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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第25話 チョンマゲなのにな


 事件に巻き込まれたからには、事後処理にも関わらなければならなくなる。まだ完全に終わったわけではないが、今日のところは終了したということでいいだろう。



「では、買取希望の品をここに出してください」


 ジョナサンさんの指示で受付嬢の一人が俺の相手をしてくれている。

 こういうお金とか手続き関係については新さんは全面的に俺に任せるのがデフォになりつつある。

 まあ、盗賊殲滅では新さん大活躍だったからなあ。間違っても自分を役立たずだとは思ってはいまい。逆に俺が戦闘以外で頑張ろうと思っているんだけどな。


「その前に確認したいんだけど、ギルドに入ってる人と入っていない人での税金の差って教えてくれる?」


「いいですよ。当ギルドメンバーなら買い取り金額の10%、提携ギルドの方やここの領民証を持っている方なら15%、それ以外のギルド証や領外の方は20%です。全く証明できない方からは50%取ることになっています」


「高っ!」


 受付嬢、残念ながら猫耳はなかったし、銀行の受付と同じく美形を揃えてあるようだが、にっこりと微笑まれても全然うれしくない情報であった。


 ただ、その政策? はわからないでもない。現代日本みたいに戸籍が充実しているわけでもないのだから身元不明の不審者に辛く当たるのは当然だ。

 半面、継続的に税が取れるとなれば安くしても住民を増やそうとするやり方にも納得である。


 これは『さっさとギルドに入れ!』と言われているようなものだな。


 任せられたといっても、ちゃんと新さんと相談する。

 答えは『金は二人で食えるだけあれば十分』だそうだ。


『ギルドに入らなくても猟で食える。だから今まで入らなかった』という言い訳は当然ただのポーズである。実は入りたかったのだ。だってテンプレじゃないか。

 それに、他の街へ移動してもここのギルド証があれば税金は10~20%で済む。入場料だって安くなるはず。

 いや、金儲けがしたいわけじゃないよ。同じ金額を稼ぐのに必要な労力が軽減されるのがいいんじゃないか。

 地球へ帰還できるまで大人しく暮らす予定だが、カツカツの生活はゴメンだ。静かながら面白おかしく過ごしたい。まあ、所謂『異世界スローライフ』だな。


「新さん。俺はギルドに入ってもいいと思う。新さんの取った獲物、買い叩かれるのはムカつくしな」


「某のことは気にせんでも……あいわかった。某も賛成でござる」


「というワケでギルドに入りたいんだが、受付はここでいいのか?」


「いいえ。ギルド加入の申請は二階カウンターになっています。買い取りは如何しますか?」


「加入の手続きをしてる間に先に査定してもらっていいか?」


「構いません。こちらにどうぞ」


「あー、この箱じゃ足りないかな? 箱まだある? それとも場所移す?」


「……失礼ですが、何も持っていないようなんですけど、馬車にでも積んであるんですか? それなら裏の搬入口にある倉庫にお願いします」


「その方が面倒なくていいや。案内してくれる?」


「……ハイ。ドウゾ……」


 受付嬢に案内され俺は一旦外に出る。

 新さんには先に二階で加入手続きをしてもらうことにする。ちょっと不安げな顔をされたが、あくまで個人の手続きだ。仕方あるまい。


 受付嬢、俺が馬車を持ってないことを不思議がっていたが、ジョナサンさんの口利きがあったからか素直に倉庫とやらまで案内してくれた。


 土壁の倉庫に入っての第一声。


「じゃ、出すね~」


「え?」


 ドサドサ!


「え? え?」


『亜空間倉庫』からウサギ、オオカミ、盗賊たちの装備全てを放り出した。

 受付嬢さん、呆然としていた。なんで? 『アイテムボックス』自体はよくあるスキルだろ?


