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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第35話 アークノ商会、知っていますか?


 盗賊が襲ってきた。返り討ちにした。装備品を手に入れた。ここまでならラッキーの一言で済んだのに。面倒な情報まで手に入れてしまった。




『話がある』と言ってカマロをアマンダさんのキャビンの中に引っ張り込んだのだが、どう話せばいいのか……


「俺も混乱してるから、悪いけどちょっと考えをまとめるまで待っててください」


「わかりました」


 これまでの働きで信用はされてるみたい。早いとこ整理しよう。


 俺が一番悩んでるのは、『何故異世界に来てすぐにトラブルに巻き込まれてしまうのか』という点だ。

 これではチート主人公ではないか。そういう法則でもあるのか? やっぱり神たちの手のひらの上なのか? 代表神たちの目に留まらないようにしている立場としては勘弁してほしい。


 新さんの場合はどうだろう? 比べてみる。

 最近国家規模のトラブルに巻き込まれてるな。関が原の戦い。直接戦闘はなかったが、所属している藩が国替えという大事件に発展して引越しの最中だった。

 そんなトラブルに比べれば盗賊騒ぎなど大した問題じゃないかもしれない。


 俺との違いは何だ? 時代が違うだけじゃないだろう。

 もし現代日本で自分とは関係ないトラブル、強盗なんかを見かけたらどうする? 戦う? いや、通報して終わりだ。大概の人はそうだろう。通報すらしない場合だって多そうだ。

 それは何故か?

 立場、環境が違うからとしかいえない。俺は普通の高校生だった。両親も普通のサラリーマン。周りに特殊な職業の人もいなかった。

 逆に特殊な立場の人だったら? 警察、探偵、軍人、ヤ○ザ……トラブルに飛び込むのが仕事みたいなものだ。


 そう考えると、新さんは武士。軍人と警察みたいなもの。トラブルに対応するのが仕事だ。

 もし新さんが農民や職人だったとしたら、戦争も国替えも我関せずで畑を耕し、物造りに精を出していたことだろう。


 今の俺の立場は? 受験生ではない。冒険者だ。

 民間と公務員の差はあるが、軍人みたいなものだ。トラブルが起きそうだから雇われる。起きたら起きたで対処しなければならない。

 仕事だから。

 もし、異世界でも普通のサラリーマンに、職人とかになっていればトラブルなど滅多に巻き込まれなかっただろう。


 旅をすることを選択した時点で職業も自動的に決まったようなもんだからデメリットは甘受すべきだな。うん。今本当に納得できた気がする。


「よし、纏まった。じゃあ、アマンダさん。これから話します」


「は、はい。お聞きします……」


 しばらく黙り込んでいた俺が突然声を上げたもんだからアマンダさんビックリしたようだ。ごめんなさい。


「実は、さっきの戦闘中、山の方に不審な反応があったんです。調べてみると、二人(・・)の人間が様子を窺ってました」


 なるべく『闇属性魔法』は隠したい。『魅了』で聞き出した、というより盗賊が二人で会話していたのをこっそり聞いた、という形にしたいのだ。


「気配を消して二人の会話を聞いてみると、やっぱり盗賊の仲間で、雇い主に報告するための見張り役だったみたいです」


「雇い主? あの盗賊は誰かに頼まれて私たちを襲ったというのですか?」


「はい。あくまで俺が聞いた話ですから、信用しますか?」


「勿論です。ケントさんを疑う理由がありません」


 そんなに信用されてもプレッシャーなんだけど……確かに俺は信頼できる相手だろう。状況的に。しかし、ラノベではわざわざ信用できる状況を作り、最後の最後で裏切って相手を絶望させるっていう鬼畜パターンも存在する。今回の敵も信用という点では似たようなモンじゃないか?


