お前も『鑑定』持ちだろう。見破れたか?」


「いいえ。私のレベルでは……ですが、高レベルの人間なら……」


「ワシの『鑑定』でさえ見破れんのだ。衛兵如きにそんな人間がいるか! 大丈夫だ。今日誤魔化しさえすれば何とでもなる。これ以上は甚振れないがな」


 ワシは執務室に戻り、隠し部屋の扉を開けた。

 ここに、『鑑定』すれば『万能薬』と出てくる(解毒薬)がある。もちろん別の(毒薬)もあるがな。

 ぐふふふ。これを手に入れるのに苦労したぞ。大抵の薬師、治療師には毒とわからず、謎の病気にしか見えない。しかも、すぐには死なない。なんともワシに都合のいい薬だ。これこそが妙薬というものだ! まあ、普通の解毒魔法でも完治するし、何度も毒を盛るのに苦労はしたがな。


 だが、遊びは終わりのようだ。ムングルトの泥棒め! アマンダの売女めが! 身代を根こそぎ奪ってやる! 身体が治ったところで二人揃って自殺に見せかけて殺してやろう。ぐはははは!


「お待たせしました。これがどんな病気にも聞くといわれている『万能薬』です。ある国のダンジョンで見つかった物を王都の知人の伝手で手に入れたものです」


「ほう? これが……どうだ?」


 態度の大きい衛兵がもう一人の衛兵に聞く。こちらが『鑑定』持ちか。見るからにレベルが低そうだ。


 よし、頷くだけだ。どうやらウチの秘書と同じかそれ以下のスキルレベルのようだ。ん? 何やら耳打ちしているが……ふむ。もう一人も頷くだけか。勝った!


「では、私どもが真っ当な商いをしていることがわかりましたら、これから正式な商談に入ります。部外者の方は席を外していただけますかな?」


「おっと。忘れてたぜ。俺たちは商売の話で来てたんじゃねえよ。ここの使用人にコアクットってのがいるだろ? そいつに用があって来たんだ。呼んでくれや」


 なっ、何故コアクットの名前がここで出てくる!?


「こ、コアクット? 存じませんな。ウチにそのような者はおりませんが?」


「おいおい。調べはついてるんだぜ? 隠し立てするとためにならんぞ?」


「か、隠し立ても何も、本当に知らな……」


「コアクットーっ!! いたら出て来-い!」


 この衛兵は何をいきなり叫び出すのだ。

 確かに報告に来た後待機させたままだから商館のどこかにいるはず。しかし、衛兵が来ているとわかって顔を出すほどマヌケではなかろう……

 と思ったらバタバタと部屋の外が騒がしくなり、信じられないことが起こった。


「旦那! このコアクット、旦那のご命令でハーベスト商会の馬車を上手く襲撃させやしたぜ!」


「なっ! 何を言っている!」


 気でも狂ったのか、使用人に取り押さえられながら、コアクットは先刻聞いたのと待ったく同じ報告をこの場で繰り返した。

 そう、この場で。


「ほう、こいつが例のコアクットか。報告どおりだ。捕まえてくれ」


「承知」


「旦那! 聞いてくれ! 馬車は全滅、夫人は残して――ぐふっ」


 状況もわからず喚いていたコアクットを衛兵の一人が殴り倒した。

 まずい、使用人も追い払われ、身柄を押さえられた!


「そ、そんなヤツは知らん! ワシを殺そうとしていた! そいつを殺してくれ!」


「おいおい。俺たちを目の前にして穏やかじゃねえな。まあ、じっくり取り調べてやるから安心しな。ところで、そいつの話じゃ、アンタが盗賊に襲撃を命じたって?」


「知らん! 出鱈目だ!」


「この耳で聞いた以上、調べなきゃ俺の首が危ねえんだ。一つ協力してくれや」


 チンピラが騒いだところで知らぬ存ぜぬで通る。実際コアクットなど使用人として登録もしていないからな。調べたところで何も出て来はせん。


 だが、衛兵が床から持ち上げた魔道具らしきものをテーブルに置いたとき嫌な予感がした。レベル測定器かスキル判別器に似ているが、こんなもの持ち込んでいたか?


「これは? 私のレベルを測ってどうするつもりだ? スキル判別器なら拒否する」


「残念だが、レベルもスキルも関係ないな」


「では、尚更そんなワケのわからない魔道具を使いたくはない!」


「残念ながら拒否権はないぞ。コイツの正体を聞いてから拒否するなら尚更な」


「ま、まさか……」


 噂には聞いたことがある。近年国内の騎士、衛兵隊の中で大規模な粛清と意識改革がなされた。

 だが、混乱も大きかったため、国民への使用は禁止されたはず。


「そうだ。『犯罪者判別器』だ。まあ、通称だがな。さて、自分が潔白だと思っているなら安心して手を出しな」


「そ、それは国民への使用は禁止されているはず……」


「ん? そんなコトはねえぞ。上司の許可があれば問題ない。ほれ、手を出せ。でないとますます疑いが濃くなるぜ?」


「くっ、くははははは! お前たち! 出会え!」


 こんなことになるとは思いもしなかったが、用心棒を用意しておいて助かった。幸い衛兵は二人きり。こいつらの口を封じればチンピラと用心棒の暴走ということで片が着く!


「おっ? これも予想通りか? おっかねえな。冒険者ってやつはよ」


 何を今更。その余裕は何だ! 気に入らん!


「そいつらは衛兵に化けた強盗だ! 殺した者には大金貨をやるぞ!」


「そいつは豪勢だ!」


「ひゃっはーっ! 俺がもらったっあべしっ!」


 一体何が起こった! 

 ワシの計画通り用心棒という名前だけの闇ギルドの手錬れたちが衛兵に襲い掛かろうとしたのに、まるで見えない拳に殴られたように倒れていく。


「ホント、おっかねえ冒険者だ。まあ、これで判別器を使うまでもなくなったがな。もう出てきていいんじゃねえか?」


 いつの間にか衛兵が3人になっていたような気がする。

 しかし、ワシはそれ以上何も考えられなかった……


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