「査定よろしく。じゃ、俺は二階に行くから」


「……はっ! ま、待ってください! 買い取り担当を呼んできますから! 品数の確認だけはしてください!」


「担当って、おねーさんが担当じゃないのか?」


「わ、私はカウンター担当です。倉庫担当は他にもいますから」


「わかった。待ってるから早く頼むな」


「は、はい。少しお待ちください」


 と、俺を倉庫に残して受付嬢さんは出て行った。


 待つことほんの数分、中年の男が二人倉庫にやってきた。一人は何故かジョナサンさん。なんで? 営業担当じゃなかったか?


「ほほ~お? これだけの量を『アイテムボックス』に? いやはや、すばらしい才能ですな」


 どうやら野次馬らしい。ま、ラノベでも希少な才能扱いされてたけど、こんな便利なスキル、隠しているのも勿体無い。下手に隠そうとすると逆に怪しまれるのもテンプレだから、むしろ堂々と、自然に振舞おう。


「えーと、そっちが担当さん? 査定よろしくお願いしますね」


「おう! 結構あるな。とりあえず数えるから、ジョナサン! おめえも手伝え!」


 営業担当のジョナサンさんが物腰が柔らかいのに対し、これぞギルド職員! て感じのオヤジだった。うん、異世界っぽい。


 ウサギ×13、オオカミ×2、剣各種21本、革の防具15揃い。後は変な武器が4つ。興味ないのでナビさんにも聞かなかった。魔道具なら話は別だが。


 数を確認してところで、俺は加入手続きに向かう。何故かジョナサンさんも付いてきた。


「えーと、ジョナサンさん、加入時にお金は必要ですか?」


 二階に向かう途中聞いてみた。


「はい。金貨1枚かかります」


「高っ!」


 あ、いや、貨幣価値も物価もまだわからないけど、金貨と聞いて何となく。


「そうですね。でも、冷やかしの防止や、ある意味保証金の意味もありますから。必要なことです。それに報酬から少しずつ天引きというやり方が多いので手持ちの少ない方でも安心して加入できますよ」


「な、なるほど」


「それに、毎回入場税として金貨1枚払うよりはずっとマシかと」


「あー。そりゃそうだ」


 心から納得したところで二階に到着。

 見ると新さんがカウンターで受付嬢と何か話している。まだ手続きは終わってないのかな? それとも、まさか逆ナンか?


「ナターシャ君、この彼も加入手続きを頼む。何か問題でもあったかね?」


「それが、レベル測定器を使うのを断られて……」


「ケント殿! 某はケント殿の来るのを待っていただけで……」


 二階受付嬢はナターシャさんというのか。この人も美人だ。

 じゃなくて! 出たよ! レベル測定器! 神サマたちも中二してるな! 


 だが、想定の範囲内。

 ナビさん、ナビさん。新さんと俺のステータス偽装よろしく。レベルは三分の二ぐらいにして、あと、念のため目立つスキルも隠しておいて?


『回答:了解しました。前回シュミレーションした数値でよろしいですか?』


 うん。それでお願い。

 ワハハハハ。こんなこともあろうかと……荒野を歩いてて暇な時に偽装パターンの研究をしてたのだ。だって本当にすることなかったし、異世界あるあるだし。

 下げすぎても現実とのギャップが目立つから、その加減が難しかった。スキル関係はスキルレベルⅩやⅨは不味いだろうということで最大でⅥ、俺は『無属性魔法』、新さんは『剣術』。他も心持ち下げてみたらちょうど良くなった。と思う。


「新さん、待っててくれてありがとな。でも先に終わらせてもよかったのに。ほら、指南役の教えどおりさっさと終わらせちゃおう」


「……あいわかった。すまぬな、美しい姫に面倒を掛けてしまった。ここに手を置けばいいのだな?」


「まあ、美しいだなんて……コホン。そ、そうです。ここに手を載せてください」


 新さん、まさかのイケメン発言? チョンマゲなのにな。

 ちなみに新さんには笠はなるべく取らないように言ってある。たかが髪型だが、目立つ上絡まれやすいと俺の推測を述べたら理解してくれた。人に聞かれたら故郷の風習だ、とかわすことにしている。


 それはともかく、無事に手続きは済んだようだ。良かった、良かった。


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