「じゃあ、言いますけど。アークノ商会、知っていますか?」


「そんな!」


「バカな! アークノ商会はアマンダさんとこの取引相手だ! これまで何度も荷を卸してる。お前も聞いただろう、ハーベストの会長さんの薬を売ってもらうために赤字覚悟でだ! 向こうは大儲けだ、わざわざ危ない橋を渡る必要はねえだろう!」


 やっぱり信用があるんだな。


「その薬なんですけどね、解毒剤みたいですよ。ハーベストの会長さんに毒を盛って病気にして身代を潰すとか何とか」


「毒……」


「あ、アマンダさん!」


 ショックを受けたアマンダさんが座ったままだがふらりと倒れそうになった。悪いことしたとは思うけど、話さないわけにもいかなかったよ。


「ど、どうしてそんなこと……」


 気を失うまでは行かなかったアマンダさん、何とか声を出した、という感じだった。


「二人の盗賊の会話だと、何でもアークノ商会の会長はアマンダさんに横恋慕してるそうです。だからって何でこんな面倒なことしてるのかはわかりませんけど」


「そ、そんな……確かに結婚を申し込まれたことはありますが、十年以上前のことですよ。それに、その時はもう主人との結婚が決まっておりましたし、実家もウスノースで商いをしておりますから穏便にお断りしたのですが」


 謎はまだまだある。何故今になって、どうしてこんな迂遠な方法で、このあとどうするつもりなのか。まあ、可愛さ余って憎さ百倍、感情のままに動いただけ、というオチもあるかもしれないが。


「それで? アマンダさんを殺して一体何がしたいんだ?」


「いや、アマンダさんだけは殺すなって指示があったらしい」


「何?」


「理由はわからん。恩を売るためじゃないか?」


「どんな恩が売れるってんだ! てめえで単身盗賊退治でもするってのか!」


「だから、知らんって」


「くそ! ま、まさかこの前の襲撃も……」


「ああ。アークノ商会の指示らしい」


「畜生! そんなヤツのせいで仲間は死んだのか!」


「か、カマロさん、ごめんなさい。私のせいで……」


「アマンダさん! アマンダさんのせいじゃねえよ! アークノ商会のクソ野郎のせいだ! ぶっ殺してやる!」


 発端はアマンダさんらしいが、カマロももう無関係ではない。パーティを潰された恨みもある。


「殺してやるって、そんな簡単じゃないだろ? アマンダさん。これからどうしますか? 護衛の仕事として報告だけはしましたが、それ以上は冒険者じゃちょっと無理かと……」


「ケント! ここまで来てそりゃないだろう!」


「証拠がないんだ。俺が盗賊の話を盗み聞きした、なんてだけじゃ衛兵もどうしようもないだろ?」


「その二人は捕まえなかったのか? 殺したのか?」


 さて、どう答えるか……俺も実は何故逃がしたかわからん。軍師気取りなだけだったかもしれない。不確実な方法を取ってしまったものだ。


「あー、悪い。実は一人だけわざと逃がした」


「何? 何でそんなこと……」


「そん時とっさに思ったんだ。このまま捕まえて盗賊を全滅させても、報告がなかったことで失敗したのがバレる。そしたら街に着くまでまた別の手を打たれるかもしれない。盗賊なんて単純な力押しじゃなくて、毒とか、貴族が出てくるとか……そうなったら俺や新さんじゃ何もできないんだよ」


「だからって、逃げられたら結局はバレるだろうが」


「いや、そこは安心しろ。実は、あまり知られたくはないんだが、俺は『幻影』のスキルも持っている。ほら」


 光魔法を応用し、空中にウサギのホログラムを浮かべてみせた。『闇属性魔法』よりはバレてもマシだろう。即興だったが上手くいった。


「これがどうした?」


「こいつで嘘の戦闘の結果を見せてやった。カマロたちが負けて盗賊が馬車を奪う場面をな。まんまと引っ掛かってくれたよ」


「そ、それで?」


「一人はアークノ商会に襲撃成功の報告に向かった。逃がしてやったのはこいつだ。向こうもその報告を聞いて油断するだろう。その隙に街に入ってしまえばいい。残った一人は山に埋めてきた」


 これで何とか辻褄が合う。山のどこに埋めたかを聞かれたら惚けよう。


「そうだったのかよ……それなら確かに街に入るまでは安全だな。助かる。だがよ……アマンダさん、これからどうしますか?」


 確かにこれからが問題だ。悠長に商取引なんてしていられないだろう。


「神殿に訴えます!」


 うん。それしかないだろうな。俺は行きたくないけど……


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