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都の布屋

兄たちと玉珊の話を聞いているとどうして屋敷の離れのような室に住んでいるか想像できた。

兄たちは先に都の屋敷に戻った。

「碧、お兄ちゃんたちと離れてもあとで会えるからね」

「先に都に戻るけど必ず来るんだよ」

両手を片手ずつ兄たちに握られて見送りも大変だった。

ブンブンと手を振っても放してくれない。

両手でがっちりと握られて手を捻っても抜け出せない。

ぐっと力は入ってないが手が大きくて碧の手でなく自分の手を握りしめている。

「お兄様も百里も早く行ってください」

玉珊と二喬に手を剥がされて有圭も百里もやっと離れてくれた。

そのまま屋敷から馬に乗り去っていった。

何度も見えなくなるまで振り帰って見られていた。



碧は都に向かう道中で整理した。

碧の母は汐非せきひといい側女だが正妻である貴媚きびの侍女であった。

まさかのドロドロの展開かと思ったが実際は違うようだ。

侍女とは言っても正妻とは幼なじみで娶るように言ったのは正妻らしい。

姉妹になりたかったという望みが別の形で叶えられた。

正妻の貴媚は政略結婚で家同士が決めた結婚だ。

互いに干渉しないという契約をした。

夫が都で昔の恋人と再会し赤子ができると正妻は譲ることはできないが側女として招き入れた。

そして条件として汐非を側女として妻にすることだった。

碧の母を自分の部屋の隣で住まわせて夫と一緒に過ごす時間よりも長いらしい。

そのほかにももう一人都の屋敷に側女の奥様がいるらしいが円満ですごしている。

普段は都にいて目覚めた屋敷が本家らしい。

有圭は正妻の子で百里は都にいる側女の子で玉珊が百里の姉だという。

馬車の中には玉珊と二喬が一緒に乗っていた。

城門を過ぎ城下の都に入った。

馬車がゆっくりととまった。

「碧、ここで衣を買っていきましょう。採寸してすぐに仕立て届けてもらえるわ」

玉珊が宮に訪れるまえに都で仕立ての生地店に立ち寄った。

ずらっと美しい色合いをした反物が棚に並んでいる。

見て回る。

「碧気に入ったのはあった?」

 碧の前に水色や黄緑、黄色、赤色など色鮮やかな布が並べられて見せられた。

 重ね着をして色合いを楽しむのが流行りらしい。

 碧はその中でも薄い黄緑で春らしい色合いを選んだ。

「碧はこの色が気にったの?」

「うん。この緑がすきなの」

「なら中は薄い黄色がいいわね。もっと見せてくれる?」

「奥にもございますよ」

 店内には茶を飲みながらゆったりとできる一角が作られていた。

「あと寝具もそろえたいの。一式お願いできるかしら?」

「どちらにお届けすればよろしいですか?」

「律家の屋敷に届けて」

「分かりました」

「あと玉珊姉さんの衣も新調しないと。この花の刺繍がされた水色と青色の衣が似合うと思う」

「では碧が選んでくれたものでお願い。まだ時間がかかるから近くに美味しい菓子を売っているお店がある買って食べてきたら? せっかく都にきたのだから見れるときに町をみたいでしょう?」

 碧はただお腹を押さえてながら見学していたのだが、お腹を空かせている思われたらしい。

「いいの? じゃ見に行きたい」

「二喬と二人なら大丈夫よね? 近くの茶屋で待っていて」

「分かった。先に行くね」


二喬と手を繋いで町をうろうろと見学に歩いた。

町の中は珍しく縁日のようだ。

町の境目には通りの区切りに鳥居が並ぶ。

買い食いをしながら町の中を歩いたがじろじろと視線を感じた。

自分じゃないのは確かだ。

視線を追うと隣にいる二喬を見られている。

本人はちっとも気づいてないがチラチラと何度も見られている。

さっきもすれ違った人が不自然にすれ違う。

碧は二喬を道の外側にして壁になると注目されていた視線があからさまに逸らされた。

「ふんっ」

「お嬢さまどうかなさいましたか?」

目覚めてから常に見ていて普通に思っていたが二喬は人の目を惹きつける可愛らしい容姿に性格の良さが滲み出ている。

「どうしたんですか?」

「いや可愛い子を連れて歩くのはこんな気分なんだと思ったんだ」

「そうですね。お嬢様が可愛らしいですからしっかりとお守りいたします」

「迷子にだけはしないでね」

「はい」

二喬の腕を引っ張りながら人混みを抜けて歩く。

「人が集まってますね。見に行きましょう!」

人が集まっている場所では芸人が路上パフォーマンスをしているようだった。

すでに大勢の人の頭で見えないが見物している人は拍手を送っている。

二喬は見えないようで何度もジャンプしていた。

碧たちは広がった輪の中で五列目ぐらい。

このぐらいなら近いほうだ。

フラットで段差がないなら少し離れた方が見えやすいが舞台のように上がっていない。

「二喬は見たい?」

「もちろんです。都じゃないと見れませんから近くで見たいです」

「分かった。見せてあげる」

「人混みですよ」

「大丈夫」

碧はレーダーのように場所をスキャンして道筋を確かめる。

斜めに二人分入れる場所が空いた。


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