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水鏡

 宮廷の神廟の奥には水がはられている水鏡という場所がある。

 水が湧いているが水面は揺れることがない。

 夜には夜空に光る星で天命を告げて見せて教える。

 朝には太陽が反射して水面は真っ白になり反射させ祈りを天に届ける。


 腐る事もなくただ玉台に薄く水が常にある場所だ。

 国師は天井がなく星をそっくり映し鏡のように境目のない空の中に立ち星を見る。

 皇帝を選ぶ方法を指名だが星読みの国師と神官たちと話し合った末に全員に機会を与えることになった。

 星が示すのと占いの結果が一致せず歴代の国師が残した星読みの書に書かれていない皇帝を照らしている輝く星が現れたという。

 国師である斗羅とらのもとに皇帝の修憲しゅうけんが水鏡に訪ねた。

 お供も連れずに寝巻に一枚外衣を羽織っただけの服装でふらっと散歩のように入ってくる。

 修憲の相手をすべく羅斗は水鏡の外に出た。

「天からの返事はあったか?」

 修憲の問いに斗羅が答える。

「その星が民なのか分かりませんが次の皇帝は自分で光を放つのではなく周りで照らされてこそ神々しく輝く吉星。星が重なり一方が輝かせています。重なって照らす星など見たことがありません。星は天命を受けて生まれる事もあれば消えることもあります。陛下が皇帝を継がれたとき他の星は流れました。洗い流すという天命だったのでしょう」

「腐敗していた根源から抜いて捨てれた。即位している間に長い年月がかかったが腐ってた官吏はすべて入れ替えた。武官も同様だに国に命を捧げた兵でありながら国に背いた行動をしていた者たちは捕らえて償わせた」

「かなりの星が流れました。だからこそ次の代が重要なのです。天へと尋ねたところやっと星が変わったのです。予想ができません」

「天の言葉は?」」

「国師が聞いたことろすべてを見抜く者を異国の地から送られたという意味である新星が水鏡も映りました。新星が現れてはじめて水鏡が揺れ天から星が水鏡に落とされたように水紋が広がりました」

「新星は神官や巫女なのか?」

「いえただの人でしょう。特別な力はありませんが己が感じたままに見える力があるのです。天からも愛されている存在ですが、教えられたのは天命を感じ取り見抜ける目と自分のすべてを捧げて支えられるという特別な星回り。水紋によってほかの星にも影響があるでしょう」

「そんなすべてを捧げてもらえるような存在がいるなら俺の側にいて欲しいものだ。今日は酒を友として付き合え」

「国師に酒を継ぐのは陛下だけですよ。皇后や妃たちがいるではないですか」

「いるのならそばに皇后たちではなく純粋に見てくれる人がお前意外にも居てほしかった」

「皇帝の星が現れたときにすべてを感じたんです。私がいないと倒れてしまう気がして対等に陛下を支えることを決めたんです」

「だれよりも俺よりも俺を理解しているな」

「陛下が皇子のころは側に控える副将軍でした。ずっと見ています。国師だけは後宮にも口を出せるからとあなたに懇願されて有望だった武官の道を諦めて一から勉強したんですよ。忘れないで頂きたい」

「懇願した覚えはない。だが信じられる友が一人でもいることに感謝している」

「国の支持者たちが選ぶようになりましたから陛下のときとはちがうはずです。成り行きと言う天の流れに逆らわずに沿うことが上手く国が太平に向かう方法です。すべて見守りましょう」

「ああ。引退したあとだけを考えることにする。玉座に長いこと縛られていたからゆっくり探さないとな」

「付き合いますよ。伝え忘れてましたが新星は次の皇帝の光を放つ星と重なっています。すぐに出会えるでしょうから楽しみしていてください」

「分かった。ほら乾杯をしよう」

 夜明けまでのゆっくりとした時間が過ぎていく。







 二喬に着つけてもらい碧は自分の姿を立ち上がってくるくると回った。

 行動は子供っぽいが今は十六歳。気にすることはない。

 白の外衣に中は赤色のワンピースで紅白の服だ。

 ふわふわのスカートを一枚巻いている。

 足を引きずらないように持ち上げないといけない。

 靴も花の刺繍が施されてスカートで見えないところまで手を抜かずお洒落だ。

 バレーシューズのような見た目をしている。

 靴下を履いてはいるが少し靴がきつい。

 隙間が空くのも靴擦れの心配はないが肉が食い込んでいる。

 つま先がきゅっと圧迫されている。

 気を抜くとじわっと押し出されて靴から浮いてくる。

 いっそ裸足で履いた方がましだろう。

 ブーツのような靴だと思っていたが違うようだ。

「ねえ二喬、聞いてもいい?」

「はい。何なりと」

「私は16歳であってる?」

「そうです。私も同じ年です」

「名前は碧というのよね?」

「もちろん碧様ですよ。お腹が空きすぎて頭に栄養が行かないのですね。食べたらすぐに記憶も戻りますよ。それでも思いだせなければ星が移動したのかもしれません。水鏡で神官に文を送り国師さまに星の動きから教えてもらいましょう」

「その水鏡とはどこのこと?」

「宮廷の廟です。水鏡という一面が鏡のような場所があるのだそうです。風が吹いても波紋がない神聖な場所です」

「宮廷なんて好き勝手にいけないでしょ」

玉珊ぎょくさん様から誘われていましたよね。宮廷で開かれる春の詩会があるので宮中に入れますよ。この度は殿下たちが勢ぞろいするらしいですよ。ですが今日は部屋の中でお過ごしください。病み上がりですからね」

「分かったからさっきのもも肉たべましょう。半分は二喬の分ね」

「碧様ありがとうございます」

 碧は大人しく座って皿の上に置かれたままの食べかけのローストチキンを半分に裂き二喬に渡す。

 生きるためには推しを見つけないといけないが体力が先だ。

 碧もしっかり食べようと頬張った。

 味は肉がしっとりとしていて美味しかった。

 人は食べずに腹がすくと弱気になるし思考回路もぐるぐると同じように巡る。

 何かを解決したければ美味しく食べることだ。

 それは碧が身につけてきた習慣だった。

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