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相棒はご先祖サマ!?  作者: 樹洞歌
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第22話 街に到着した

 北の街まで行く途中、盗賊の襲撃騒ぎに遭遇した。チートで退治したが、楽しいとは全く思えなかった。



 ガラゴロ、ガラゴロ。

 馬車は北へ進む。


 ラノベ展開ならここで助けた人たちと和気藹々と情報交換したりするのだが、現実はそうもいかず、事務的な遣り取りでお通夜状態である。

 そりゃ、仲間が何人も殺され、重傷人満載の馬車で何をしゃべれというのか。


 それでもくどいほど礼を言われ、報酬の話も何度もされた。


 一応もらったことにして、それを全額亡くなった人たちや怪我人たちの保証に当ててほしいとお願いした。もらった報酬をどう使うかはこちらの自由だ、とツンデレっぽく。


 納得してはもらえたが、それで空気が変わるわけでもなく、代わりに情報を、なんて軽々しくは口にできない。

 ただ、盗賊の武器や装備品は報酬の一部ということで、換金法方だけは聞き出せた。初めて行く街だから、という納得できる理由で大雑把な街の地理もゲット。

 鍛冶屋、武器屋、防具屋。そこに持ち込めば中古品として引き取ってくれるという。面倒だったら冒険者ギルドで買い取ってもらえばいいそうだ。


 ギルドに登録していない、というと驚かれたが、見た目からして外国人の俺たちの事、そういう人もいるのか、ぐらいで済んだ。

 あ、この世界のギルドは世界共通の組織ではなく、ほぼ派遣会社的な営利団体である。中には数カ国に跨って営業している大手ギルドもあるようだが、大体が一都市かその周辺の宿場町に支部を持っているくらいの規模だそうだ。

 一応ギルド同士も連絡を取りつつ、時に協力したり、時には張り合ったりと結構自由な感じだ。


 これなら、世界を旅して回る予定の俺たちが絶対にギルドに登録しなければならないということはないだろう。メリット・デメリットを後で新さんと相談して決めよう。


 なんてコトを馬車の中で考える。新さんはここにはいない。

 実は人手不足で、6台ある馬車のうち一台の御者を買って出たのだ。さすが武士。何でもこなせるね。

 俺はアマンダさんに誘われて乗り心地のいいほうの馬車に同乗しているというわけだ。あ、バネとか使ったショックアブゾーバみたいな装置はあるみたいだ。俺の貧弱な知識では知識チートは簡単ではなさそうである。


 馬車に乗って二時間ほど。いくらいい馬車だといってもそろそろ尻が痛くなってきた頃、馬車のスピードが落ちると同時に、カマロのおっさんから声がかかった。


「悪いが一度ここで降りてくれ。衛兵に説明する」


 どうやら街に到着したらしい。

 といっても二重になった外壁の外側なのだが。


 地図によると、このドルノースの街は周囲10kmくらいかな? 堀で囲まれている。大文字のDというか、左(西)に川が流れていて、平仮名の『つ』の字ように堀が川と繋がっている形だ。

 そして外壁といっても木製の柵が並んでるだけ。東の方は石壁らしく、現在拡張工事中なんだとか。

 そしてここからでも見える内側の壁。その中が本当の街で、壁と壁の間には田園風景が広がっている。


 その外側の壁の入り口に門番の詰め所があるが、出張所みたいなものだろう。


 そこに、アマンダさんとカマロ、俺と新さんの4人が顔を出した。


 門番さん、朝一で出かけていったアマンダさんの商隊が昼にはもう戻ってきたので不思議そうにしていたが、盗賊の話を聞き慌てていた。


「賊の数は20人ほど。始めは10人ほどだったので応戦してたが、急に増えやがって、危なく全滅するところだった。そこをこの二人に助けられたってわけだ。ああ。頭目だけは生かしてある。引き取ってくれるか?」


「わ、わかった。本部に連絡するから待っててくれ」


 カマロの説明を受けていた門番さん、一人詰め所の中に入っていく。え? 俺たち? 外で立ちっ放しだよ。もう一人の門番Bさんは編み笠を被った新さんを警戒しているし、チョンマゲを見たらどんな反応するのかな?


「すまん、引き取りは内門で頼む。その二人の外国人もそこで話を聞くそうだ」


 何か電話みたいな設備があるのだろう。すぐに門番Aが通達してきた。


 しかし、審査か。面倒でなきゃいいが。


 そして再び馬車に乗り込む。今度は短い行程だ。

 歩いた方が速いぐらいのスピードで10分ぐらいかけて内門に到着する。門番というか兵隊さんが多数待ち構えていた。


「止まれ! 中を改める! 責任者は降りろ!」


 責任者ではないが、カマロに言われて、また4人で降りる。


「盗賊の頭目とはどこだ!」


 衛兵たちの目が一斉に新さんに向いたのがわかる。俺? Tシャツ一枚だから貧相には見えても怪しくはないだろ?


「その人は命の恩人だ! 頭目は馬車に積んである。こっちだ」


 カマロがそう言わなければ新さんは衛兵に取り囲まれていたかもしれない。

 衛兵たちは速やかに目標を変え、真ん中の馬車に集まった。


 馬車の中から蓑虫状態のままの「おかしら」が引きずり出される。うわー。顔面血だらけ、カマロが蹴り飛ばした時より酷くなってんじゃ? まあ、恨みを買い捲ってるだろうからな。でも、これじゃ人相も何もわからんだろ。


「コイツが頭目? 生きてるのか?」


 カマロが俺を見た。

 ああ、そういえば、盗賊たちの話を聞いたのは俺と新さんだけだったな。


 仕方なく証言する。


「俺と……この人二人で聞いた。確かにコイツが『おかしら』と呼ばれていた。だから止めは刺さなかった」


「そうか。わかった。おい! コイツを連れて行け。話ができるなら取り調べろ」


 たぶん隊長さん、が命令して、蓑虫頭目は門の中に連れて行かれる。


「さて、お前たちには詳しく話を聞かせてもらう。中に入れ」


「待ってください。怪我人が大勢いるんです。早く治療院に連れて行かなくては」


 隊長さんが俺達4人を連れて行こうとしたが、アマンダさんが待ったをかけた。


「……わかった。後日出頭してもらおう。だが、お前とお前はダメだ。来い」


 外国人の俺たちは当然のように取調べを受けることになった。想定内だったので黙って従おうとする。


「お待ちください! その方たちは私どもの命の恩人! ハーベスト商会が保証しますので、どうか一緒に……」


「会長夫人、心配しなくてもいい。盗賊の件は後日一緒に聞いてやる。これは正式な入場手続きなんだ」


「わ、わかりました。カマロさん。私はこのまま治療院に向かいますが、お二方についてあげてくれませんか? 何かありましたら店の方に連絡してください」


 アマンダさんが俺たちを心配してくれているようだ。


 俺は新さんに目配せしてからアマンダさんに声を掛ける。


「アマンダさん、お気遣いは無用です。入場料もこの通りいただきましたので皆さんは早く治療に向かってください。せっかく助かった命ですから」


「は、はい……本当にありがとうございました。主人共々改めて御礼に伺います」


 そういってアマンダさんは怪我人を連れて街の中に入っていった。

 俺たちは衛兵の詰め所の中に入る。

 さて、無事に出られといいんだけどな?

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