笑顔
粥がなくなり、フルーツをまた同じように詰め込んでくる。
もう抵抗してもしょうがない気がして、もがくのを辞めた。
「金武さん、お腹いっぱいになりましたか?」
「なったからやめてくれ。」
「ダメですよー。残しちゃ。あと3口!」
モグモグとフルーツを口の中で潰して
私の口に移す。
なぜこいつが一旦食べ物咀嚼するんだ。
「あー僕も食べたいなぁ。お腹空いてきちゃう。」
独り言を言いながらまた口に入れてくる。
私は要らないから、勝手に食べててくれよ。
ぷはぁっと口が離れる。
やっとラスト。
あいつがモグモグと果物を潰す。
ゴクッと果物があいつの喉を通る。
「やっぱり旬のフルーツは美味しいですね。」
にっこり笑いかけてくる。
「食べたから、このロープ取ってくれ。」
「だからダメだって言ってるじゃないですか。片付けてくるんで待っててくださいね。」
と言って部屋を出ていった。
どうにかして出なければ…。
当たりを見渡すがなにもない。
私と椅子のみ。
さっきやったが、やはりロープはギチギチ。
また辺りを見渡す。
ダメ元だがやって後悔しよう。
ガタンガタンと椅子をドアの近くまで移動させる。
ドアと部屋との間の角に紐を擦り付ける。
「お願いだ。外れてくれ。」
角は少し崩れていてたまに引っかかり、少しずつちぎれている気がする。
必死に腕だけ動かす。
[パサ…]
腕のロープが床に落ちて腕が自由に動かせる。
次は体。
腕が不自由だったから、椅子から抜けなかったが
片腕ずつ出すとすぐにロープは緩んで解けた。
後は足だけ。
足に手を伸ばす。
[ガチャ…]
「何してるんですか?」
頭の上から快夜の声が聞こえる。
もうどうにでもなれ。
勢いで足のロープの結び目を引っ張る。
意外と簡単に解ける。
「何やってるんですか。」
聞いたことない、ドスの効いた声。
その瞬間、自分の首根っこを後ろから掴まれて椅子に座ったまま思い切り下に押し付けられる。
「僕がこのまま貴方の首を押さえつけててもいいんですか?
血管切れて、死にますよ。」
くそ。
どうすることも出来ないのか?
上に頭を上げようとするが全く微動打にしない。
逆に体に力を入れると、もっと体がきつくなる。
「わかったから!離せよ!逃げないって!」
「本当ですかー?」
声がにやけている。
こいつにとって娯楽でしかないのか?
首にかかる力がゆっくりと抜けていく。
よし、逃げよう!
バッと頭を上げた直後、私の体は床に打ち付けられた。
「だから、逃げようとしちゃダメって言ってるじゃないですか。」
快夜が私の二の腕を踏みながら馬乗りになる。
「もう1回眠れ。」
快夜は満面の笑みで私の首を締め上げる。
必死で空気を取り入れようとするがだめだった。
私はまた気を失った。




